かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

札幌


モエレ山から南西方向を望む。

  • 今週も、札幌へ行ってきた。今回の札幌は、SIAFの一貫として開催されるOPEN GATE 2017を観ることが第一のお目当てである。併せて、SIAFのモエレ沼公園会場などを回ってきた。当初は小樽に寄ることなども考えていたのだが、これはまた別の機会となった。
  • 最寄り4:15発の始発バスで成田空港T3に向かう。5:10頃、到着。春秋航空のカウンター前に並び、5:30のチェックインを待つ。と、搭乗するIJ201便が、新千歳空港の霧のため、引き返す可能性あり、の条件付き運航になる、との貼り出しが出る。もっとも、他の航空会社の新千歳空港行きはふつうに飛んでいるようなので、まあ、心配するほどのこともないだろう。チェックインを済ませ、金曜日のためか、やや混み合っている保安検査場を通過して、150Cゲート付近に移動。寝不足を解消すべく一寝入り。
  • 定時にバス移動が始まる。その後、離陸、着陸とも特に問題なく、8:55過ぎには降機。9:15発の快速エアポートに乗車することができた。最初の目的地は、モエレ沼公園なので、新千歳空港→新札幌/新さっぽろ→大通→環状通東と移動。JRは880円、地下鉄は一日乗車券を購入、830円。新さっぽろ→環状通東間は350円。予定よりも1本早い地下鉄に乗ることができたので、環状通東発のバスも1本早い便に間に合った。乗車したバスは、中央バスの東69、環状通東10:35発。11:00過ぎ、30分ほどで、モエレ沼公園東口バス停に到着。210円。このバスは環状通を東に走り、東苗穂1-2で左折し、三角点通をひたすら走る、というルートだった。天気は、ところどころに黒い雲があるものの、青空が見えている上々の天気。




  • SIAF:「RE/PLAY/SCAPE」(モエレ沼公園) ガラスのピラミッドでの展示を中心に、他に、モエレ山、モエレビーチにも作品が設置されている。(この日は時間が足らず、モエレビーチの大黒淳一×SIAFラボ《mumamon》(2017)は見られなかった。)


  • まず、ガラスのピラミッドへ。1Fのアトリウムは無料で入ることができ、ここでは、大友良英+青山泰知+伊藤隆之による、おなじみの《(with) without records》のモエレ沼公園バージョンが展示されている(2Fやさらには松井紫朗作品の内部にも設置)。ワークショップ参加者とともに調整した(レコードの乗っていない)ポータブルのレコードプレイヤー(以下、TT)がジャングルのように配置されているのは、過去作と同様。他に、E-bowをセットされたグランドピアノも1台設置されていた。また、村井紫朗の巨大なバルーン作品《climbing time / falling time》(2017)もここで観ることができる(3Fから続いている)。これまでの経験だと、《(with) withouto records》からすぐに音/音楽が際立って聞こえてきたのだが、今回の場合、オレの耳にはなかなか聞こえてこない。オレの耳が加齢で大分弱ってきているせいもあるが泣、どうも空間の底の方に、人の声や足音、さまざまな環境音などが一つの鈍い音の塊になっていて、TTの音もすぐにそれに吸収されてしまうように感じる。しばらくして、耳が慣れてきたせいか、あるいは、よく聞こえるポイントがあって、そこに立ったためか、突然、TTの音/音楽が聞こえ出すのだが、それまでの時間がけっこうかかり、場所を変えつつ、アトリウムをいつまでもうろうろしてしまう。



  • 続いて、2Fへ。ここで、大分、音がくっきりし出した。2Fでは、《(with) without records》に加えて、Sachiko Mによる《Here the sounds..》(2017)。数カ所に白い箱に隠されたMP3プレイヤーが置かれており、適宜、サインウェーブが鳴らされる(推定)。聞こえる/聞こえない、存在する/存在しないのあわいから、隠微に香り立つような音が漂い、《(with) withouto records》のTTの出す音と、アンサンブルをなす/なさない。オレにとっては、ここが聴き所の一つになった。


