かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

ジムO 六デイズ:その二 Jim O'Rourke(スーパーデラックス)

大学時代の作曲
第一セット:みず の ない うみ
第二セット:エスター叔母
第三セット:弦楽四重奏&発振器/String Quartet & Oscillators【世界初演
客入れと休憩中の音楽:DJ.Tatsu(aka 山本達久)

[みず の ない うみ] 約40分
演奏:Jim O'Rourke 山本達久 U-zhaan 石橋英子 須藤俊明 高岡大祐 千葉広樹 他?
JOは音響ブースにて音出し。その他の演奏者は、会場各所に散在、あるいは、移動しつつ、鉦や鈴などの小物を適当なタイミングで鳴らす。
また、舞台後方には、コンコルドの着陸する様子が、色調を変えつつ、何度も何度も繰り返すミニマルな映像が投射されていた(一昨年のスーパーデラックスでのJOのワンマンで上映されていたもの)。
JOの演奏/操作するたゆたうドローンの上に、硬質な音色の鉦や逆に柔らかく散乱する鈴の音がニュアンスを加える。演奏者が移動するので、音量や音像がゆっくりとうつろうように思われた。


エスター叔母] 25分弱
演奏:Jim O'Rourke[conduct & 作曲] 山本達久[dr] 高岡大祐[tuba] 須藤俊明[perc/小物] U-zhaan[タブラ] 石橋英子[key] 千葉広樹[vl] 波多野敦子[vl] ※後方での演奏は目で確認できず、ちょっと怪しい。 
JOが17歳の時に作曲したグラフィックスコアによる作品。壁面に何も書かれていない4本の五線譜が投影。その上にJOがOHPによってグラフィックスコアを投影し、それを見て演奏が行われる。演奏家は会場各所に散在。何人かは演奏中に移動もする。
グラフィックスコアは古い新聞から切り抜いた写真のように、網点がくっきりと出ている中年女性の図像(これがエスター叔母?)。JOはOHP上で、この図像を変形したり、位置を動かしたりなどの操作し、演奏を導く。五線譜と網点の交錯、図像の形と位置が演奏内容を指示しているようだった。中央の通路をJOが台車に乗せたOHPを徐々に動かしながら前進、舞台まで来たところで、演奏は終了した。
PAを使っていないので、客席のどこにいるかで、聞こえてくる音/音楽はだいぶ異なった姿をしていたのではないかと思う。私の位置からは、山本達久のドラムの断続的な演奏が核となって聞こえ、その隙間を縫うように、チューバ、キーボード(オルガン)、バイオリン、タブラの音がただよってきた。チューバは繊細なメロディ、オルガンとバイオリンはドローンを奏でているようにうっすらと聞こえた。
誰か、道化/攪乱者としてのJim O'Rourke、という論文/エッセイを書かないものかな。とふと思う。って、先頃亡くなった山口昌男の影響がかなり出ているな、オレ。


弦楽四重奏&発振器] 60分弱
演奏:Jim O'Rourke[conduct & oscillators] 波多野敦子[vl] 千葉広樹[vl] 手島絵里子[viola] 関口将史[cello]

              関口
            手島
                       JO
            千葉
              波多野

                                                                                                      • -

                [客席]

JOが大学時代に作曲した曲で、指導教官のOKが出なかったため、当時、演奏ができなかった作品とのこと。La Monte Young→Tony Conrad→Jim O'Rouke という系譜を強く感じさせる、ストリングカルテットとオシレータによるハード・ドローン。
JOに向かい合うかたちで半円にストリングカルテットが並ぶ。JOの前の机にはMacと発振器(?)。各弦楽器はマイクで音を拾い、PAから音を出していた。約30分の2パート、全体で60分弱による演奏。JOの指揮/合図により、各パートとも12回ほど転調?していく。はじめに2本のバイオリンにより演奏が始まり、ゆっくりと音楽が起ち上がる。他の楽器がしばらくして加わると、音が急に分厚く、かつ重くなる。決して激しくはないが、音は、うねり、轟き、響き、そして、渦巻く。SLDXの空間に、音の潮がゆっくりと満ちていくようだ。しかも、何層にもわたって、繰り返し繰り返し。そして、その音の潮に、聴くものの身体/耳が浮かび上がり、静かに漂うような感じもする。会場の外でも、音は響き、揺れていただろうか?
ぜひもう1回聴きたい。

盛大な拍手を前に、感極まっているJOの「余計なことを言う前に断腸の思いでドロンします」とのユーモラス、かつ謎な?言葉で今日は幕。楽しい一夜になった。