かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 東京国立博物館・いろいろ

東京国立博物館へ行ってきました.見たのは,ええと,『北斎展』以外をぼちぼちと...

  • 特別展『華麗なる伊万里、雅の京焼』(表慶館)  2005.10/4〜12/4
  • 特集陳列『中国書画精華』[後期](東洋館)  2005.11/1〜11/27[後期]
  • 特集陳列『東京国立博物館コレクションの保存と修理』(本館)  2005.10/18〜11/27
  • 特集陳列『日本の博物学シリーズ 武芸 ―鷹狩、犬追物―』(本館)  2005.10/25〜12/11
  • 『浮世絵キアロスクーロ展』(勝手に命名!)(本館) 2005.11/1〜11/27

などがまとまったところ.でも...一番のお目当ては,国宝室の狩野秀頼《高雄観楓図屏風》(再戦)と本館7室の狩野山楽《黄石公張良・虎渓三笑図屏風》だったりして.
見た順ではありませんが,まずは表慶館の『伊万里、京焼』展から.表慶館はなんかものすごい久しぶりです.前回立ち入ったのは確か現代美術の展覧会だったような気がします.5年ぐらい前でしょうか.それはともかく,展覧会ですが,内容は伊万里と京焼の「入門」的なもので,とてもわかりやすい展示ではありました.が,ちょっと特別展と銘打っているにしては,質・量ともに物足りなかったですね.乾山と道八がお目当てだったのですが,見たかったものは半分も出ていなかったです.出ていたものも,先日別の美術館で見たばかりのものだったりで,個人的にがっくしでした...サイトで展示品をチェックしてから行ったことだし,それに,あまり混雑もしていなかったので,それは,まあ,いいのですが...
と,ぼやいたところで.以下は観覧順に.
東洋館では,特集陳列『中国書画精華』を中心に見ました.これは東博所蔵・寄託の中国の書画から名品をセレクトした展示で,絵画については北宋南宋時代のものが展示してあった前期に続き,後期展示では元・明時代のものが出ていました(書は展示替えなし).展示されていた絵画は以下のとおり.

01.因陀羅《寒山拾得図》 1幅 元・14c [東博
02.筆者不明《維摩図》 1幅 元・14c [京都/東福寺
03.伝顔輝《寒山拾得図》 双幅 元・14c [東博
04.伝孫君沢《高士観眺図》 1幅 元・13c [東博
05.顧安《翠竹図》 1幅 元・14c  [東京/吉祥寺]
06.杜貫道《離合山水図》 双幅 明・14c [東博
07.王ふつ《秋林隠居図》 1幅 明・建文3年(1401) [東博
08.呂紀《四季花鳥図(秋)》 1幅 明・15〜16c [東博] →《四季花鳥図》4幅
09.朱端《寒江独釣図》 1幅 明・16c [東博
10.張路《漁夫図》 1幅 明・16c [東京/護国寺
11.李士達《竹裡泉声図》 1幅 明・16〜17c [東博
12.文伯仁《四万山水図》 4幅 明・嘉靖30年(1551)  [東博] ※《万壑松風図》《万竿烟雨図》《万頃晴波図》《万山飛雪図》.
13.徐渭《花卉雑画巻》 1巻 明・万暦3年(1575) [東博
14.筆者不詳《鼠瓜図 》(唐絵手鑑「筆耕園」のうち) 1枚 明・15〜16世紀 [東博
15.蕭雲従《秋山行旅図巻》 1巻 明・17c [東博

