かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 天下人たちの時代 ―信長・秀吉・家康―  (徳川美術館 2006.7/22〜9/3)

展示は,織田信長豊臣秀吉徳川家康のゆかりの品を集めた企画展です.展示品は手紙などの古文書や肖像画や合戦図屏風といった絵画,あるいは刀剣や鎧兜をはじめとする武具の類.
お目当ては岩佐又兵衛筆《豊国祭礼図屏風》(6曲1双・紙本金地着色)だったのですが,出ていたのは残念ながら,右隻のみの半双.う〜ん,ちょっと物足りないぞ!(以後,今回の旅行では,行く先々でお目当ての一双屏風が半双しか展示していないなんて目に遭っちゃうのでした).それはともかく,《豊国祭礼図屏風》は慶長9年(1604)秀吉三回忌にあたっての豊国大明神臨時大祭の様子を描いたものです.この祭礼は
 8/12 湯立神事
 8/13 雨で順延
 8/14 御幣・御榊の奉納 馬揃え 田楽・猿楽の奉納
 8/15 上京・下京の町衆による風流踊り
 8/16 大仏前の施行
 8/18 終了
という日程で挙行されたようですが,今回見ることのできた右隻では8/14の馬揃えと田楽の奉納の様子が描かれていました.《豊国祭礼図屏風》には,他に狩野内膳筆のものが豊国神社にあり(これは京博『美のかけはし』展に出ていました.が,なんと,こちらも半双のみの展示.トホホ),この豊国神社本が記録性の勝った整然たる描写なのに対して,本展で見た徳川美術館本は,過剰,逸脱,混乱,乱暴狼藉,躁,躁,躁...というかなりサベッジな印象.馬揃えの隊列は乱れに乱れ,周囲にいるかぶきものたちも喧嘩三昧という始末.その中の一人によくよく目を凝らすと,腰の鞘には「いきすぎたりや廿三八まんひけはとるまい」と書かれているのが見えたりもします.その狂騒的な時代の雰囲気(というか一種の閉塞感なのでしょうが)にひときわ目を惹かれ,見ているこちらまでがいささか興奮してきた次第.返す返すも左隻の風流踊りが見られないで残念でした.

常設展示も併せて見たのですが(第1〜6展示室までが常設展「大名の生活と文化」,第7〜9展示室が企画展示室),第3展示室の「室礼 −書院飾り−」がなかなかおもしろかったです.ここは,名古屋城二の丸御殿の「鎖の間」「広間」の一部を『金城温故録』といった史料によって再現し,絵画や諸道具による室内装飾を展示しています.復元された障壁画がちょっとへ○く○なのはご愛敬として,その鷹揚な飾り付けはいい感じ.また,この室に円山応挙筆《鯉図風炉先屏風》(2曲1双・絹本墨画淡彩)が出ていて,これも印象に残りました.

せっかく久しぶりに来たのだから,徳川園なぞも見学していこうか,とも思ったのですが,一歩外に出ると,ぴーかんの白熱地獄に一瞬にしてたじろぎ,早々に退散を決定.次の予定地へ向かった次第です.やれやれ.