かけらを集める(仮)。

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彫刻放浪 朝倉文夫《翼》(上野駅・グランドコンコース)


上野駅には、彫刻や壁画など、美術作品が多数設置されている。朝倉文夫の《翼》もその一つ。台座の銘板に従い《翼》とするが、「翼の像」の呼称で、待ち合わせ場所として有名な銅像だ。背後に説明板があり、「贈」上野駅開設七十五周年記念」東北特急はつかり号運転記念」昭和三十三年十月十日」台東区」と記されている。1958年に台東区上野駅に寄贈したとのことだ。設置されてから60年近くになる。
ところで、この像の初出は、1943年の第6回新文展で、戦時中のことだ。タイトルも《翼に続け》だった。腕を翼のように大きく広げた女性裸体像だけでは、観るものの文脈によってさまざまな解釈が可能であっただろう。しかし、戦時下に、このタイトルで、この像を観るとき、解釈は銃後の生活を鼓舞する方向へと強く固定されたに違いない。戦後になって、上野駅に設置された際には、タイトルは《翼》と改められた。まさしく、自由の翼となって、帰ってきた、と言えようか。