かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

泗水のイメージ 浮世絵に描かれた四日市のイメージ  (四日市市立博物館)

四日市市立博物館所蔵の近世絵画,浮世絵,その他資料と市内のコレクター所蔵の浮世絵版画による企画展.「第一章 浮世絵の前夜と奇想(館蔵品による)」「第二章 泗水のイメージ」の2章立て.
第一章では,東海道の道程を描いた屏風絵,保永堂版《東海道五拾三次之内》(三重県内を描いたもの),三重にゆかりのある絵師,文人−増山雪斎,月僊,曾我蕭白ら−による絵画を展示.
曾我蕭白《山水図屏風》(紙本金地墨画・2曲1隻)は,蕭白にしてはあまりSF風ではない,どちらかと言うとおとなしい画面.左下方にいる牛の姿などはいかにも蕭白っぽい様子.この屏風はちょっと変則的で,第2扇の左寄りに折れ目(?)があり,実は変形3曲1隻なのかもしれない.いずれにしても,もともとこの形だったのか,よくわからず,気になるところも多い.蕭白はもう1点鍾馗図》(紙本墨画・1幅)が出ていた.
増山雪斎《猛虎図》(絹本着色・1幅.文化12年[1815])はかなりエキセントリックな逸品.虎の背中のラインが描くうねうねとした曲線がいい感じだった.
第二章がテーマとしては本編で,浮世絵版画に描かれた四日市(市内の宿場)のイメージを追っている.「日永の追分」「橋と風」「富田の焼き蛤」「蜃気楼」など.
このうち,特におもしろかったのは「日永の追分」で,伊勢神宮の参宮道を示す鳥居,燈籠,饅頭屋といったランドマークやおかげ参りの子どもらの姿などにより「追分」のイメージが繰り返し描かれていることがわかる.
また,「蜃気楼」のところで出ていた将軍家茂の蜃気楼見物の様子を描いた浮世絵版画も興味深い.多くの家臣らに取り巻かれ,物々しい様子で蜃気楼を眺める将軍のイメージはそれでいてなんだかのんびりもしている(それにしても上洛途中で本当に蜃気楼見物をしたのだろうか?それとも名所と事件を取り合わせたフィクションに過ぎないのか?).徳川家光以来230年ぶりの将軍上洛となった文久3年(1863)の家茂の上洛は,当時注目のイベントだったらしく,浮世絵に多く描かれたようだ.以前,港区立港郷土資料館の「UKIYO-E −名所と版元−」展に,高輪海岸を描いた浮世絵版画のうち,京都方向へ進む将軍家茂のものものしい行列,逆に江戸方向へ急進する官軍の一行,そして,新橋から横浜へと走る蒸気機関車を描いたものが並んでいて,浮世絵の時事的な出来事に対する好奇心の強さが興味深かったことを思い出す.(こちらは浮世絵ではないが,12/3に行った京都市歴史資料館「京のかたちV −幕末の京都」展にも家茂上洛が一部テーマとなっていた.)
企画展の後,常設展も合わせて見学.「四日市祭り」「日永の追分」「萬古焼き」などの展示がおもしろい.
【メモ】四日市市立博物館 2006.11/7〜12/10 一般400円 カタログ1300円(買わず)