かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

「水 神秘のかたち」[1回目](サントリー美術館)

第1章 水の力、第2章 水の神仏、第3章 水に祈りて、第4章 水の理想郷、第5章 水と吉祥、第6章 水の聖地、の全6章で、構成。各章に見どころとなる作品があり、予想以上に刺激的な展覧会だった。
以下、いくつか、印象に残った名品を。
まずは、第1章で展示の《日月山水図屏風》[金剛寺]。何度か見たこのある室町大和絵屏風の逸品だが、今回改めて観て、右双の3・4扇目の山に描かれる樹木が松ばかりではなく、何種類もあることに気づく。1・2扇目の、胡粉をやや盛った描いた桜はわかっていたのだが、松・桜ばかりではなく、鑓杉や蔦、何種類かの広葉樹などが入り交じっている。単なる意匠や装飾ではなく、(変な言葉だが、)象徴的な写実のようなことが画面で行われているのだな、と感じ入る。もちろん、後の琳派を生み出す、いわば琳派の祖型のような意匠・装飾も併せもっている点がこのことをさらにおもしろくしている。
第2章で扱われた宇賀神(中でも、秘仏で今回特別に公開された大阪、本山寺の《宇賀神像》は強烈だった。夢に出てきそう...)やその宇賀神と習合した宇賀弁財天の諸像、第3章の《善女龍王像》[金剛峯寺]など、おもしろい作品が多いのだが、なんと言っても、第3章の《春日龍珠箱》奈良国立博物館]がこの展覧会のクライマックス。本作は、実は初めて見たのだが、外箱、内箱に描かれた図像の数々の色使いや形態のサイケ感が楽しい。外箱蓋裏と内箱蓋裏に描かれた八竜神の化身の外→内の変容の異形さなど、観ていて興味は尽きない。
そして、展覧会のエピローグにあたる第6章に展示の《四天王寺住吉大社祭礼図屛風》[サントリー美術館]がいい感じ。17世紀に描かれた名所絵的な風俗画(あるいは風俗画的な名所絵)で、丁寧に施された金雲の間から、住吉大社(右双)なり、四天王寺(左双)なりの景観とともに、松林の樹間から見える酒盛りや、祭礼のパレードに見入る人々など、さまざまな享楽的な人々の情景が細密に描かれる。宗教的な水辺の聖地が、近世になっていわばディズニーランド(ディズニーシー? どちらも行ったことないけれど笑)化したさまを楽しげに描いたもので、観ているだけで、こちらの頬がゆるんでくる。
意外といっては失礼かもしれないが、見どころの多い、充実した展覧会だった(ただし、ここに挙げた多くの作品は前期のみなので、後期はまた違った印象になるかも)。