かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

  「静岡ゆかりの画家たち」「我が愛しのコレクション」  (静岡県立美術館)

静岡ゆかりの画家たち 「I 徳川慶喜幕臣の画家たち」「II 静岡を愛した画家たち−東京から静岡へ」「III 静岡が生んだ画家たち−静岡から全国、世界へ」の3部構成.
話題になっていたのは徳川慶喜(1837〜1913)の油絵《風景》でしたが,私が一番おもしろかったのは元幕臣の川村清雄(1871〜1945).長押サイズの横長画面の作品のうち,《海底に遺る日清勇士の髑髏》(板・漆絵,1899年以前)が凄い.漆黒の海底(漆絵なので文字通り「漆黒」)にうっすら見える二つの髑髏を描いています.向かって左方に色紙様の矩形描かれていて,そこには大伴家持の和歌が勝海舟によって揮毫されている...暗黒絵画でした(勝海舟と言えば,川村清雄の絵を初めて見たのは教科書に載っていた勝海舟像でした.当時は作家が誰かなんて全然知りませんでしたが).それから,同じ川村清雄の《巨岩海浜図》(板・油彩,大正期頃)と《波》(キャンバス・油彩,1913年頃〜27年)もちょっと奇妙な印象.表面がけっこう厚塗りで,その質感が変!な感じ. 特に《巨岩海浜図》は文字通り浜辺にある巨岩を描いたものですが,その近くには茶店が出て,物見遊山の人が群集していたりまします.といって,単に名所図とばかりも言えない感じもして.描かれている和な情景といかにも油絵というマチエールの組み合わせが,う〜む,奇妙な感じです.
それから,やはり元幕臣小林清親(1847〜1915)の版画が多く出ていました.またしても提灯の中に逃げ込む鼠を追っかける猫クンとか.光線画による東京図が中心で,時間や雪といったモチーフごとに分類展示されていました.


我が愛しのコレクション こちらは現代美術の展覧会.静岡県立美術館のコレクションの他,A氏とB氏の二人の方のコレクションからセレクトした展示でした.
A氏のコレクションは河原温や宮島達男が充実していましたが,中で小谷元彦《胸いっぱいの愛を》(2005.※女性士官が椅子に座っているやつのみ)に再会できたりして,うれしかったですね.
B氏のコレクションでは森山大道オノデラユキら写真が充実.また,なんと言っても,静岡県立美術館のコレクションや寄託作品も交えての李禹煥の絵画が素晴らしかった.1975年の《点より》に始まり,《線より》シリーズ,1980年代後半から90年代にかけての《風と共に》シリーズ,さらにそれに続く《照応》シリーズと16点の作品によって,李禹煥の絵画の変貌の跡が生々しく実感できる展示でした.筆の動きにしろ,色彩の違いにしろ,時代を追って微妙に変貌する際のその連続/不連続がおもしろかったです.昨年の横浜美術館の個展で,ちょっと物足りなく感じた部分をこの展覧会で補ってもらいました.
静岡県立美術館のコレクションは作品の個々はなかなかよかったのですが,ラインナップを見ると,どこかで見たのと同じ感じで...同時期にできた美術館の現代美術のコレクションは似通ってしまうのはいたしかたないところなんでしょうね.


今回の富士山コーナーは,岸駒《芙蓉峰図》(1幅・絹本着色金泥引・19c前半)でした.


【メモ】静岡県立美術館 2006.3/3〜4/4