かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 出光美術館名品展II[前期]  (出光美術館)

出光美術館開館40周年を記念して,館蔵品の中から名品をセレクトした展覧会.4月〜6月開催の「I」に続くもので,今回の展示は「狩野派の絵画と長谷川等伯」「琳派」「近世の書跡と松尾芭蕉」「仙突」「文人画」「日本陶磁」「肉筆浮世絵」.
以下,おもしろかったものをいくつか挙げてみる.
祇園祭礼図屏風》は右隻に山鉾巡行,左隻に御輿渡御と武者行列を描いたもの.やや色が落ちて古ぼけた印象の画面だが,細部にはストレンジなところが間々あっておもしろい.特に右隻の下方に描かれる仮装の武者たち.禍々しいほど大きくて派手な母衣(舟木本ほどではないが)をはじめ,奇矯な鍬形をした兜や巨大な烏帽子など,まさにジャパニーズ・ポップな(cf.郡山市立美術館)装いだった.
変と言えば,狩野尚信《唐人風俗図屏風》もなかなかのもの.余白をたっぷりととった画面に農村を舞台とした風俗を描いている.左隻の猿曳きなど印象的でいい感じ.ただ,生い茂る木々を描こうとして,薄墨の上に濃墨を広げているのだが,その描線がなんだかぐちゃぐちゃになっている.探幽ならばっちりと瀟洒にキメルところを,尚信がやったら大失敗,という感じか.まあ,このぐちゃぐちゃ加減がかなり変で,ここだけ見ていると乱暴派の抽象画かなにかに見えてくる.ひょっとして,天才の兄,探幽を揶揄しているのではなどとあらぬ事を想像したりもして...
今回,いちばん印象に残ったのは,伝俵屋宗達の《月に秋草図屏風》.弦月の銀が黒く焼け下の方が溶け出しているように見える.そんなぼやけた月の光の中,萩をはじめとする秋草が,同じように金地の闇にゆっくりと溶け込んでいく,あるいはぼんやり浮き出している,そんな風に見える.「輝ける闇」とでも呼ぶべきか.思いの外,凄みのある金地空間だったことに驚かされる.以前見たときはあまりぐっと来るものではなかったのだが,不思議なものだ.
お目当ての一つ,宗達西行物語絵巻》は開かれている箇所が,詞・絵各1段のみで,物足りなかった.半ば予想していたこととはいえ,これにはがっくし.もう少し見たかった.後期日程で,私の大好きな英一蝶《四季日待図巻》が出るのだが,やはり期待薄かな,とちょっと気がくじけてしまう.
この他,長谷川等伯《松に鴉・柳に白鷺図屏風》,伝尾形光琳《禊図屏風》(解説では「成乙」印の画家と推定),鈴木其一《蔬菜群虫図》,岩佐又兵衛《野々宮図》,冷泉為恭《雪月花図》などが印象に残る.相変わらず文人画(特に山水)には無反応な私なのであった.
【メモ】出光美術館 前期:2006.11/11〜12/3 後期:2006.12/8〜12/24 ※絵画を中心に大幅な展示替えあり(サイトに一覧あり).
余談.帰りに第一生命南ギャラリーを見に行ったら,土曜日は休みだった.残念.