かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 『日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展』

二日目のこの日,まず,岐阜県美術館『日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展』を見ました.この展覧会は東京にも巡回するのですが,いくつか見たいものもあり,立ち寄ってみました.岐阜県美術館を訪ねたのは,もちろん初めてのことです.
「バーク・コレクション」は,メアリー・グリッグス・バーク・コレクションとメアリー・アンド・ジャクソン・バーク財団のコレクションの総称で,日本美術(主に古美術)をそのコレクションの対象にしています.1985年に東京国立博物館で一度このコレクションを紹介する展覧会がありましたが,今回はこれに次ぐ2回目の里帰り展ということになります.
さて,展覧会ですが,タイトルにあるとおり,縄文土器から近世の絵画・工芸に至るまでの約3000年にわたる日本美術の流れを,バーク・コレクションという単一のコレクションによって展望するというものでした.といっても,時代によってはどうしても精粗があり,やはり展示の主眼は桃山〜江戸時代にかけての絵画になるかと思います.
展示替えがありましたが,お目当ての絵は無事に全点見ることができました.(岐阜展の場合は前期[7/5〜7/31]と後期[8/2〜8/19]で10点程度の入れ替えがあったようです.)そのお目当ては以下のとおり.いずれも江戸時代のものですね.

  • 狩野探幽〈笛吹地蔵図〉 ※図版などで有名なものですね.ただし,バーク・コレクションには同題の別ヴァージョン,横長の掛幅もありました.ほとんど同じような図柄ですが,こちらはずっと小さく描いています.それにしても蓮の葉を頭に被った地蔵像は他にもあるのでしょうか.
  • 英一蝶〈雨宿り風俗図屏風〉 ※先日東博で見た〈雨宿り図屏風〉と同素材の別ヴァージョンです.似た構図ですが,人物の構成など異同もあり,なかなか楽しめました.茄子売りは両図中にいましたね.
  • 伊藤若冲〈双鶴図〉
  • 伊藤若冲〈月下白梅図〉
  • 曾我蕭白〈許由巣父・伯楽図屏風〉
  • 曾我蕭白〈石橋図〉 ※実はこれが一番お目当て.うじゃうじゃとわき上がってくる子獅子たちの元気溌剌な不条理感が大好きです.
  • 長沢蘆雪〈飲中八仙図〉
  • 長沢蘆雪〈月夜瀑布図〉 ※えっ,これって朦朧体では...

この他,おもしろかったものには次のものがあります.

  • 平治物語絵巻断簡〉 鎌倉時代 ※騎馬上の鎧武者を二人の騎馬武者が追い詰め,まさに首をかかんとしている場面を切り抜いて,掛幅に仕立てたものです.戦場の殺伐とした雰囲気が実になまなましく出ています.ところで,これって改装したのはお茶道具にするためだったのかしら.だとしたら,茶室にこれが掛けてあったりしたら...
  • 雪村周継〈竹林七賢図〉 室町時代 ※これは,酔っぱらっているとおぼしき七賢諸氏が歌舞音曲で盛り上がっている様子を描いたもの.七賢諸氏の表情もいいのですが,それを取り巻いて見ているギャラリーの女性や子供たちの表情がまたいいです.中には「つきあってらんないぜ〜」と言いたげな批評性丸出しの男の子もいたりして.
  • 狩野内膳〈政黄牛・郁山主図〉 江戸時代
  • 狩野山楽〈西湖図屏風〉 6曲1双 江戸時代 ※空想によって中国の名勝を描いたものですが,楼閣のいくつかなんて,まるでEXPO'70大阪万博のパヴィリオンみたいです(というのは『ヤノベケンジ』展に引きずられたか?).チープなSF山水ですね.楼閣の輪郭線の部分部分に濃墨を使っているのもストレンジな感じです.カタログの解説には山雪の補作が指摘してありました.

だいたいこんなところでしょうか.あっ,そうだ,近世初期風俗画あたりもおもしろかったな...などと,いくらでも挙げられそうです.


カタログも購入しました.2300円.分量も重量級で,解説もなかなか充実してます.表紙は若冲〈月下白梅図〉です.


この他に,ざっと所蔵品展を見ました.主に西洋近代の絵画・リトグラフなど.ルドンの小特集があって,屏風絵〈オリヴィエ・サンセールの屏風〉がなかなかおもしろかったです.

『日本の美 三千年の輝き ニューヨーク・バーク・コレクション展』巡回日程
 岐阜県美術館 2005.7/5〜8/19
 広島県立美術館 2005.10/4〜12/11
 東京都立美術館 2006.1/24〜3/5
 MIHO MUSEUM 2006.3/15〜6/11

余談ですが,この展覧会の監修者である辻惟雄は,MIHO MUSEUMの館長になったんですね.

それとJR西岐阜の駅までふれあいバス(無料のコミュニティバス)を利用したのですが,バスはマイクロバスで,満員の際は乗れないこともあるようです.