かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 山口晃 展  (日本橋三越本店新館7Fギャラリー)

山口晃の個展です.会場は,ゆかりある(!?)日本橋三越本店の新館7Fギャラリーです.21世紀以降の作品を中心に,思っていた以上に多くの作品が展示してありました.会場は若い人のみならず,現代美術の展覧会ではあまり見かけない年配の方もいて,さすがデパートの催事!と感心.
鳥瞰図に日本絵画の伝統的な手法を混淆した山口の方法がもっともよく現れた「都市図」と,それから澁澤龍彦の小説のために描かれた挿画が展覧会のクライマックスでした.また,この展覧会のために描かれた新作《芝大塔建立之圖》は,《何かを造ル圖》(2001)の系譜を引くものですが,これもとてもおもしろくて,よかったな.《厩圖》シリーズ同様,ちょっとお馬鹿な男たちの世界がユーモアと揶揄,あるいは批判の入り交じった独特の世界を形作っていました.芝大塔がちょっとバベルの塔に見えたのは私だけかな.
《百貨店圖》シリーズ(05〜07)や《東京圖》シリーズ(10,11)は,それぞれ依頼された仕事ということでしょうか,祝祭感が漂っておもしろいことはおもしろかったのですが,他の作品にしばしば見られるような思わず描いてしまった(あるいは,描かずにいられない?)哄笑的な表象がやや影を潜めている印象.あえて言えば,そこが物足りないかな.
17〜19は,文句なしにおもしろかったです.作家が持てるテクニックと想像力をフルに活用した世界は実に多様で見ているものの想像力を起動する仕掛けに富んだものでした.特に18,19に描かれているエロスはちょっとどきっとするほど美しかったですね.
瑕瑾は,20,21が二河白道インスタレーションでの展示ではなかったこと.23も『秘すれば花』展のときのようにインスタレーションとして展示してほしかった.
それから,展示の7割ぐらいが左から右へ移動して見るような順路になっていて,これも残念.やはり右から左へ見られるようにしてほしかったですね.
いずれにしても,おもしろいです.行くべし!

展示品リスト
01.《山乃愚痴明抄》1995
02.《ダクト圖》2001 [個人蔵]
03.《芝大塔建立乃圖》2005 [作家蔵]
04.《倉敷金刀比羅圖》2005 [大原美術館
05.《百貨店圖 日本橋 新三越本店》2004
06.《百貨店圖 日本橋三越》2004
07.《百貨店圖 日本橋三越》2004 ※06とは同題の別作品.
08.《三都圖》2003 [個人蔵]
09.《大阪市電百珍圖》2003
10.《東京圖 広尾−六本木》2002 [森ビル株式会社]
11.《東京圖 六本木昼図》2002 [森ビル株式会社]
12.《中西夏之氏公開制作之圖》2003 [個人蔵] ※図中の「山海塾の人」は天児牛大のことだと思います.
13.《厩圖2004》2004 [滋賀県立近代美術館
14.《當世おばか合戦 おばか軍本陣圖》2001 [高橋コレクション
15.《五武人圖》2003 [高橋コレクション
16.《奨堕不楽圖》2003 [個人蔵]
17.《「日清日露戦役擬畫」原画》一式 2002 [作家蔵]
18.《挿画「菊燈台」原画》一式 2003 [作家蔵]
19.《挿画「貘園」原画》一式 2004 [作家蔵]
20.《白道−「水河圖」》2004 [作家蔵]
21.《白道−「火河圖」》2004 [作家蔵]
22.《花圖》2003 [高橋コレクション
23.《携行折畳式喫茶室》2002 [個人蔵]
24.《すゞしろ日記》2003 [作家蔵]
25.《すゞしろ日記洋行編》2003 [作家蔵]

書き忘れましたが,会場で山口晃の作品を見ていて思ったよしなしごとを二つ.一つは,作画の上で大友克洋山口晃という流れがあるのではないか,ということ.それから,もう一つは《厩圖》シリーズや《當世おばか合戦》《五武人圖》などを見るに,その昔,武士たちが厩図,鷙鳥図,あるいは合戦図などを見るときの感覚って,たとえば,私たちが大友克洋の『AKIRA』を見るときのあの感覚に近いのではないか,ということ.そんなことを考えたのでした.
ぜひ私も山口晃に新作を依頼したいですね.《厩図》クラスだとどれくらいで描いてもらえるのでしょうか.まあ,宝くじが当たったらの話ですが(←って,買ってもいないのに当たらない,当たらない).せめて,私が土地持ち金持ちになったことにして,「裏・すゞしろ日記」でも書いてみようかしら.
【メモ】日本橋三越 会期:2005.11/22〜11/27 料金:500 主催:産経新聞
MIZUMA ART GALLERY   高橋コレクション