かけらを集める(仮)。

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 江戸文化シリーズ22 お殿様の遊芸  (板橋区立美術館)

板橋区立美術館おなじみの江戸文化シリーズの22回目.今年は全国各地のお殿様(10人の将軍と全国22藩の藩主ら)の描いた絵画,64点を集めた展覧会となりました.
展示は全国22藩のお殿様の絵の展示をメインに10人の徳川将軍の絵を集めた「将軍家コーナー」などで構成.
藩主らの絵は,秋田藩佐竹曙山(1748〜85)や伊勢長島藩の増山雪斎(1754〜1819)といった画技でかねてより有名なお殿様もいますが,初めて見るお殿様も多数でした.作風は江戸狩野派ベースですが,南蘋派風の作品が量・質とも一際目立っていました.お殿様も流行には弱いわけですね.中には,あまり上手くない,いかがなものかと思われるものもありましたが,そこはそれ,なかなか味があってよろしい,ということになってしまうのがお殿様の絵だったりして,うらやましい...実際,なんだかすごく前衛的な表現になっているものもあったりするのですから,悔しいかぎりです(笑).
注目は,今回の展覧会の契機となったという仙台藩伊達吉村(1680〜1751).土佐派に学んだ麗しい大和絵は,その細密描写も含め,プロ顔負けのテクニックでした.特に六玉川を描いた《六所玉河和歌御手鑑》はデザインセンスにも秀でた優品で,よかったです.なお,吉村の作品は展示室外にも特に1コーナーが設けられていました.
また,南蘋派(風)では,宇都宮藩の戸田忠翰(とだただひろ.1761〜1823)の作品が充実(6点展示).増山雪斎との出会いを示す作品(戸田忠翰画・増山雪斎賛《蓮ニ翡翠図》)があったり,画技の熟達のさまを作品ごとに追えたりして,なかなか興味深かったです.
この他では,田安宗武(1715〜71)の《唐子遊図》や酒井宗雅(忠以.1755〜90)《茗荷・蕗図》などが印象に残りました.《唐子遊図》は唐子が”こおとろことろ”をして遊んでいるところを描いていた一見微笑ましい作品ですが,鬼の唐子が股のぞきをしていて,しかも,下半身むき出しというところがすごい(笑).酒井宗雅の《茗荷・蕗図》は弟の酒井抱一譲り(!?)のたらし込みがシックな琳派風の1幅でした.
【メモ】板橋区立美術館 2006.9/23〜10/22 カタログ(P104・図版オールカラー)1000円 キュレーター:安村敏信板橋区立美術館館長)