これとか、そうだと思うんだけど… まあ、音が作品なので…

  • 2Fの別室には、ナムジュン・パイク《K-567》(1993)[ワタリウム美術館蔵]というガラクタから作られたロボットが展示され、そのオマージュとして、伊藤隆介による《メカニカル・モンスターズ》(2017)が会場をうろうろと這い回っている。これは、自動掃除機の上にたぬきの剥製が置かれている(合体している?)作品。さらに、もう一つ、伊藤隆介のミニチュアセットとそれを撮影した映像によるインスタレーション《層序学》(2017)も展示されている。
  • さらに廊下に出ると、ここにもう一つの大友作品、《サウンド・オブ・ミュージック》(システム設計:伊藤隆之)がある。これは、簡単に言えば、家電アンサンブルとでも言ったらいいか。扇風機、(家電の)ミキサー、テープレコーダー、電話機、ブラウン管などの稼働音やスタンドの光を組み合わせたインスタレーションで、カメラやドーナツ盤なども散らばっている。ドーナツ盤には、ピンクレディーやメアリーホプキンの盤などの他、もちろん、サウンドオブミュージックもシングルも。別府の《薔薇色の人生》の系統の作品だが、こちらの方がもっと混沌としている。階段下と廊下突き当たりの2箇所に設置。なんだか楽しい。


廊下の突き当たりの方。

メアリーホプキンとピンクレディー

  • 3Fに上がって、ARTSAT×SIAFラボのプロジェクトの展示、さらに1Fに戻り、同プロジェクトによる《全知性のための彫刻》(2017)と回って、今一度、アトリウムに戻る。
  • もっとゆっくり会場全体を回りたかったのだが、なにせガラスのピラミッドでゆっくりし過ぎてしまい、結局、モエレ山に登って、降りてで時間切れになってしまう。しかも、モエレ山を登ったところで、一天にわかにかき曇り、雨が降り出すという始末。下りたところに、ちょうど販売車が出ていたので、ソフトクリームを買い(350円。ちべたい笑)、これを食らいつつ、バス停に向かう。



無数の廃自転車がモエレ山を駆け上る。伊藤隆介《長征−すべての山に登れ》(2017)。


そして、ソフトクリームとモエレ山。

  • モエレ沼公園東口バス停13:33発のバスに乗車。環状通東バス停には14:00過ぎに到着。途中、寝落ちしていた笑 以下、地下鉄で、環状通東→大通→真駒内と移動(320円)。バスまで、少し時間があったので、7でサンドイッチとコーヒーを買って、おそい昼食とするなど。15:00発の芸術公園行きのバスに乗車。10分ほどで石山東3丁目バス停で下車。ここから、石山緑地は歩いてすぐ。


真駒内駅構内に張られたOPEN GATEのポスター。バスの時間もちゃんと張り出してあって、うれしい。

バス停から緑地入口までのあいだに、コスモスが咲いていた。


入口を入ると、OPEN GATEの会場を示す看板があった。

  • SIAF:OPEN GATE 2017(石山緑地) 会場となった石山緑地は、札幌軟石の巨大な石切り場跡で、現在では南北2ブロックの公園になっている。このうち、南ブロックは造形集団“CINQ”(「さんく」と読む。國松明日香、永野光一、丸山隆、松隈康夫、山谷圭司の5人の彫刻家により構成)のデザインによる石と緑を組み合わせた特異な空間が造り出され、目を驚かせるような景観が広がっている。この石山緑地は、ネットなどの観光案内にはほとんど出てこないが(オレも今回のSIAFで初めて知った)、札幌市他により2014年に行われた「第1回札幌景観総選挙」では第1位に選出されるなど、市民にはよく知られた、そして、好まれている場所であるようだ。




