かけらを集める(仮)。

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 琳派VIII 俵屋宗達 琳派誕生 (細見美術館)

細見美術館恒例の秋の琳派展です.今年は,琳派創始者と言える俵屋宗達をテーマにした展示です.琳派の原点 −宗達・光悦の出会い−」「宗達の水墨表現 −「たらしこみ」の世界−」「古典文学への憧れ −伊勢物語絵と歌仙絵−」「「伊年」印草花図と宗達の系譜」「「金銀泥絵」と琳派意匠の展開」の5つのパートで展示が構成されていました.出品数は全部で64点ですが,会期中に部分的な展示替えがわりと多い(出品リストを会場で配布していますが,サイトにも出してほしいところ).中でも,見どころとなりそうなものは短期のものが多いので,注意が要りそうです.
宗達による金地濃彩による障屏画は出ていないのですが(養源院へ行くべし),それでも宗達の水墨表現」の箇所はけっこう充実しており,この他,宗達工房相説らへの継承などの目配りなど,宗達入門としてはなかなかよかったのではないでしょうか.
琳派の技法と言えば,たらしこみをすぐに思い浮かべるのですが,改めて思ったのは,宗達のそれはけっこうアヴァン・ギャルドな表現だったということ.例えば《牛図》頂妙寺](展示期間:9/16〜10/16)のそれなんて,やはりですからね.後世の江戸琳派鈴木其一あたりの使い方と比べるとそれがはっきりする(だって,其一のそれは慎み深く,美しいから).このことはこの後で若冲琳派展でずらっと並んだ其一を見ていて,あらためて思った次第です.
それから,この日見た中では,《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》(展示期間:前半部分9/16〜25,後半部分9/27〜10/2)の過剰がとてもおもしろかった.金銀泥絵による料紙下絵は,どちらかというとこれまで私にはいまひとつぴんと来なかったのですが,《鶴下絵三十六歌仙和歌巻》を見て,改心しました.宗達本阿弥光悦と出会って,和歌や書を装飾するということを始めたわけですが,この作あたりでは装飾が明らかに勝っている.それは鶴の飛翔などに見ることのできる対象の運動や時間が装飾に織り込まれているためで,その装飾の過剰さが私なんかにははっとするほど新鮮でした.
ところで,前回の展示を見たときも思ったのですが,細見美術館のキャプション解説はなかなかいい感じですね.用語などの解説も含めて,言うべきことをきちっと,しかも初心者にもわかりやすいことばで書いてあります.ただ,図録がなく,会場以外でそれを読めないのが残念.
この他,関連して小さな展示ですが『「唐長」伝来 琳派紋様板木・唐長制作道具』の展示がありました.

おまけに,お得情報です(?).細見美術館の窓口で本展チケットを購入した際に,京都高島屋で開催中の若冲琳派展の招待券をもらいました(おまけ?).両展とも行く予定の方は,この俵屋宗達展から行くのがお得かも(いつもくれるのかしらん?).まあ,細見美術館所蔵俵屋宗達2作(《墨梅図》,《双犬図》)は若冲琳派展に行ってますからねえ.