かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 北斎・広重の湘南 −風景と人物−

北斎・広重らの風景版画のうち,湘南に関わる題材を描いた浮世絵版画を中心とする展覧会です.出品総数は107点ですが,大幅な展示替えがあるので,今回見ることができたのはその半分弱くらいでした.湘南(戸塚・藤沢・平塚・大磯・小田原)を描いた東海道五十三次ものの他,江の島,大山,箱根,富士山,南湖の左富士,馬入の渡しなどを描いた浮世絵が集めてありました.この他に茅ヶ崎ゆかりの人物として,市内に菩提寺(浄見寺)のある大岡忠相や広大な別荘を持っていた9世団十郎の浮世絵も.
お目当ては歌川広重《相州江の嶋弁才天開帳詣岩屋の図》(大判錦絵三枚組).これは海側から見た江の島と,そこに参詣する女中たちのを描いたもので,サイトで図版をちらりと見た際に江の島の造形がおもしろくぜひ実物を見たいと思い,展覧会に駆けつけた次第です.実物を見ると,陰影濃く描かれた島の姿もいい感じだったのですが,どういうわけかフルチンでおよぎ回る小さな子どもが数人描かれており,彼らのことが気になってしょうがありませんでした(笑).彼らは何もの? 近くに住む漁師のせがれたちでしょうか.
茅ヶ崎市美術館に行ったのは今回が初めてのこと.美術館は駅から歩いて8分ほどの高砂緑地にあります.高砂緑地はもと川上音次郎の別荘があったところで,その後,原安三郎氏(元日本火薬会長.そういえば,原安三郎氏も浮世絵のコレクターでしたね)の別荘となり,さらに茅ヶ崎市が購入し,日本庭園として整備したところだそうです.美術館はアット・ホームな雰囲気のする,しかも,なかなか可愛い印象の建物でした.どなたの設計かしら?
ところで,今回の展覧会は,美術館初の浮世絵の展覧会だとのこと.全点借り出しで,その準備はなかなか大変だったと思いますが,見る方のわがままとして,どうせ借り出すのなら,保永堂版「東海道五十三次」など,もう少し状態のいいものを出して欲しかったですね.そのあたり,ちょっと残念.それでも,湘南らしい題材をそろえていて,なかなか楽しい展覧会なので,お近くにお住まいの方はぜひ.
併設開催の「おーくん・あきらの『版』の世界」展は,茅ヶ崎市在住のグラフィック・デザイナー,おーくん・あきら(大久保晃)の作品展.おもに「版」表現による作品を中心とした展覧会です.ZABADAKのアルバムジャケットのデザインなども手がけているのですね.なるほど.
【メモ】茅ヶ崎市美術館 2006.7/25〜9/10 有料の解説パンフあり(200円).