  • 石山緑地に着いたのが、15:15過ぎなので、予定では、OPEN GATEの設営がすでに始まっているはず。今回のOPEN GATEは、SIAF2017のプロジェクトの一つとして、今日、15日から18日までの4日間の開催。毎日15:00から18:30過ぎまで、石山緑地のいちばん奧にある芝生広場(「午後の丘」と呼ばれる)を舞台に、毎日、展示を設営し、パフォーマンスを行い、そして、撤収して去って行く。その全体が一つの作品。題して「何もないところから / start from here」。
  • サインに従い、会場へと進んでいくと、会場の一つ手前の「ネガティブマウンド」(野外ステージ/石の広場)にポータブルラジオを吊した釣り竿が置かれている。大友良英による設営なのだが、なんだか慌てた様子で戻ってきて、釣り竿を回収していく。その大友にの後に付いていくように会場の芝生広場に進むと、ディレクターに、全然話を聞いていないではないか!と、怒られている。どうも会場外に設営してしまったようだ笑 OPEN GATEらしくなってきたゾ笑
  • 会場内ではすでに設営が進んでおり、あちこちに音具やオブジェが置かれている。アーティストは会場に散らばり、各自の展示作業を行っていたり、音具やオブジェ、あるいは単に何か「物」を持って、会場を歩き回っていたりする。観客もすでに多く集まり、思い思いのところに腰を下ろし、ビール片手に、目の前で起きている出来事を楽しんでいる。
  • まず目を引かれたのが、チトゥーの作品。4個の白い風船に細いビニールの帯がついているもの。それが10数個会場に設置される。高さはまちまちで、高く浮かびあがったり、あるいは風に吹かれて、横に長くなびいたりする。そして、これがキモなのだが、横倒しになっているときに、風船同士がお互いを叩き合い「ぼんぼん、ぼんぼん…」というような柔らかく、心地のよいリズムを奏でる。
  • 水谷義人は、何やら白いパーツを組み合わせて、芝地の上に北海道のシルエットを作っている。米子匡司は奥まったところで、音具を調整している。Adam Kitinganは今回は芝生の海に小さな船を数艘浮かべている。大友良英は釣り竿にラジオやら、小さな銅鑼やらを吊して設置している。さやは会場で拾った枯れ枝や枯葉で作った?オブジェを観客に渡して回っている。観客はそれを受け取り、音を出したりしている。PIKAも会場を回り、ときに歌ったりしている。などなど。
  • いつの間にか、時間は17:00に。Sachiko Mが、芝地に広げられた白い布の上に、大きな刷毛を使って、「OPEN GATE」と大書する(「2017」と書くところなくなっちゃった!)ところから、パフォーマンスが始まる。といっても、プログラムされたイベントが次々に展開するというような仕組みではなく、出演者(そして、時に観客)各自が思い思いに何かをする、何もしない、というだけ。時に誰かと誰かがで会い、それほど密でもないのだが、セッションのような、挨拶のようなものを行ったりもする。小さな出会いと小さな音の連なり。凝縮するというよりも、ゆっくりと拡散していくような感じといえばいいか。観客も、目を凝らし、耳をすませ、おもしろそうなその出会いを見つけ、あるいは偶然に出会い、それを楽しんだり、あきれたり… 
  • 植野隆司がいないじゃないか、と思ったら、緑のビニール紐をなびかせたの緑色の塊が会場に登場し、ゆっくりと歩き出す。あまりのばかばかしさにあきれてしまうじゃないか笑 こいつ、しばらくすると、チトゥーの音具に絡まったりする。それをはずそうとチトゥーが静かに近寄ってくる。立ち止まった緑男にからまる音具をチトゥーがはずそうとするが、一瞬、手を止めて、緑男を見つめる。と、チトゥーは緑男をやさしく抱擁する。すると、緑男もぬっと手を出し、チトゥーを抱擁する。ただそれだけなんだけど、このシーンになんだか思わず涙が出てくる…
  • 今日一番の怪人賞!は水谷義人。前回の岡崎シビコ屋上では、タクシー運転手に扮し、タクシーのようなものに乗って、走らせていたが、今回は半裸で登場。寒いだろうに…(実際、日が陰ると急激に気温がさがり、オレなどライトダウンを着込んでいたぐらい)で、先ほどの北海道を奧の米子匡司の音具の周りに移動させたり、大きな紙飛行機を飛ばしたり、あるいは、パーツの一つを着込んで、身をよじり(この姿が素晴らしい笑)、きゅっきゅっと音を立てたり… 実にわけのわからない、しかし、ユーモアたっぷりの行為。
  • 前回のシビコのときと同じように、Sachiko Mによるゆるやかなディレクションによるパフォーマンスだったが、(初日は)特に大きなトピックや起承転結もないかわりに、より開放感、というか、好き勝手というか、が際立つ「出来事」だったように思った。OPEN GATEと同じようなイベント/パフォーマンスは、ジョン・ケージを先達に、いくつもあるのだろうけれど、OPEN GATEの特徴的なところは、とにかく敷居が低く開放的であること、堅苦しくなく、やわらかなユーモアやばかばかしさが充溢していることなどなど、たくさん挙げられるが、中でも、そこで起きている出来事を通して、気づかないうちに音楽なり、美術なり、あるいは、何かを観て感じる、考えるということのありようが鑑賞者の中で気づかないうちに拡張してしまうことなのだろう、などと思ったのであった。ビール飲みたいっ!

