かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

人吉 乗り鉄の旅

  • 今回は珍しくリサーチ絡みではない「観光旅行」。昨年、熊本県立美術館で観た「ほとけの里と相良の名宝 人吉球磨の歴史と美」という展覧会がとてもよかったので、機会を見て、人吉を訪ねてみたいと思っていたところ、思っていた以上に早くその機会が巡ってきた。観光にはあまりいいシーズンではないが、まあ、行けるときに行っておこう、と出かけた次第。
  • 最寄り5:30発のバスで成田空港。T3で下車し、荷物検査も早々に済ませ、出発ロビーへ。今回は、Jetstar GK621便に搭乗、鹿児島空港へは、ほぼ定時に無事到着した。鹿児島はくもりで、日が出ていないこともあり、うすら寒い。
  • 鹿児島空港からはバスで、空港最寄りのJR肥薩線嘉例川駅に向かう。乗車したのは、いわさきバスネットワーク妙見温泉隼人駅線(妙見路線)、鹿児島空港10:25発の隼人駅行き。10分ちょっとで嘉例川駅に到着。210円。駅のすぐ前までバスが乗りつけてくれた。事前の調べでは、嘉例川のバス停から駅まで少し歩くとのことで、Google Mapsストリートビューを使って、確認もしていたのだが、これは「嘉例川」というバス停と「嘉例川駅」というバス停がそれぞれあり、後者だと、駅前までバスが乗り入れている、ということだった。同じ空港から出る霧島線だと、少し歩く方の「嘉例川」に停車するらしい(未確認)。ともあれ、嘉例川駅に無事にたどり着いたので、最大の難関は無事に突破できた。

  • 嘉例川駅は、鹿児島県内最古の駅舎ということで、多少観光向けにも整備されている。土休日には、駅の待合室で、名物になっている駅弁「かれい川」が販売されるのだが、残念ながら、今日は金曜日なので、駅弁の販売はなし。駅周辺で、列車を待っていると、平日だが、観光客が幾組もやってきて、駅舎を見学している。何人かは、オレと同様にここから列車に乗車していた。10:56発の都城行きに乗車する。ワンマンの1両編成。乗車は途中の吉松まで。11:43着。(肥薩線は、昨年、霧島アートの森に行ったときに、栗野駅から隼人駅まで、今回の旅行とは逆方向ではあるが、乗車したことがある。)




駅舎にいた猫ちん。

この列車に乗って、吉松まで。

  • 吉松で、人吉行きの列車に乗り換える。吉松から人吉までは、一日往復4便の観光列車「いさぶろう・しんぺい号」が走っている。「いさぶろう」は山縣伊三郎のこと、「しんぺい」は後藤新平のことで、ともに本線開通にあたって功があったことから、吉松行きを「いさぶろう号」、人吉行きを「しんぺい号」と名付けている(時刻表などを見ると、一応呼び分けているようであるが、どっちがどっちかわからりづらいのか、結局「いさぶろう・しんぺい号」とつなげて呼んでいることがおおいようだ)。途中の矢岳トンネル入口出口に、吉松方面に山縣伊三郎による「天険若夷」、人吉方面に後藤新平による「引重致遠」の石額が掲げてあることからの命名らしい。今回は、11:49発のしんぺい2号に乗り換えて、人吉まで向かう。



  • 列車は2両編成で、指定席に若干の自由席がついている。列車の中程では、展望スペースもある。オレは指定席券を持っていないので、進行方向の先頭部分の自由席に大人しく座る。運転手の他に、ガイド/車掌の美人が乗っており、観光案内など、なにくれとなく世話を焼いてくれる。途中駅は3駅ほどだが(いずれも無人駅)、各所に観光ポイントがあり、それぞれ10分程度停車して、見学できるようになっている。また、途中の霧島連山が見えるビューポイントでは列車を停めて、数分、じっくりと見せるなどの配慮もあって、なかなか楽しい。乗客は、中国人とおぼしきグループ客や、カップル数組、それと男女のひとり旅が数人、といったところ。以前、中国の方のブログかなにかで見たのだが、九州はなかなか人気のスポットらしい。先日の阿蘇もそうだったが、こんなローカル線にもグループ客がいて、ほんとうに楽しそうにしている。



  • 最初の停車駅は、真幸(まさき)駅で、たいへんおめでたい名前であることから、チケットが引き出物に使われるとのこと(人吉駅と吉松駅で販売)。昭和47年にこの駅が山津波に襲われたそうで、その大きな岩がホームに残されている。ここで、最初のスイッチバック。列車は急坂を登り、二つ目の駅、矢岳(やたけ)駅に着く。ここが標高536.9メートルで最高点。駅の近くにSL館があり、D51が保存され、見学できるようになっている。三つ目の駅、大畑(おこば)駅まで列車は下っていく。駅直前に「大畑ループ線」があり、円を描いて、無理なく山を下っていく。「こば」は焼き畑のことらしい。大畑駅に名刺を残していくと、いいことがある、と言われているとのことで、駅舎内の壁面に多くの名刺が残されている。大畑駅で2回目のスイッチバックがあり、終点の人吉駅まであと少し。人吉駅には13:05の到着。


