かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 桜展 (すみだ郷土文化資料館)

「墨堤/向島の桜」を主題とした幕末・明治期の浮世絵版画,銅版画,石版画,着色写真などを集めた小規模の展示です.浮世絵版画では初代歌川広重,三代歌川豊国,歌川国芳小林清親,井上安治,落合芳幾,五雲亭貞秀,楊州周延らの作品が出ていました(と言ってもそれぞれ一点程度ですが).墨堤/向島の桜をメイン・モチーフにしつつ,待乳山聖天,元祖桜餅,遠く見える浅草,中でも浅草寺五重塔,少し後なら凌雲閣(1890[明治23]建築),はたまた文明開化の風俗などを傍役として描いたものが多かったです.
中では,小林清親向島桜》(1880[明治13].画像[横浜美術館所蔵のもの]はここ)と井上安治《東京名所図 向島桜》(1881[明治14]. 画像[中山道広重美術館のもの]はここ),さらに同構図の銅版画の3点を並べて展示してあったのがおもしろかったです.清親のものと銅版画は画面の中央奥に富士山を置き,また清親のものは昼の景といして,その富士山を背になにやら芝居がかった動きのある人物を配しています.それに対して,安治のものは夕方近くの景で,師の清親に構図をそのまま借り受けているとはいえ,中央に富士山はなく,ただ遠望される浅草寺五重塔などのシルエットが地平線となっているだけで,また画面に特別な動きを仕組むということもなく,ただ桜並木をそぞろ歩きする人をどちらかというとひっそりと描いています.両者の資質の違いがほの見えて,なかなか興味深かったですね.
【メモ】すみだ郷土文化資料館 2006.3/2〜6/28
この他に,常設展示(2F),特別公開「赤羽刀」(3F),伝統工芸展(3F)などを観覧.常設展示は隅田川に関わりのあるいくつかのトピックによって構成.中ではレガッタを扱ったところが各大学のオールが展示してあったりしておもしろい.また,墨堤のジオラマ吾妻橋の模型などもちょっとした見どころでした.今日は閉館時間が迫っていたこともあり,駆け足で見て回ったのですが,そのうち,ゆっくり再訪したいと思います.