かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2015」[第1日]

総括して言えば、天気もそれほど悪くなく(というか、暑いことは暑かったが)、不快なこともほとんどなく(まあ、多少、カメラ猿の害はあったけれど)、いい旅行ができたと思う。
この大地の芸術祭は、広域での開催なので、基本的には、自動車で移動するしかない。まあ、レンタカーでもいいのだが、一人だとコスパが悪い上に、山道を走るのはいささか不安だ。前回は、2009年の開催の際に来たのだが、そのときも2泊3日で、初日はレンタル自転車を借りて、十日町の市街を回り、残りの2日はツアーバスに乗った。残念ながら、これだと3日かけても、展示のある地域の半分も回ることができなかったし、有名作品の多くをあきらめざる得なかった。
今回は、ツアーバスの種類が減ったものの、その代わりに、エリア周遊バス・タクシーという半日コースで作品を見て回るシステムがあったので、割と安く、効率よく、見て回ることができた。
このエリア周遊バス・タクシーは、2日券(前売り2000円、当日だと500円増し。日数を限らないフリーパス、前売り3000円、当日+500円、もあった)で、4つの周遊コースと、十日町→まつだいのほくほく線での移動1回と、まつだいから津南までのシャトルバスの移動1回を利用した。車両は大型バス、中型バス、マイクロバスだった。先着順乗車だが、とりあえず、乗れない、ということはなかった。
周遊コースは、その地域の代表的な作品、有名作や今回の新作を中心に、わりときめ細かく観覧スケジュールが設定されている点もなかなかよかった。ただ、停車時間が決められており、限られた時間では、どうしても急ぎ足になってしまうなど、難もあるのだが、他に移動手段を持たないものには、とても便利だった。
また、利用にあたっては、ガイドブックなどでの予習は欠かせない。ある程度、事前に知識を入れておかないと、それこそパスポートにはんこを押して、作品の写真を撮ることに終わってしまう。その場所で、作品を観る/聴く/感じる、といった本来的な鑑賞ができない。時間は貴重だ。(なお、週末には、解説のボランティアさんが同乗することもあるようだ。)
地域に散在している作品は、広義の現代美術、アート作品で、大まかに、①パブリックアート的なもの、②空き家を利用したもの、③廃校を利用したもの、に分けられる。また、創造のモチーフとして、多かれ、少なかれ地域の風土や歴史、住民が何らかの形で取り上げられている。協働がモチーフになっていることも多い。これらの作品の他に、ワークショップ、トークや演劇やパフォーマンスの上演などのイベント的なものも多くあり、今回は日程のうまくあった演劇作品を1本、観ることができた。
展示作品は2000年の第1回開催時のもから、今回の新作まで、制作時期は多様。以前に作られたものも、手が加えられ、リビジョンアップされていたりもするのだが、全般的に、新作が、作品の強度が強く、おもしろいものが多かった。古いものが古びてだめになった、ということではなく、古色がついて、かえって、おもしろくなっているものももちろんあった。ただし、作品そのものが、それほどでなくても、展示してある空間(遠望される風景やそこで聞こえるサウンドスケープなども含む)がよりプラスアルファになって、おもしろみを大きくしている点も大きな特徴。もっとも、設置されて時間が経ったところで、自然に埋もれてしまうか、自然と共存するか、あるいは、自然を超えて屹立するか、という違いも明瞭になってくるように思う。なお、自然の中に埋もれつつある作品の、ある意味、遺跡的な感じは、ふつうの美術館などでは観ることのできないもので、一概に否定的にとらえていない。
今回観たうちのベスト3を挙げておく(順位はつけない)。

・T307・蔡國強《蓬莱島》(2015)
・T134・古郡弘《胞衣 みしゃぐち》(2006)
・T314・目《憶測の成立》(2015)

ほとんどの人が、キナーレに立ち寄るだろうから、併せて《憶測の成立》もたずねるべきだろう。

あと、これは余談だが、十日町の市街から、山の稜線を眺めると、そのスカイラインに必ず送電塔・送電線が立ちはだかっているのが目に入る。山の中に入り、間近に見ざる得ない場合もある。2009年の時には、「まるで巨神兵みたいだ」と感想を漏らしたものだが、今回も、その威圧感、違和感は際だって見えた。それは2011年を経験した目だから、殊更そう見えたのかもしれない。そして、この光景が、もっとも「現代美術」的に見えたというのは、錯誤的なことなのであろうか?

