かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 正伝寺   [2006.3/18記]

正伝寺は,七五三調に躑躅を配植し,比叡山を採り入れた借景庭園と本堂(方丈)広縁の「血天井」で有名ですが,今回のお目当ては狩野山楽による障壁画です.
    西
  A│B│C
南─────北
  D│E│F
    東
正伝寺の本堂(方丈)には,4室に狩野山楽による障壁画を見ることができます.A・D・E・Fの4室で,いずれも墨画淡彩金泥引きによる山水図(《西湖真景図》?)になります.観覧はA室以外は室内に入ることができ,わりと近づいて見ることができました.また,E室とF室の間の襖4面は取り外してあり,C室に別置してありました.またC室の西側南寄りの違い棚にある小襖(4面)には《果物図》が描かれていました.これも山楽によるものと推定されています.山水図は全体的に楷体のくっきりとした絵柄で,先に『ニューヨーク・バーク・コレクション展』で見た同じ山楽の《西湖図屏風》に近い印象でした(バーク本は狩野山雪の関与説あり).ただし,こちらの方が画面が広いだけあって,もう少し余白を多めにとってゆったりと描いています.室中(E)は雪景山水図で,ここは特にいい感じでした.南側西寄りに小さく描かれた犬を連れた傘を持つ人など印象に残りました.
この日は,参拝客が私一人だったこともあり,とても静かで,本堂の室内に入って障壁画を見ていると,鳥の鳴き声だけが聞こえて,それこそ心洗われる気分だったのですが,しばらくすると近くでドガガガガとなにやら工事が始まり,あっという間に静けさは失われてしまいました.う〜む,残念.
【メモ】正伝寺 拝観料300円
【補記】(2006.11/16)
正伝寺方丈の前身 徳川家康により伏見城本丸御殿として造営(1602〜1610年)→大坂城徳川秀忠,家光の大坂巡行時の御座所(仮殿)としてに移築(1623年)→金地院に御成の間として移築(1626年)→正伝寺に寄進(1652年)
また室中障壁画は伝雪舟《山水図巻》(京博)の図様によるものとのことです.
以上,川本桂子「障壁画の復元研究」(『講座日本美術史1』東京大学出版会,2005.4 ※川本桂子「正伝寺方丈障壁画の復原的考察」(「美術史」103号,1977)の要約)によりました.