かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 肉筆浮世絵の美 氏家浮世絵コレクション [前期]  (鎌倉国宝館)

鎌倉国宝館内にある(財)氏家浮世絵コレクション所蔵の肉筆浮世絵を中心とする展覧会です.会期を前期・後期に分け,約60件の所蔵品がほぼ全点展示されます(下記サイトに展示目録あり).
懐月堂安度らをはじめとする初期から後期の北斎に至るまでの肉筆浮世絵の秀作を見ることができました.中でも北斎は数作出ていて,《蛸図》や《若衆文案図》などそれぞれがおもしろかったです.
ところで,今回の私のお目当ては実はそれら浮世絵師たちによるものではなくて,ちょっと毛色の違う岩佐勝重《職人尽図屏風》(6曲1隻・紙本着色)と司馬江漢《江之島富士遠望図》(1幅・絹本着色)の2作でした.
岩佐勝重《職人尽図屏風》は小さめ押絵貼屏風で,各扇に鏡磨,経師,数珠師,歌比丘尼と虚無僧,染物師,鍛冶師(右→左)が描かれています.出光美術館にある《職人尽絵巻》あたりをもとにしたようですが,背景に割と濃いめの薄墨が引いてあって,それが焼けた銀にも見えてちょっと古雅な味わいがありました.人物描写は勝重の父親の岩佐又兵衛に比べると,ずっと穏やかな印象ですが,それでも虚無僧の尺八(ちと細いのでは!?)の吹きっぷりは又兵衛の描いたそれを思わせるものでした.鏡磨,数珠師(にやにや笑っている),染物師(女性です)は手元ではなくそっぽを向いて仕事をしていて,オイオイという感じがちょっと楽しかったかな(笑).
司馬江漢《江之島富士遠望図》は片瀬方面から見る江之島を正面に,そのずっと右方に富士山を描いたものです.空の青,海の青とそこから浮き上がるように描かれた江之島がなかなかいい感じでした.江漢は油彩で富士山の絵を多く描いていますが,この絵は絹本着色と伝統的な画材を使ったもので,油彩とは違った淡い色彩がなかなかよかった.それから干潮時に現れる砂州の両側から静かに打ち寄せる波の表現が印象に残りました.
この他に常設展の仏像などを見ました.
【メモ】鎌倉国宝館 http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kokuhoukan/index.htm  会期:[前期]2006.1/41月4日〜1/22 [後期]1/24〜2/12