かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 花鳥風月 屏風絵の世界  (静岡県立美術館)

静岡県立美術館に所蔵,あるいは寄託されている屏風を中心とした展覧会です.正月らしく「一 吉祥の間」に始まり「二 富士の間」「三 花鳥の間−艶」「四 花鳥の間−粋」「五 物語・風景の間」という章立てで22件の屏風その他が展示してありました.
長澤蘆雪の奇抜な構図をした《瀧に鶴亀図屏風》(6曲1双・紙本墨画淡彩),金地抽象空間が圧倒的な狩野栄信《桐松鳳凰図屏風》(6曲1双・紙本金地着色),怪物じみた孔雀が印象的な岸駒《孔雀図屏風》(6曲1双・紙本墨画淡彩),技巧のオンパレードの伊藤若冲《花鳥蔬菜図押絵貼屏風》(6曲1双・紙本墨画),西洋人が望遠鏡を見ている先にいやに丸っこい富士山がどかんとある岡田半江《洋人富士山遠望図》(6曲1双・紙本墨画),あるいはシックな墨味の円山応挙《竹雀図屏風》(6曲1双・紙本墨画),大和絵風に描いてもやっぱり”断崖絶壁”感のある雲谷等顔《春夏山水図屏風》(6曲1双・紙本金地墨画着色)などなど.
中でも特に印象に残ったのは狩野山雪《四季花鳥図屏風》(6曲1双・紙本着色)でした.これは山雪の若い頃の作だそうで,たしかに全体の構図などは狩野派の四季花鳥図の伝統(粉本!?)にしたがったものなのですが,細部を見ると,あちこちにいかにも山雪らしい描写を見ることができます.水平,垂直などの線を重ねる幾何学的な岩の描き方,左隻の左端の方にいる鳥のふっくらと丸まった感じ,そしてなんと言っても,水面に描かれている震えをともなった線による漣などです.後年のあの山雪らしさがすでにうかがわれて,おもしろかったですね.
また,「子猷訪載」を描いた屏風が江戸時代初期の徳力善雪《子猷訪載・東坡騎驢図屏風》(6曲1双・紙本墨画着色)と文政11年(1828)の吉村孝敬《李白観瀑・子猷訪載図屏風》(6曲1双・紙本着色.ただし,展示は左隻《子猷訪載図屏風》のみ)の2作が出ていましたが,同じ逸話を描いたものでも,これがずいぶん違う印象でおもしろかった.善雪の子猷はお供の童子らを引き連れた図ですが,孝敬の子猷は孤舟に一人すっくと立っていてずいぶんロマン主義風でしたね.

それから,富士山本宮浅間大社所蔵の「元信」印《富士参詣曼荼羅図》(1幅・絹本着色),《富士浅間曼荼羅図》(1幅・絹本着色)が特別公開として出ていました.

この他に常設展『西洋美術への招待』やロダン館などを見ました.ロダン館ではもちろん「ロダン体操」をしてきましたよ(ウソ).それから《地獄の門》が不思議にも九州派に見えたりして...

チケットの半券を折ると6曲1隻のミニ屏風になったり(狩野栄信《桐松鳳凰図屏風》の左隻),お年玉(?)に絵はがきをもらえたり(展覧会とは直接関係ないものですが),とちょっとうれしくなるようなお正月の静岡県立美術館でした.

以下,余談.静岡県立美術館に行くときはだいたいJR草薙駅からバスに乗るのですが,12/31〜1/3は特別ダイヤで,それは静鉄のHPに確かに記載があって知っていたのですが,大方便数が減るぐらいだろうと思っていたところ,なんと全便運休でした(泣).歩けない距離ではないので,とぼとぼと歩くことにしました.だいたい25分ぐらいですか.帰りも歩いたのですが,このときになって初めて雪をかぶった富士山が間近に見えることに気付きました.いつもは西にある富士山が東の方に見えるだけでずいぶんと印象が違い,おもしろく感じた次第です.バスの運休は,こうしてみると,ちょっとラッキーだったかな.
【メモ】静岡県立美術館 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/topj.html 会期:2005.12/23〜2006.2/12