かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

「狩野山楽・山雪」[後期](京都国立博物館)

江戸初の京狩野・初代二代の代表作を集めた大規模展。展示替えがあったので、前後期それぞれを観覧。天球院障壁画の位置づけに端的に示されたように、この二人の画業を桃山絵画の総括・終焉であるとともに、18世紀に花開く京都の日本絵画の出発点とする観点に共感する。

特に山雪の(再)紹介に力が入っており、海外からの里帰り作品で、周辺作とともに展示された旧天祥院客殿障壁画《老梅図襖》[メトロポリタン美術館]・《群仙図襖》[ミネアポリス美術館](この両作はもともと同じ襖の表裏だった)、あるいは《長恨歌絵巻》[チェスタービーティーライブラリー]といった作品は圧巻、見所十分だった。

「かわいい」を切り口にした山雪水墨画もおもしろい。直接の影響関係はないだろうが、これら諸作に雪村画を連想したのだが、如何? 初めて観た水仙・梅・沈丁花を描いた小品《兄弟図》[個人]がお気に入りの作品となった。

「極みの山雪ワールド」と題された最後の第8室に山雪マスターピース群がずらっと並べられていた。ここで展示の多くの作品は、以前、京博の平常展でためつすがめつ観たものであったが、あらためてこうして一挙に観ることができたのは、眼福の一語につきる。

中でもあまり展示されることがなかった山雪《竜虎図屏風》をおもしろく観る(実物を観たのはこれが初めてのこと)。竜虎の造形の奇矯さ(龍の寄り目は後の蕭白が受け継ぐ、か)、波濤の神経質な荒々しさなど。

図録も、山楽・山雪研究の現状を集大成した充実した内容。表紙は山雪の《雪汀水禽図屏風》。波の工芸的なでこぼこまで再現。

チャレンジを多く含む、充実した展覧会だったと思う。

ただ、同じ京博で開催された狩野永徳展や長谷川等伯展にくらべ、観客が少なかったのが残念。もっともおかげで自分のペースでゆっくりと観ることはできたのだが。

また、来年開館予定の、谷口吉生設計の、平常館が、だいぶできていた。