>OPEN GATE 2017 An ever-changing Photo Gallery

  • まだ片付けは行われていたが、暗くてよく見えないこともあり、18:40頃、会場を後にする。18:50頃、東山三丁目からバスに乗車。19:00頃、真駒内駅に到着。210円。地下鉄に乗り換え、中の島まで移動(250円)。梅田哲也《りんご》を再訪。


帰りは、もう真っ暗。

  • SIAF:梅田哲也《りんご》 1ヶ月ぶりの再訪。19:30頃から1時間ほど観覧。システム/機巧がだいぶへたっている。たとえば、上方の飯盒から落ちてくる滴が下方の球形の水槽の開口部に入らずに、その縁にあたって、散らばることが多くなっている。しかし、そのため、光のゆらめきは、1ヶ月前に観た時のものとはまたちがった踊り方をしている。そして、もちろんそれは美しい。しばらくすると、水でいっぱいになった飯盒が降りてくる。一方、地下からは電球が上がってくる。さらに飯盒は下に降り、しばらくすると、浸透圧を使った仕組みで飯盒の下に取り付けられた管から中にたまった水が球形の水槽に向かって排出される。ひかりのゆらめきはまた劇的に変化する。飯盒が軽くなり、上方に戻っていく。何事もなかったように、再び水滴を垂らし始める。この部分の動きは前回見損なっていたところなので、これが観られてちょっとうれしい。一方、地下の水がためられている部分では、やはり水滴が落ち、それがさざなみになってゆっくり広がるのだが、薄暗いところで大きく広がるその波の光の緩やかなきらめきにはまた別の人を引きつけて放さない何かがある。オレの他にも、何人かの観客がやってきていたが、写真を撮るなり、早々に立ち去る人がいる一方で、(ただシステムの動きを待つのではなく、)いつまでも光のゆらめきに目を奪われている人もまた何人もいた。


  • 1時間ほど、観覧の後、再び中の島駅まで歩き、スーパーに寄って笑、地下鉄で中島公園へ移動(200円)。中島公園駅から徒歩でホテルまで。5分ほどか。
  • ホテルにチェックイン。今回は、ビジネス・イン・ノルテに宿泊。部屋は3Fで、わりと広めで、Wi-Fi以外の設備もまあまあだったのだが、いかんせんWi-Fiの電波が弱く、使い物にならない(エレベーターホールまで行くとつながった)。Wi-Fi完備といいつつ、これではダメ。ここにはもう2度と泊まらない。なので、ネットでの各種チェックもできず、風呂入って、早々に就寝。暴飲暴食のためか、お腹が苦しく、弱るなど。暴飲暴食はダメよ笑