かけらを集める(仮)。

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 大阪人が築いた美の殿堂 館蔵・寄託の名品から  (大阪市立美術館)

大阪市立美術館の開館70周年を記念して,館蔵・寄託の名品を一堂に公開する展覧会.
展示は,「日本の仏像・仏具」「日本の工芸」「中国・朝鮮半島の工芸」「中国の彫刻」(以上,1F展示室),「仏教絵画」「中国書画」「日本の書跡」「中世・近世の絵画」「近世の絵画」「近代の絵画・工芸」「江戸・明治の装身具」「掌にのる小工芸」「近世の意匠」(以上,2F展示室)という章立てで,出品総数は668点(このうち,絵画はほぼ全点前期,後期で入れ替え).質・量ともに超弩級で,ぱっと見は東博の本館・東洋館を足し合わせたという印象.と言っても,決して総花的ではなく,大阪市立美術館のコレクションのカラーがけっこうあって,興味深いところも多かった.
午前中をまるまるこの展覧会にあてる予定で,開場と同時に入館.展覧会初日の祭日だが,それほどの混雑ではない.とりあえずマイペースで見て回ることができた.
お目当ての絵画からということで,2Fから見ることにする.
最初の「仏教絵画」室は,主に関西地区の寺社の寄託品が中心で,前期は曼荼羅不動明王像などの密教絵画がメイン.園城寺のものが目立つ.全般的に優品,あるいは怪作揃いで,のっけから圧倒的という印象.法眼厳雅筆《大威徳天法輪曼荼羅》(1幅.正平10年[1355].個人),《十二天像》のうちの〈月天〉〈羅刹天〉(各1幅.鎌倉時代12c.聖衆来迎寺)などが強く印象に残る.四天王寺の巨大な1幅《釈迦説法図》(朝鮮時代16c.全期間展示)も圧巻.
いちばんのお目当てだった「近世絵画」室もなかなかの充実.田万コレクションの《洛中洛外図屏風》(6曲1双)や《四季花鳥図屏風》(6曲1双)といった大作をはじめ,光琳《燕子花図》など小品もいい感じだ.光琳についてはもちろん大阪市立美術館のコレクションの目玉の一つである「小西家伝来・尾形光琳資料」の展示もあった.前期は《衣裳図案集》《歌仙図》《図案小品集》《鳥獣写生帖》の4件.中でも《図案小品集》がよかった.これは長方形の小画面に山水,花鳥,人物をあしらった図案集で,蒔絵印籠のために描かれたもの.この中の唐子に先導されて川を渡る布袋の図案など,諸書に引かれるものも多く,ここで実物が見られたのはうれしいところ.《鳥獣写生帖》は京博所蔵で,今回の展示のために借り出したものらしい.この他に,土佐光起《徒然草絵巻》(個人),白隠《大達磨図》(大阪市立近代美術館(仮称)建設準備室),池大雅《廬山全景図》(個人),伊藤若冲《蔬菜図屏風》(個人),葛飾北斎《潮干狩図》など(このうちの大雅と若冲は全期間展示).森狙仙のお猿もいた.
2F後半のカザール・コレクションによる「江戸・明治の装身具」や「掌にのる小工芸」なども印象に残る展示だった.
2Fの展示が見終わったあたりで,時間が迫り,この後の1Fの展示は駆け足となってしまった.残念.できたらもう少し時間に余裕を持たせて再戦したいと思う.
出品目録は有料で,1部100円.なお,この目録は美術館のサイトPDFファイルが載っている.また,この展覧会の図録はなし(なにせこの出品数だから).代わりに,この展覧会に合わせて所蔵名品選が刊行されていた(2500円).展覧会の期間中に購入すると,出品目録がおまけにつく.ちょっと迷うが,いちばん図版のほしい仏教絵画が,ほとんど寄託品で,したがって未掲載なので,購入を見送る.
【メモ】大阪市立美術館開館70周年記念「大阪人が築いた美の殿堂 館蔵・寄託の名品から」 2006.11/3〜12/24(前期11/3〜11/26・後期11/28〜12/24) 月休 9:30〜17:00 一般800円(サイト内に割引引換券あり.200円引き)