かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 東京国立博物館

に行ってきました.ほとんど1ヶ月ぶりです.まだ見ていない今日展示終了の作品がけっこうあったので,焦って見てきました.ということで,今日見た中からいつかピック・アップします.


7室には,3点の屏風が展示してありました.

  • 英一蝶〈雨宿り図屏風〉6曲1隻・紙本着色・18c 一蝶の代表作の一つ.大名屋敷の門に雨宿りするさまざまな人々を軽妙なタッチで描いた作品.一時もじっとできないでいる小さな子どもたち−逆上がりする子ども,破れ傘から顔を覗かせる子ども−が中でも印象的でした.茄子売りなどの季節感の情趣もいいですね.5扇目に描かれる門の近くの2本の木のその上にさっと描かれる雨の線のそこはかとない爽やかさが実に活きていた,と思います.同種の屏風や掛幅もありますので,この題材は注文の多い人気作だったのでしょう.
  • 中村芳中〈蝦蟇鉄拐・許由巣父図屏風〉6曲1双・紙本淡彩・18c[個人] おなじみの画題です.芳中はこれら4人の人物をおおぶり,かつユーモラスに描いています.芳中は18c後半〜19c初の大坂の絵師で,尾形光琳に私淑していたそうですが,道理でたらしこみの技法を多用しているわけですね(しかし,ちょっとやりすぎ!),と納得した次第です.
  • 筆者不詳〈南蛮人渡来図屏風〉6曲1双・紙本金地着色・17c[個人] 南蛮屏風にはだいたい日本の港に入港する南蛮船が描かれているのですが,これがけっこうおもしろいですね.本作も左隻に南蛮船が描かれています.マストから真っ逆さまにロープを伝って降りてくる船員もさることながら,船内でたいくつげに寝転がっている南蛮人がいて,その手持ちぶさたな様子がなかなか愉快です.マントを羽織った微妙にのっぽすぎる南蛮人も変な感じでおもしろいですね.


8室でおもしろかったのは次のもの.

  • 狩野探幽〈うがや草葺不合尊降誕図〉1幅・紙本淡彩・17c 探幽の代表作の一つです.神話に取材していることが珍しいのですが,ここは空間構成の見事さ(主に余白の使い方ですね)に感服.波頭が上から下へだんだんと荒れていく,その描写もお見事です.
  • 谷文晁〈彦山真景図〉1幅・紙本墨画・1815 巨大な掛幅に描かれた豊前国彦山の図です.真景図ということになっていますが,これ本当でしょうか? 左上の山なんて,まるでサボテンみたいですぜ.


特集陳列「新たな国民のたから 文化庁購入文化財展」(平成館・企画展示室.7/26〜9/4) 文化庁が近年購入した文化財の中から優品をセレクトした展示です.中でおもしろかったのは,まあ,お定まりになってしまいますが,やはり曾我蕭白〈群仙図屏風〉[6曲1双]ですね.先の京博の蕭白展でじっくりと見てきたばかりですが,図らずも東京で再会できて,ちょっとうれしいところ.今日改めて見ての発見は左隻1扇の舌を出している子供の着物のデザイン.金泥で,鶴の意匠が描かれているのですが,これほとんど琳派ですね.同じ左隻の左側の女性たちの着物はチェックしていたのですが,これはうかつにも今日気づいた次第.見るたびに発見あり,というところでしょうか.そうそう,文化庁がこの〈群仙図屏風〉を購入したときのお値段は,数百万円だったそうです(それほど以前のことではなかったと思います).この他には,現代ならばさしずめ名車自慢の〈駿牛図断簡〉鎌倉時代)や〈病草紙断簡(背骨の曲がった男)〉鎌倉時代)あたり(絵画ばかりですが)がおもしろかったです.


この他には,2室(国宝室)に展示の孔雀明王像〉,10室の浮世絵と衣装,特集陳列の『日本の博物学シリーズ 博物図譜−その系譜をたどる−』(本館16室),『扇面・団扇』(本館特別2室)などを見てきました.『扇面・団扇』では,狩野正信の扇面など数点出ていた狩野派の扇面が興味深いところでした.


それから,展示とは関係ないのですが,鶴屋吉信売店が,入口付近のテントから平成館のラウンジに移動になっていました.笹の露柚餅とかも販売していて...う〜...


特別展『模写・模造と日本美術』をはじめ,見残した展示多数,また,展示替えもありますので,近々再訪したいと思います.