「酒井抱一と江戸琳派の全貌」(千葉市美術館)
酒井抱一(1761-1828)の生誕250年を記念し、その画業を中心に据えた江戸琳派の大規模な展覧会。展示作品は、主に国内所蔵のもので、総数は300を軽く越えるというヘヴィー級(展示替えあり)。酒井家ゆかりの地である姫路での展示を終え、千葉にやってきた。この後は、江戸琳派をかなり早い時期から注目、コレクションしてきた京都の細見美術館に巡回する。
これまでの琳派展というくくり(つまり、宗達・光琳があって、抱一が来るという枠組み)では、なかなか展示できなかった作品や資料が多く出ており、また、初公開の作品もあり、たいへん見応えがある。抱一関係では、仏画や、工芸作品、たとえば抱一下絵・原羊遊斎作の漆工がまとめて見られたのがうれしいところだ。
鈴木其一や池田孤邨といった弟子筋の作品も多く、これまでほとんど紹介されたことのない人も含め、江戸琳派の系譜が近代に入って途絶えるまで丁寧に跡づけられている。中でも其一の展示は見所が多い。其一のエクセントリック全開の《夏秋渓流図屏風》(根津美術館)などの代表作のみならず、さまざまなヴァリアントや新出の《松島図戸袋》(個人)など、初見の作品も多く、其一フリークの私は興奮に終始し、おお、とか、すげ〜、とか繰り返すことになった次第(苦笑)。この《松島図戸袋》は個人的に大注目の作品で、執拗に重畳する波濤の強迫的描写に同時代の狩野永岳を思い浮かべたり、少し離れて見る「松島」にキュビスムを大いに感じたり、という具合。
展示替えがあるので、後期にまた行くつもり。
【メモ】会期:2011/10/10〜2011/11/13 図録(P505)2800円(求龍堂)