かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 ゲルハルト・リヒター 絵画の彼方へ (川村記念美術館)

現代ドイツを代表する画家ゲルハルト・リヒター(1932〜)の日本初の回顧展です.初期作品から最近作までの約50点の作品によって40年にわたる画業を展望しています.
ゲルハルト・リヒターについては,ほとんど何も知らないのですが,以下,感想やちょっと思いついたことなど.
リヒターは,いくつかのスタイル−「フォト・ペインティング」「カラー・チャート」「グレイ・ペインティング」「アブストラクト・ペインティング」といった−で作品を作っていますが,時代を追ってスタイルを変えていくのではなく,同時進行的にさまざななスタイルを用いていて,そのあたりがちょっとおもしろかった.というのも,それぞれの絵は視覚的に相互に関連しあっており(たとえば横方向の描線の動きとか),こうしていろんなスタイルの作品が並んでいるとそれがなんとなくわかるからです.
それはともかく,やはりフォト・ペインティングに惹かれましたね.印刷物で見るとちょっとぴんぼけな写真にしか見えないのですが,目の前で実物を見るとこれが「絵」以外のなにものでもない物質感があるんですね.また,これをずらすような意味合いで,ちょっとぴんぼけな写真作品もあり,このあたりの相互関連もおもしろかった.
また,鏡やガラスを使った作品もあり,ちょっと見には「うおっ,もの派かよ」などと思いましたが(←単純!!),どうもガラス面に映る画像がポイントらしい.例えば《11枚のガラス》(2004)は文字通り11枚の大きなガラスを重ねた作品ですが,11枚も重なっているためにそこに映るもの(まあ,作品を見入る人の姿なんですが)のシルエットが微妙にぶれて見えるんですね.これが,ちょっとフォト・ペインティングのシリーズに似ていなくもない.
それから,ドイツの歴史に取材したいくつかの作品にも目を引かれました.展覧会の冒頭に展示してあったナチスの軍服を着たルディ叔父さんの写真《ルディ叔父さん、エディション》(2000)や《1945年2月14日》と題したドレスデンを写した航空写真に基づく作品など.ドレスデンはリヒターの生誕地ですが,日付からして1945年2月13日から14日未明にかけて行われた連合国軍による,あの悪名高い〈ドレスデン爆撃〉を想起させるものですね.(関係ありませんが,カート・ヴォネガットJr.の『スローターハウス5』はお読みになりましたか?)
実は実際に会場で見ているときは,「いい気なもんだ」(←何が!?)などと思いつつ見ていたのですが,こうして思い返してみると,なかなかおもしろかったな,などと臆面もなく思っていたりします.でも,50点はちょっと物足りなかったですね.この倍くらい見たかった.
【メモ】川村記念美術館 会期:2005.11/3〜2006.1/22. HP割引・「日本におけるドイツ2005/2006」相互割引(「シュテファン・バルケンホール」「ドイツ写真の現在」「ゲルハルト・リヒター」各展のちらしに割引クーポン)あり.えっと今日(11/13)まで早期来館割引で一般400円引きでした.
ワコウ・ワークス・オブ・アートで『ゲルハルト・リヒター ”New Works”』展が開催中です.会期:2005.11/5〜12/24
Gerhard Richter Online(ARTCYCLOPEDIA).