かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

「逆境の絵師 久隅守景 親しきものへのまなざし」[前期](サントリー美術館)

構成:
第1章 狩野派の一員として
第2章 四季耕作図の世界
第3章 晩年期の作品 加賀から京都へ
第4章 守景の機知 人物・動物・植物
第5章 守景の子供たち 雪信・彦十郎

2009年に開催された石川県立美術館での「久隅守景 加賀で開花した江戸の画家」以来の単独の守景展。石川・守景展が展示作品の質量が充実していたのみならず、展覧会としても優れていたので、はたして、この展覧会をアップデートした展覧会になっているか、プラスするものがどれだけあるかが、気になるところであった。個人的な第一印象では、大幅なアップデートまでは至らなかったが、新出とおぼしき作品や守景の子供たち、雪信や彦十郎の作品を扱った章を立てるなどのプラスαは充分にあったか。
目録を見ると、出品作品は決して少なくはないのだが、前期後期でほとんどが入れ替わるため、どうしても量的に乏しい印象は拭いきれない。何か物足りないんだよね。
ただ、初期作品、知恩院小方丈の《四季山水図襖》や富山・瑞龍寺の《四季山水図襖》が観られたことや、代表作の中でも、これまで実際に観たことのなかった《鍋冠祭図押絵貼屏風》[個人蔵]をじっくりと観られたことが、とてもよかった。知恩院小方丈画は、画面の遠景・中景につらなる丸い山容に打たれた筆による点描がとてもおもしろく、狩野派のスタイルの中にも個性的な筆法を持ち込んでいた点、興味深かった。第3章の作品は、どれもどこかユーモアのうかがえる作品だったが、中でも《鍋冠祭図押絵貼屏風》は素晴らしかった。また、最終章で雪信の作品をまとめて観ることができたのもうれしかった。雪信作品がこれほど集まった展覧会は初めてではないか?
日曜日にもかかわらず、観覧客は少なめだった。若冲蕪村に比べるとやはり知られていない、ということなのか。展示替えに併せ、もう1、2回行こうと思っているので、それによって、感想も変わるかもしれない。
図録(P246、2400円、会員割引き2160円)購入。観音開きのページや拡大図も多数あり。