かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

鹿児島

  • 鹿児島へ行ってきた。今回のお目当ては二つ。一つ目は鹿児島にある本郷新の野外彫刻を観ること。二つ目は知覧を訪問すること。ただ、天気の関係で、今回は知覧訪問をキャンセルし、予定を鹿児島市内の観光に変更してしまった。遠からず、知覧は改めて訪ねたいと思っている。
  • 最寄り7:00発のバスで、成田空港T3へ。定時の8:02に到着。保安検査場を通過して、174ゲートへ。174、175に飛行機が駐まっている。ここのところずっと174、175ゲート付近の路面を工事していたのだが、これは174、175に駐機できるようにするためだったかと納得。これで、バス移動ではなく、歩いて飛行機に乗ることができる。空いているベンチで、行きがけにコンビニで仕入れた朝食を食らうと、しばらくして搭乗が始まる。今日乗るのは、ジェットスターGK621、成田9:15→11:30鹿児島。8:50に搭乗開始。駐機場待機が長く、ようよう9:47になってから離陸する。例によって空港混雑のため(アナウンスでは出発に必要な書類の準備、とか言っていたが…)、出発が遅れる。加えて、強い西風(向かい風)のために、到着が30分近く遅れ、11:58に鹿児島空港に着陸、12:10頃、到着ロビーに出た。
  • 今回は、空港のすぐ近くにある西郷公園に行ってみる。ここに、巨大な西郷隆盛銅像がある。これがお目当て。別に大河ドラマの影響ではない。この銅像の作者が、古賀忠雄だからだ。風が強く、天気はめまぐるしく変わる。空港の建物から外に出たときは、雨は降っていなかったのだが、歩いてほんの数分の西郷公園に着くと、ざあざあと吹き降りになっている。バスまであまり時間がないので、西郷像の他は、ほとんど素通りになってしまったが、この銅像の設置の様子などの写真など、ちらっと見ることができた。高岡の倉庫に保管してあった像を、鹿児島まで船で運んできたとか。


今回の旅行の初銅像はこれ。鹿児島県霧島市西郷公園の、古賀忠雄《現代を見つめる西郷隆盛》(1976/1988設置)。この銅像は、当初は西郷隆盛没後100年顕彰事業として、関西在住の鹿児島県出身者らにより京都霊山護国神社に建立される予定だったが、発注者の死去により、京都設置ができなくなり、富山県高岡市の倉庫に長く保管されていた。その後、この像の存在を知った溝辺町(現・霧島市)有志が古賀晟(古賀忠雄の息子で、彫刻家)らと協力して、1988年、現在の設置場所に誘致し、周辺を公園として整備した。銅像の高さ10.5m、胴周り5.6m、重さ30トン。

  • 吹き降りの中、空港に戻り、12:30発の鹿児島行きのバスに乗る。1250円。鹿児島空港のリムジンバスは往復割引などはないようだった。鹿児島中央駅まで乗車。13:10頃、到着。


バスの停車場から駅に向かう途中で見つける。鹿児島中央駅前の、《床次竹次郎之像》(1978/1978設置)。床次竹次郎顕彰碑建立推進会の発注により、朝倉文夫が制作。

