かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 −墨跡と古筆− 書の美  (畠山記念館)

墨跡と古筆を中心とした展覧会で,他に若干の絵画や茶道具,乾山焼などが出ていました.
書はあまり得意ではないのですが,それでも最近は古筆(平安時代から鎌倉時代初頭に歌集などを写した主に仮名書きの書を言うそうです)は多少おもしろく思うようになりました.そんなわけで,今回の展示のお目当ては,三色紙のうちの伝紀貫之筆《寸松庵色紙》(展示は6/27〜7/9).畠山記念館本は,掛幅仕立てで,傷みのため,文字の判読が難しいところもありましたが(と言っても,傍らに置かれた翻刻をたよりに読んだのですが),すらっと美しい文字でした.なお,《寸松庵色紙》には伝土佐光則《扇面山水図》(紙本金地着色・1面.江戸時代)が付属していました.

畠山記念館本《寸松庵色紙》
  きの[ともの]り
 たかためのに[し]
 きなれは[か秋]
 きりのさ[ほ]
 の山へを[た]ちか
  くす覧



古今集・巻5・秋下  ※[]内は判読できず,補う.
「たがための錦なればか秋ぎりのさほの山辺をたちかくすらむ 紀友則

ちなみに《寸松庵色紙》以外の三色紙は伝小野道風筆《継色紙》と伝藤原行成筆《升色紙》になりますが,こちらもこの展覧会に出ていました(ただし,《升色紙》の展示は6/2〜6/25で見られず).書では,この他,藤原佐理筆《離洛帖》のダイナミックな筆勢などが印象に残りました.

畠山記念館本《継色紙》
 きみをおき
 てあだしご
 ろもをわ
 かもたば
 すゑの
  松山
 なみも
 こえな
    む



古今集・巻20・東歌
「君をおきてあだし心を我が持たば末の松山波も越えなん」

さて,この展覧会ではもう一つお目当てがあって,それは伝俵屋宗達《蓮池水禽図》でした.宗達の《蓮池水禽図》と言いますと,京博所蔵のもの(画像はここ)がまず思い浮かぶところですが,こちらは水禽も1羽で,蓮の花も咲いてはいません.とはいっても,京博本に負けぬぐらい,宗達独特の墨の濃淡やたらしこみによる効果がたいへん美しかったですね.宗達たらしこみって,たらしこみという行為自体が自己目的化していて,後の琳派の絵師たちのそれに比べると,いちばんアヴァン・ギャルドだと思うのですが,どうでしょうか.
畠山記念館は展示室内に茶室があります.中に入ることもできて,なかなかいい感じです.前回来たときは床の間に葉っぱつきバナナが活けてあり,ちょっと度肝を抜かれたのですが(笑),今回は竹の花活けに白い額紫陽花がぐっとシックに挿してありました.
【メモ】畠山記念館 2006.6/2〜7/9