かけらを集める(仮)。

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 日本近代洋画への道 山岡コレクションを中心に 高橋由一から山本芳翠、熊谷守一まで  (岐阜県美術館)  [2006.3/17記]

山岡コレクション(山岡コレクション)の初期洋画を中心に(一部,山岡コレクション以外の笠間日動美術館所蔵の作品あり),岐阜県美術館が所蔵している/に寄託されている作品を加えて,明治から大正までの日本における洋画の変遷をたどった展覧会です.
山岡コレクションは,ヤンマーの創業者,山本孫吉氏の蒐集による個人コレクションで,高橋由一やチャールズ・ワーグマンら日本における初期洋画の秀作を多く含んでいます.以前は一部研究者のみの知る幻のコレクションでしたが,近年,笠間日動美術館に一括寄贈され,それを期に各地で巡回展が開催され,コレクションの全貌が紹介されています.
質・量ともに印象的だったのは,やはり高橋由一でした.展示の冒頭にあった《鯛図》(制作年未詳)[笠間日動美術館の鯛と同じ桶に入れられた伊勢海老の髭のぎらぎらとした厚塗りが目に強く残りました.それから,やはり《鮭図》(1879〜80年[明治12〜13])[山岡コレクション]も.由一は《鮭図》を何点か描いていますが,山岡コレクションの鮭は半身をほとんど食べ尽くしたものでした.西洋の静物画にも魚を描いたものがありますが,鯛にしろ,鮭にしろ,由一の絵には,西洋の静物画とは違った実に不思議な感じがします(これは金刀比羅宮の《豆腐図》が最たるものですが).単に油絵の具という新しいテクノロジーとの出会いだとか,写実画としてのリアルさだとか,そういったものからはみ出してしまうような奇妙さも感じられるのですが,どうでしょうか.
由一と並んで充実していたのは,山本芳翠です.中でもおもしろかったのは《浦島図》(1893〜95年[明治26〜28])[岐阜県美術館寄託]ですね.これは玉手箱を持った浦島(長髪の美男子.でも,なんだか手足がごつい)が,乙姫らに見送られて竜宮を去っていくシーンを描いたもの.題材自体は伝統的なものですが,その描き方は和風ではなく,インド風のエキゾチックなものです.遠くには宮殿がかすんで見えたりします.この時期の日本の洋画は和な題材を取り上げても,必ずしも和風ではなく,どこか洋風に描いたりしますが,この作品もそんな感じの大作です.
また展示作中には,日清・日露戦争に取材した戦争画がいくつかあり,ちょっと気になりました.これは一つには山口晃《日清日露戦役擬畫》からの連想ということもありますが,やはり近代日本における芸術と戦争の関係が透けて見えるところが大きな理由です.西南戦争を描いた錦絵から日清・日露戦争を描いた洋画へと戦争画の流れをたどってみると,そこにはひょっとしたら戦争画が次第に「清潔化」していく流れがあるのではないか,などと日本軍の整然と行進する様子を描いた絵を見て漠然と妄想したりもしました.
この他では,熊谷守一の初期作品,《蝋燭》(1909年[明治42])[岐阜県美術館]岸田劉生《自画像》(1914年[大正3])[岐阜県美術館]が印象に残りました.
【メモ】岐阜県美術館 会期:2006.1/13〜3/12 >展覧会詳細