  • 先にも書いたように、この日の天気は雨が降ったり止んだり、めまぐるしくかわり、しかも冷たく強い風がずっと吹いているという天気。空を見上げると、雲に覆われ真っ暗になったかと思うと、短い晴れ間が見えたりと、外を歩き回るには、いささか難儀な天気だった。
  • そんな天気の中、次の目的地の、長島美術館に向かう。長島美術館は駅の西側の小高い丘(山?)の上にある。この美術館へのアクセスは自動車が推奨されているが、まあ、歩いて行くことにした。事前にGoogle Mapsで最短ルートをチェックしていたので、このルートを歩くことにした。駅の西口に出て、駅前の大通りを歩き、常盤トンネルを抜ける。常盤トンネルは徒歩で抜ける人が多いのか、左右の歩道が広くとってあった。トンネルを抜け、少し歩くと、左手に丘を上る階段がある。これを上がって行く。上り口付近に「立ち入り禁止」の看板があり、えっとなるが、よく見ると、近くにある高校の生徒はこの道を通っての登下校を禁止する、ということだった。確かに、人通りのない怪しい道ではある。この高校の野球場やお墓の傍らを通り、無事に長島美術館に到着。行きは、初めての道ということもあり、鹿児島中央駅から25分ほどかかった。
  • 長島美術館 この美術館については、本郷新の彫刻を観て回るようになるまで、全く知らなかったのだが、ここに《嵐の中の母子像》が設置されていることを知り、今回、訪ねてみた次第。1989年(平成元)開館で、コレクションは実業家の長島公佑(長島企業グループ創立者)によるもの。鹿児島ゆかりの画家による絵画、エコールドパリの頃を中心とした絵画、新大陸先史美術品、薩摩焼に加えて、内外の作家による近現代の彫刻など。敷地内の庭園には、本郷新の他、佐藤忠良、柳原義達、淀井敏夫らの具象彫刻、宮永愛子らの抽象彫刻が、桜島を背景に、バランスよく配置され、見応えがあった。また、中村晋也の代表作《EOS》も設置されていた。鹿児島は中村晋也のシマなわけだが、市内では歴史系の肖像彫刻が多く、芸術系の作品は《EOS》の他に、鹿児島市立美術館で1点観ただけだった(まあ、中村晋美術館へ行けばいいんだが…)。また、本館の入口に鹿児島ゆかりの画家たちの胸像がいくつか置かれていて、その中に、本郷新による《藤島武二像》があった。庭園だけではなく、彫刻は館内にも数多く設置されており、ブールデル、ロダン、マンズー、イサムノグチ北村西望などのビッグネームの他、古賀忠雄《鮭》、富永直樹《大将の椅子》がおもしろかった。館内の各展示室の中では、地下の2室を使い、体系的にまとめられた薩摩焼の展示が、量的にも、質的にも素晴らしかった。狩野一信を思わせる羅漢図の絵柄などの大きな壺など、とても興味深い。この他、館蔵品の中から、小企画展として、マルク・シャガール版画展「幻想のサーカス」を開催していた。こんなにシャガールをじっくり見たのはずいぶん久しぶりのことだ。常設展示は、企画展と別料金で公共美術館に比べ、高いせいか、独り占め状態で、ゆっくりとマイペースで観覧できた。




本郷新《嵐の中の母子像》(1953)。今までに、野外彫刻として設置されたブロンズ像を、広島市平和記念公園、札幌の北海道立近代美術館前庭、長万部町平和祈念館前庭で、この他、樹脂像を、札幌の本郷新記念札幌彫刻美術館で観ている。



本郷新《藤島武二像》(1956)。本館入口の左側に、鹿児島ゆかりの画家たちの胸像が数基設置されていた。黒田清輝とかだが、その中に、本郷新による藤島武二もあった。これは東京藝大にあるものと同じかな?


北村西望《若き日の母親》(1925)。西望は本当にどこにでもいるな。ましてや九州だし。他にも、館内に、《将軍の孫》(1918)と《喜ぶ少女》が展示してあった。



中村晋也の大作、《EOS》。向かう先は、桜島!? 他にも、野外彫刻はたくさんあったが、掲載はこれぐらいに。


長島美術館庭園から見る桜島。今回の旅行では、桜島、山の上にずっと雲がかかっていた。

  • 常設展の他に、特別企画展「シンプルの正体 ディック・ブルーナのデザイン展」が開催中だった。ブルーナの展覧会は何度も観たことがあるし、常設展と別料金だし、で、パスするつもりだったが、常設展1000円に、300円プラスで見られるとのことで、結局これにも立ち寄ることに(ブルーナ展のみだと、800円)。展示は、装幀、ポスター、絵本などから、ディック・ブルーナのデザインの本質を探るものだが、いかんせん、展示は複製パネル(カラーコピー?)中心で、実物が少なく、正直なところ、食い足りないものだった。まあ、シムノンのメグレものなど、フランスのミステリーのペーパーバックを少しまとめて見られたので、よかったことにしておく。おまけに日本のデザイナーや美術家のブルーナをモチーフにした作品なども展示。
  • 帰りも同じルートで駅まで戻る。行きのときは気づかなかったが、西側に遠く霧島連山が見えた。帰りは、下りで、道もわかっていたので、20分弱で駅に到着。駅中を通り抜け、東口に出る。ちょっと休憩したいところだが、バスが間もなく来ることもあって、バス停に向かう。