最初のスイッチバック後、車窓から見た真幸駅

矢岳駅の標高碑。奧右側に見えるのがSL館。

大畑駅の駅舎内にはこんな感じで名刺が残されている。

  • さて、最初の目的地の人吉に到着した。駅周辺にはあまり人がいない。興味から言えば、先の展覧会でも取り上げられていた「相良三十三観音」めぐりの季節である春・秋の彼岸どきがよかったのかもしれないが、まあ、しかたがない。今回は、駅にある観光案内所で地図を入手し、お目当ての一つである青井阿蘇神社も含め、周辺の何ヶ所かを歩いて回ることにした。


人吉駅前。

  • が、その前に、腹ごしらえ。ということで、有名なうなぎを食べることにする。今回は、上村うなぎ屋に入ってみた。町中であまり観光客らしき人は見当たらなかったのだが、店内は昼時ということもあってか、なかなか繁盛している。入ったところのテーブル席がいっぱいだったので、待たされるかなと思ったら、案内されて、どんどん店の奥に入っていく。いわゆる鰻の寝床というやつ。いちばん奥まった室に案内された。火鉢があり、お湯がちんちん沸いている。隣室は、襖で仕切られて見えないのだが、中国人グループ客の楽しげに会食する声が聞こえる。彼ら、いつでも本当に楽しそうだ。4切れの鰻重2600円をごはん大盛り(+100円)で注文。お吸い物とお新香がつく。4切れは少ないかなと思いの外、肉厚の鰻は、食べ応えがあり、充分にお腹が満たされた。タレも甘過ぎず、量も少なめで、お客が後で自由にかけられるようになっているところがいい。おいしかった。それにしても、鰻重、がつがつ食らって、ほんの数分で食べ終わる。対時間比でいうと、コスパ最低(笑)



  • お腹がいっぱいになったところで、まずは人吉城跡まで歩く。城跡は、球磨川を渡った南側の小高い丘の上にある。三の丸、二の丸、本丸と重なるように高く連なっている。もちろん、今は建物は何も残っていず、石垣と芝地が残っているだけだ。三の丸跡を経て、二の丸まで登る。人吉市内を一望できる眺めが素晴らしい。今回は見学を割愛したが、城跡の西側に人吉城歴史館があり、また、城壁や櫓などが川沿いに復元されている。



石垣最上部のでっぱりが「武者返し」。



城の北側を球磨川が流れている。


二の丸跡から三の丸跡を眺める。

  • そのまま西に向かって歩き、永国寺へ。永国寺は、本堂の建て替え?をやっているので、門前を少し覗いて見ただけ。ここで、再び駅方向の北に向かい、青井阿蘇神社を拝観する。


永国寺。

青井阿蘇神社

  • 青井阿蘇神社から駅まではすぐだ。人吉駅16:05発の新八代行きに乗車。ワンマンカーの2両編成。進行方向左の窓際に席をとる。下校の高校生らがいるほかは、乗客は少ない。お目当ての球磨川は、最初のうちは列車の右側に見えるが、しばらくすると、鉄橋を渡り、左側になる。線路はほぼ川にそって走る。山に挟まれた川は線路の少し下の方を蛇行しながら流れている。水量は多く、瀬もところどころに見え、流れも全体的に速い。水面から顔を出す岩の白さが鮮烈だ。列車の走るリズムが気持ちいい。小一時間、ときどき駅に停車しつつも、景色はどんどんと動いていく。列車は再び川を渡り、川は今一度列車の右側にくる。と、次第に川幅も広くなり、河口が近くなってきたことがわかる。日本製紙の白い煙を吐き出す大きな煙突が突然見え始め、そこが八代駅だとわかる。





  • 八代駅で下車。駅の観光案内所で、地図をもらい、それを頼りに、ホテルまで歩く。途中で、適当な食事を適当に食らい、ホテルの隣のコンビニに立ち寄り、飲み物を買ってから、チェックインする。
  • 今日、宿泊したのは、八代グランドホテルで、クーポン利用で格安で宿泊することができた。部屋は広くて上々だったが、Wi-Fiがなかったのが残念。フロントの対応もよく、ホテルの前が国道で車の行き来が多いのだが、ほとんど気にならなかった。朝食のバイキングも品数が多く、まあまあ美味しかった。(ただ、宿泊地は、八代ではなく、人吉温泉で泊まってもよかったかな、と少し後悔。)
  • 今回の旅行は、JR利用の移動がメインだったので、利用したきっぷについて少々。特に周遊券の類ではなく、事前にみどりの窓口で、嘉例川駅から肥薩線鹿児島本線経由(吉松・人吉・八代経由)で熊本駅までのきっぷを買った。2810円。営業距離が148キロメートルあるので、有効期間は2日間、100キロメートル以上なので途中下車も可能で、途中、人吉と八代で途中下車したので、なかなか使い勝手がよかった。嘉例川-人吉が1290円、人吉-八代が1110円、八代-熊本が740円で、合計3140円だから、330円安かったことになる。