15が特によかったですね.文字通り秋の山中(一部,水辺)を旅しているようなゆったりした気分を感じました.ところどころにある松がまるで歌っているような人に見えたりもして(ドゥワップのグループもいました!?).最後の方で,牛に乗って横笛を吹く少年もいい感じでした.
東洋館ではこの他に朝鮮絵画のコーナー(10室)に出ていた南啓宇《花蝶図》(1幅,19c)がなかなかよかったです.画面には妍を競って咲き揃う牡丹の大輪の花と,その近くを舞う(というより静止画像)蝶が2頭.これだけと思いきや,牡丹の根元には1匹の猫がうっとりとした目つきでうずくまっています.猫は白黒のツートーンカラー.目と目の間におしろいをつけています.春の駘蕩たる光景にこちらまでのんびりというところでした.
本館に移動して,まずは特集陳列『東京国立博物館コレクションの保存と修理』を観覧.さすがに力の入った展示ですね.前回来たときもちらっと見たのですが,その時は法眼円伊《一遍上人絵伝・第七》(1巻,正安元年[1299])が出ていました.今回はこれだけ展示替えで《住吉物語絵巻》(1巻,鎌倉・13c)になっていました.
この後,2Fを回ったのですが,印象に残ったところは

16.狩野秀頼《高雄観楓図屏風》6曲1隻・紙本着色,永禄年間頃 (本館・2室)
17.伝雪舟等楊《四季花鳥図屏風》6曲1双・紙本着色,室町・15c (本館・3室)
18.岡本秋暉《花鳥図屏風》6曲1隻(小屏風)・紙本着色 嘉永7年(1854) (本館・7室)
19.長谷川等伯《瀟湘八景図屏風》6曲1双・紙本墨画淡彩,桃山・16c (本館・7室)
20.狩野山楽《黄石公張良・虎渓三笑図屏風》6曲1双・紙本金地着色,江戸・17c (本館・7室)
21.狩野山雪《玄鶴・芦雁図》双幅・紙本墨画,江戸・17c (本館・8室)

印象に残ったところ,というよりも,屏風を抜き出してみました,になってしまいました.まあ,今の私の趣味嗜好です.
18は背景を水面のみとした花鳥図で,すっきりとした印象の画面.描かれている鳥たちがキャラ化を拒否しているというか,絶対に人には飼い慣らすことができないというような感じがして,おもしろかったです.20は右隻の3・4扇目に描かれている牡丹と太湖石がいい感じ.大覚寺にある同じ山楽の《牡丹図襖》を思い起こしました.先日,妙心寺で見た海北友松の《花卉図屏風》右隻の牡丹の花がヴィヴィッドでとても美しかったのですが,山楽も負けてはいませんね.黄石公張良は,曾我蕭白のものが頭に残っていて,そのせいか,山楽のものはずいぶんと普通に見えます(苦笑).前途有望な若者と温和なおじいちゃんという感じでしょうか.21は右幅の鶴図がおもしろい.半分眠っている鶴を描いたものですが,首を折りたたんでいる様がぎこちない感じで変!しかも,半分まぶたを開けているし.
それから,10室の浮世絵のコーナーは,国立西洋美術館で開催中の『キアロスクーロ』展に合わせて,キアロスクーロと同じように同系色の版を重ねて立体感を出している浮世絵を集めていました.出ていたのは,歌川国芳,歌川国虎,歌川国長,歌川国貞,昇亭北寿,渓斎英泉,月岡芳年小林清親,小倉柳村,井上安治らの作品.北斎がないのは『北斎展』に出ているためですね.また,小林清親の同じタイプのものが18室(近代美術)に4作出ていました(展示期間:2005.10/12〜11/20).個人的には国虎がつぼ.おもしろかったです.
東博は,特集陳列が割と多いから,ということでしょうか,普通の平常展の展示は,季節感が多少漂っていることを除くと,割とばらけている,散漫な感じもしなくはないんですね.テーマを持って,と言わないまでも,同一の画家なり,画題なりをもう少しまとめて出してもいいのではと以前から思っていたのですが,その意味では今回の『浮世絵キアスクーロ展』(勝手に命名しました!)はなかなかいい企画だったと思います(これで,8室あたりで司馬江漢とか,洋風画なんかも出していたらもっとよかったのに.って,またないものねだりですが).
ということで,今度は東博所蔵の大仙院旧障壁画を省略なしでどかんと展示してくれないかな.

【メモ】東京国立博物館
関連展示:国立西洋美術館 『キアロスクーロ ルネサンスバロックの多色木版画』 2005.10/8〜12/11