バス停に行く途中で、鹿児島中央駅前の、中村晋也《若き薩摩の群像》(1982)を。

  • 東15番乗り場から16系統・鴨池港行きに乗車する。始発ではないので、15:44発のところ、数分遅れで、バスが来た。20分ほどで、KKB前に到着。190円。ここから、歩いてすぐの鴨池公園に向かう。鴨池公園は大規模な運動公園で、野球場やら、陸上競技場やらがある。ちょうど競技場の大規模な改修工事をやっており、目当てのものが観られないのではないかと冷やっとしたが、大丈夫、ちゃんと観ることができた。雨が強く降りだし、すごく寒い。
  • 彫刻放浪:本郷新の野外彫刻 これで、鹿児島市内の作品を制覇(制覇って、何?笑)。





本郷新《太陽の賛歌》(1972)。大きな手のひらの上に、躍動的なポーズ(モダンダンスの決めポーズみたいで気味が悪い…笑)の男女4人の裸像(前後に男性、左右に女性)をのせたもの。鹿児島市で開催された第27回国民体育大会(太陽国体)のモニュメントとして建立された。南国の太陽のもと、郷土の未来を担う若者たちの潑剌とした躍動美を象徴している、とのこと。左右の女性像は、独立して、《賛歌》《躍進》のタイトルで、札幌の北海道文化放送前に設置されている。手のひらの上の人間像は、JR池袋駅東口に設置されている《母子像》などにも見られる本郷新独自のモチーフで、もともとは戦中の作品から始まるもの。ところで、《太陽の賛歌》って、ピンク・フロイドにこんなタイトルの曲なかったっけ?

  • 野外彫刻がいくつか設置してある、という情報を事前に得ていたので、続いて、鴨池公園の東側にある文化公園に行く。鹿児島市民文化ホールの前庭にあたる公園で、噴水や植栽の中に、人物具象の野外彫刻がいくつか配置されていた。台座を見ると、どれも企業などから寄贈されたものだった。うかつにも、2点ほど、見落とすというへまをしてしまった。またの機会に。公園の東はすぐに海で、桜島が大きく見える。ただ、この日は、島の上には雲がかかり、山容は見ることができなかったのは、ちょっと残念。


公園の中心付近に、圓鍔勝三《朝の調》がある。


その後方の噴水がある。これを銭湯の湯船に見立てる。で、そこに3人組の小僧がいて、がまんできなくて、ちょろちょろと。作者・タイトルなど不詳、というか、まあ、小便小僧です。


噴水の右側、それを見た髭のおじさんが、猛然としかりつけると。富永直樹《断》。


噴水の左側、一人の青年が、まあまあ、まだ小さな子どもなんだし…となだめる。というコンセプトかな(なわけないか笑)。晝間弘《雄気》。




この他にも、裸婦など数点の野外彫刻あり。その中で、ちょっと気になったのが、松田尚之《白光に浴す》(1932)。

  • 身体がいささか冷えてしまったので、すぐ近くにあった7で、コーヒーと肉まんなぞを買って、食らう。文化公園前のバス停から、17:10発の16系統水族館行きに乗車し、行きとは反対のルートを鹿児島中央駅に戻る。20分ほど。
  • 駅前のイオンに寄り、飲み物などを買いだし、ホテルに向かう。本日宿泊したのは、ホテルユニオンというビジネスホテル。格安だったが、アニメティ、設備など、問題なし。枕元に電源があるのはありがたい。部屋も広く、通りに面した部屋だったが、それほどうるさくもなかった。風呂に浸かり、身体を温め、早々に寝入るが、短い眠りを断続的に繰り返し、よく眠れない、といういつものパターン。