かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

「琳派 京(みやこ)を彩る」[前期](京都国立博物館・平成知新館)

章立て:
第一章 光悦 琳派誕生
第二章 光悦と宗達 書と料紙の交響
第三章 宗達と俵屋工房
第四章 かたちを受け継ぐ
第五章 光琳 琳派爛漫
第六章 くらしを彩る
第七章 光琳の後継者たち 琳派転生

琳派400年を記念し、近世期の琳派の名品を集めた大規模な展覧会。ただ、印象としては、グレーテストヒッツにお蔵入りになったヴァージョン違いやデモ(新出の作品のことね)を少し入れた売らんかなの再発盤ようで、ちょっと工夫のない展覧会だったか。「秋の京都」開催で、なんとかぎりぎり合格点か、という感じも。
また、海外からの作品もプライスコレクション数点のみで、これは、フリーアの宗達展に食われたかのかもしれないが、国立博物館開催の展覧会としてはいささか食い足りない。
会場は、平成知新館で、吹き抜けの仏像展示はそのままとして、他の箇所を特別展示に使っていた。受付を済ますと、エレベーターで3Fに上がり、順路にしたがい、1Fまで降りてくる。場所の制約があったのかもしれないが、展示は、演出らしい演出もなく凡庸。例えば、光琳の《風神雷神図屏風》と抱一の《夏秋草図屏風》を同じ部屋で展示しているのだから、もとの姿を模して、背中合わせに配置して展示する、なんて演出してもよかったんじゃないかな、とか。
よかったところも多少は書いておこうか。琳派400年の起点に関連する冒頭の光悦関連の資料類は興味深かった。刀剣の目利きに関する資料など。これは大型琳派展でもあまり触れられてこなかったじゃないかな。
また、京博所蔵の光悦筆・宗達下絵《鶴下絵三十六歌仙歌巻》が、最初から最後まで広げられていたところは見応えがあった。何度も、目を左右に往復され、その下絵の鶴と文字の交響を愉しむことができたのは、うれしいところ。
もう一作、酒井抱一《青楓朱楓図屏風》が目を引いた。『光琳百図後編』記載のものの写しらしいが、ある意味、抱一というよりも鈴木其一的な怪物的な奇怪さが立ち現れていた。抱一の指図により、其一の手が入っていたのでは、と説明にあったが、なるほどと思わせる怪作だった。
図録は、3000円でちょっと高いし、ブックデザインがいまいちだし、苦手の河野元昭の巻頭論文で、ちょっと手がでず。