[スタンダードツアー南回り]
越後湯沢駅十日町駅→
①絵本と木の実美術館(鉢)/M173・鉢&田島征三《絵本と木の実美術館》(2009〜2015)※再訪/M329・田島征三・特別企画展「おもいでをたべる オバケとかんがえるヤギ」(2015)→
土市駅/T325・ジミー・リャオ(幾米)《Kiss & Bye(土市駅)》(2015)※「JR飯山線アートプロジェクト」のうち。他に越後水沢駅に設置。こちらは未見。→
③ミオンなかざと(宮中)※昼食/N001・ジャウマ・ブレンサ《鳥たちの家》(2000)、N002・ジャン=フランソワ・ブラン《ブルーミング・スパイラル》(2000)、M003・CLIP《河岸の燈籠》(2000)、N004・坂口𥶡敏《暖かいイメージのためにー信濃川》(2000)→
清津倉庫美術館(角間・旧清津峡小学校)/M072・清津倉庫美術館(2015)/開館記念特別展「4人展:素材と手」/M074・戸谷成雄《ミニマルバロックIV「双影景」》(2015)、M075・原口典之《無題4(1970年からのシリーズ)》(2015)、M076・青木野枝《雲谷/2012》(2015)、遠藤克利《空洞説ー木の舟2009》(2015)/東京電機大学山本空間デザイン研究室+共立女子大学堀ゼミ《きよつや》(2015、旧清津峡小学校校舎棟)→
ポチョムキン(倉俣)/M019・カサグランデ&リンターラ建築事務所《ポチョムキン》(2003)※再訪→
⑥土石流のモニュメント(辰口)/M043・磯辺行久《土石流のモニュメント》(2015)※車窓より→
⑦家の記憶(下鰕池)/Y072・塩田千春《家の記憶》(2009)※空き家P→
⑧最後の教室(東川)/Y052・クリスチャン・ボルタンスキー+ジャン・カルマン《最後の教室》(2006)※廃校P→
⑨夢の家(上湯)/Y013・マリーナ・アブラモヴィッチ《夢の家》(2000)※空き家P、Y036・ローレン・バーコヴィッツ《収穫の家》(2003)※空き家P、Y037・ロビン・バッケン《米との対話》(2003)※空き家P、Y035・ジャネット・ローレンス《エリクシール/不老不死の薬》(2003)→
キナーレ降車

基本的に、団体行動が苦手で、ダメな人なのだが、どういうわけか、越後妻有のツアーについては悪い記憶がない。今回の、このツアーもガイドさんの適切な説明や、昼食もなかなかよかったし、だいたい観たいものもきちんと観ることができたので、印象はいい。前回のツアーは「変な人」がけっこういて、それがまたおもしろかったのだが、今回、その手の人がいなかったのがちょっと心残りだったりして(オレがいちばん「変な人」(笑))。

キナーレ(十日町)/T025・越後妻有里山現代美術館[キナーレ](2003)※設計:原広司+アトリエ・ファイ建築研究所/T307・蔡國強・特別企画展「蔡國強 蓬莱山」(2015)、他

キナーレでツアーから離脱して、いったんホテルに荷物を置いて、再びキナーレへ。今回の目玉のひとつ、キナーレの中庭(池)を大々的に使った蔡國強《蓬莱山》を中心とした展示を、時間をかけて観覧し、その後、お定まりで楽しみにしていた明石の湯へ。こちらもゆっくりと入浴し、一日の疲れをとることができた。で、ホテルへの帰途、これまたお定まりのリオンドール(スーパーマーケット!)で...貧乏旅行です(笑)それにしても、リオンドール、少しうらぶれた感じがしたのだた...心配(笑)