かけらを集める(仮)。

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 ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展 江戸の誘惑  (名古屋ボストン美術館・4Fボストンギャラリー 2006.6/17〜8/27)

ボストン美術館のビゲロー・コレクションによる肉筆浮世絵の展覧会です.これまであまり知られていなかった肉筆浮世絵の名品約80点を「第1章 江戸の四季」「第2章 浮世の華」「第3章 歌舞礼讃」「第4章 古典への憧れ」の4章立てで展示.この名古屋展の後,東京へも巡回しますが,一足先に見てきました.
凄かったのは,やっぱり北斎.中でも,疱瘡絵の《朱鍾馗図幟》や《提灯絵 龍虎》《提灯絵 龍蛇》といった提灯絵をはじめとして,袱紗絵の《唐獅子図》,枕屏風の《鳳凰図屏風》など,軸装ではない作品にがつんとやられました.提灯絵は,2点とも巻子の状態で保存してあったものを,今回の展覧会のために,提灯に復元しての展示で,とても珍しく,かつ,興味深いものでした.
鳥文斎栄之春画巻《象の綱》(きさのつな)も印象に残る作品でした.ただし,展示箇所の2図はどちらも男女の交情をほんのりと描いたわりと叙情的なシーンで,とても上品な感じ.全12図中の他の箇所はどうなっているのかとカタログを買ったのですが,他の箇所の載っていなかったっす(って,そりゃ,ちがうだろ,おい).
展示作中での私のいちばんのお気に入りは,宮川春水《朝顔を採る美人》.これは夏衣の若い女性が門柱に絡まる朝顔青い花を手を上に伸ばして採ろうとしているところを描いたもの.裾から見える足先や薄い単に透ける腕のかたちが美しいということもあるのですが,美人の伸ばした手のさらに上,門柱の高さを超えてさらに高く伸びていこうとする朝顔の蔓がとてもすがすがしい感じで,よかったです.
この他にも,菱川派《江戸四季風俗図巻》,西川祐信《四季風俗図巻》,宮川長春《遊楽図巻》,鳥山石燕百鬼夜行図巻》などの大作をはじめ,鈴木春信唯一の肉筆画《墨田河畔春遊図》など,見どころの多い展覧会でした.
カタログ(P197.2200円)も図版,解説ともなかなかの充実ぶりで(難は《象の綱》の全図を収録していないことですね.って,また言ってらあ),もちろん購入.
なお,この展覧会は,神戸展(神戸市立博物館 2006.4/15〜5/28),名古屋展(名古屋ボストン美術館 2006.6/17〜8/27)に続いて,東京展(江戸東京博物館 2006.10/21〜12/10)へと巡回します.