かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 館蔵浮世絵展  (MOA美術館)

今回MOA美術館に来たのは,企画展『館蔵 浮世絵展』(展示室6〜8)に出展の《湯女図》と伝雲谷等顔《花見鷹狩図屏風》がお目当てでした.両作とも美術全集の図版でしか見たことがなかったもので,ちょうどいい機会と出かけたわけです.
《湯女図》は6人の湯女とおぼしき女性たちの立ち姿(ぞろぞろ歩き?)を描いたものですが,面貌の描き方などがとても個性的(現代風!変っ!!)で目を惹かれました.また,彼女たちが身につける着物の意匠も美しく,興味の惹かれるところでした.
《花見鷹狩図屏風》(6曲1双・紙本金地着色)は,右隻に満開の花のもと異装の男女が輪になって風流踊に興じる風俗,左隻は冬枯れの山野で鷹狩を行う武士たちの様子を描いたものです.右隻の第5・6扇には藤が絡まる大きな松の木と貴人らを乗せてきたらしい駕籠と尻まる出し(まあ赤ふんはつけていますが)の駕籠かきたちが描かれています.彼らの様子−一杯やって浮かれて踊りだすものがいたり,でっかい煙管で一服つけるものがいたり−が,生き生きと描かれていて,これがなかなかおもしろかった.左隻の武士たちは割と長めの刀を腰にしていて,これもいかにも桃山風な印象でした.この作品には落款がありませんが,岩や木の描法から雲谷等顔の作と推定されています.
この他の展示では,琳派関連の展示室1に出ていた乾山の作品,特に初めて生で見た《銹絵染付梅花散文蓋物》と《色絵若松椿図枡鉢》が素晴らしかったですね.
また,展示室10の近代以降の浮世絵版画,新版画もなかなかおもしろかったです(実はこの室の展示がもう一つのお目当て).小林清親,井上安治,小倉柳村らの風景画や,橋口五葉や伊東深水らの美人画.橋口五葉は6作出ていましたが,この中ではやはり《化粧の女》(大正7[1918])がよかったですね.大正美人らしいいくぶん陰のある肉感はもちろんのこと,半襟などの細部にうかがえるアール・ヌーヴォー意匠などが印象に残りました.
しかし,いつ来ても思うんですが,MOA美術館に展示してある作品,割と玉石混淆で,しかも玉と石の差がものすごく開いていたりして...もの凄いものが出ているかと思うと(まあ,こちらの方が比率高しなのですが),それをちゃらにしてしまうような...ちょっと複雑な気分です.
【メモ】MOA美術館 http://www.moaart.or.jp/japanese/top.html  会期:2006.1/1〜1/25