かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 青木繁 −《海の幸》100年 (ブリヂストン美術館)

青木繁《海の幸》(1904)が描かれてから今年で101年目ということで,それを記念した特集展示です.石橋美術館ブリヂストン美術館の所蔵する青木繁作品約20作と手紙などの資料,またこれを期に行われた赤外線画像や高精細デジタル画像の撮影,現地調査の成果などが展示してありました.
展示の中では,やはり《海の幸》ここに画像あり)や《わだつみのいろこの宮》(1907)(ここに画像あり),あるいは《大穴牟知命(1905)といった代表作が魅力的でした.《海の幸》はじめ,いくつかの作品で,画面から絵を見る者に視線を向ける女性がいて,それがなんだか妖しい感じ.
それから,展示の中に,筆者不明の《海の幸》の模本が一つありました.わりと忠実な模写だそうですが,劣化が進んでいないのか,こちらの方がオリジナルよりも画面が明るい印象で,少し雰囲気が違いましたね.
また,当時現地へ同行した恋人の福田たね(ちなみに,他に坂本繁二郎森田恒友が同行.)が1960年に当時の様子を思い出して描いた水彩が3点出ていました.その中に青木繁が砂浜にイーゼルを置いて絵を描いているものがあったのですが,この着物を着た長髪丸眼鏡の青木の姿が,展覧会冒頭に置かれていた《自画像》(1903)のややいかめしくマッチョな印象と相当かけ離れていて,それがちょっとおもしろかったですね.
《海の幸》を見ているときに,図らずもギャラリートークに合流,《海の幸》を前に学芸員の方の熱心な話に聞き入ることになりました.1時間20分(予定を大幅にオーバー)にわたるトークはとてもおもしろかったです.私には特に現地調査(絵が描かれた場所,千葉県館山布良での調査)の成果がおもしろかったですね.画面に描かれている長〜い銛がどうやらフィクションではなく,現地で行われていた独特の漁で使われていたものらしいことや画面左から2人目の鮫を背負って運ぶ男のスタイルも青木が現地のどこかで見かけた可能性が高いこと(こちらは文献資料も参照して)などです.※ギャラリートークは休館日を除く毎日開催,火〜金が18:00から,土・日・祝が16:30から,です.詳しくはサイトをご覧下さい.
常設展示は印象派を中心とする19,20世紀のフランスや日本の絵画,彫刻が展示してありました.質量ともかなりの充実.また,ブリヂストン美術館の展示室は,わりと小さく分かれていて,天井が低いこともあり,美術館の展示室というよりも個人の家の居間で絵を見るような親密さがあり,これがなかなかよかった.実は印象派の絵画とか,私には以前からどこか小馬鹿にしているふしがあって,こういった機会にあらためて見て,なかなかいいじゃん,と思い直すのが,最近の愉しみ(?)だったりします.今回はセザンヌがよかったな,なんて具合.
青木繁−《海の幸》100年』の会期は2005.9/17〜10/10です.