かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 京都国立博物館・平常展

2日目のトップ・バッターは京博の平常展です.ここのところ,毎月訪れていますが,まあ,展示が充実しているし,おもしろいんだから仕方がないですね(と,言い訳してどうする!).今回も絵画のコーナーを中心に2Fを見て回りました.

今月は絵画のコーナーがことさら充実していました.9室の小特集『雪村 戦国画壇の個性派』(10作12点)や10室の小特集与謝蕪村(6作)はもちろんのこと,10,11室に展示の長沢蘆雪など,優品佳品多数の見どころ多数でした.

『雪村』は,代表作の一つ,〈琴高・群仙図〉3幅対[京博]をはじめ,小特集とはいえ,彼の特徴を十分に示す充実した展示でした.美術全集の図版で見かけたものが多かったのですが,初めて見る〈宮女図屏風〉6曲1隻[京博]もよかったですね.楼閣内で憩う宮女や唐子を描いたもので,ヨーロッパから里帰りした作品だとか.狩野勝川院の紙中極があります.宮女の顔が胡粉で白く塗られており,やや古びた紙面からぬぼーと浮き上がってくるその面貌がちょっと不気味で,なんだか古い御所人形のようでもありました.1,2扇下方に描かれている水の表現もおもしろかったな.本作は雪村初期の作品と推定されています.


10室の与謝蕪村は6作ほどの小展示ですが,これも蕪村のユーモアに満ちたおおらかな画風が見ていてとても楽しかったですね.蕪村の俳諧の弟子3人を描いた〈田福・月溪・百池図〉1幅[個人]など,その代表格です.それぞれの性格がよく出ていましたね(特に中央の月溪=呉春!).いくら弟子とはいえ,もうちょっとしゃんと書いてやれよ,と思ったりもして.あとは,蕪村の句中で私の割と好きな「四五人に月落かヽるおとりかな」の賛がある〈躍画賛〉1幅[個人]が見られたのもうれしかったかな.躍り手が3人描かれていたのですが,それが単にうらわびしいだけでなく,和やかな温かいものであったりして,見ているとなんだかほっとしたりもしましたね.


11室には江戸時代中後期の襖・屏風が展示してありました.中では,長沢蘆雪〈朝顔に蛙図襖〉6面[和歌山/高山寺]が,蘆雪一流の大胆な構図でよかったですね.たっぷりととった余白を大胆に活かしたもので,見ていてちょっと楽しくなりました.もともとは襖まくりとして保存されていたものを最近改めて襖にしたものだそうです.蘆雪はこの他に10室に〈花鳥遊魚図巻〉1巻[個人]が展示してありました.


今回見た中で1作選べと言われたら,ちょっと悩むところですが,狩野派〈鳥類写生図巻〉1巻[京博]を挙げたいと思います.これは室町までさかのぼるようで,狩野元信の絵などに類似した図柄が見られるところから,狩野派の作と推定されています.江戸時代の博物図譜とは異なり,いわゆる粉本として描かれたものなので,描かれている鳥類の姿態もなかなかいきいきした魅力的なポーズのものが多かったです(特に小禽類).中には相撲を取っているようなものもあったりして.彩色も丁寧で,色の指定など細かな書き込みもおもしろかったですね.一応,鳥類図巻なんですが,「鼬」の図もあったりします.狩野探幽〈鼬図〉に似ているような気も...とにかく,この図巻は今回の京博の展示の中では大ヒットでした.


以上の,絵画の他には,特集陳列『長楽寺創建1200年記念 歴代遊行の軌跡』や14室(染色)の『夏のきもの 単衣と帷子』などが興味深い展示でした.


この後,七條甘春堂などには見向きもせず(本当か?),京阪の七条まで歩き,大阪へ向かいました.