かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

日本×画展 にほんガテン! しょく発する6人  (横浜美術館)

6人の作家によるグループ展.企画意図はそれなりにあるみたいで,ちらしなどにもいろいろ書いてありましたが(めんどうくさいので,引用しない),正直言ってそんなことどうでもいい.私の気分としては,展示を楽しみましょう,って感じでした.出品作家は以下のとおり.

藤井雷(1981〜.絵画) 松井冬子(1974〜.絵画) しりあがり寿(1958〜.マンガ) 中村ケンゴ(1969〜.絵画) 小瀬村真美(1975〜.映像インスタレーション) 中上清(1949〜.絵画)

私のお目当ては,これまでさんざん見逃しているしりあがり寿の水墨マンガ・インスタレーション(?)「オレの王国」最新作−《オレの王国、こんなにデカイよ。》.横浜美術館の一番背の高い展示室の一面にデカイ紙を張り巡らし,どか〜んと墨絵を描いていました.細部に眼を凝らしていると,それがにわかに膨張し,どか〜んと空間いっぱいにひろがる感じ.水墨画の計算された余韻と落書きのデタラメさが入り交じった混沌たる世界とでもいいましょうか.期待に違わず,おもしろかったです.
藤井雷は横浜美術館のワークショップ出身の新人作家だそうですが,《絵手紙》と《彼南模様》の2点を出品.《絵手紙》は封筒の背に描いた絵を延々とつなげていく作品.一見,とりとめもないシーン−旅で得たと思われる心象(主に南国のイメージ)がほんとに「延々と」という感じで連なっています.混沌と秩序が入れ替わり出てくるというような大まかな構想は感じられるのですが,どちらかというと,絵柄もタイプではないこともあって,ちょっと退屈かな.と思って見ていたのですが...《絵手紙》では画面が日本絵画の伝統的な「右→左」ではなく,「左→右」に推移していくのですが,一箇所突然開けて広く青い海の見える場面が出てきます.そこだけ画面の奥から手前へと視線の移動を促すシーンになっていて,その転換のところがなんだかすごくよかった.もう1作の《彼南模様》はペナン島を訪れたときの印象をもとにした(と思われる)未来都市的な風景と南国的な自然描写が交錯する絵巻風作品ですが,こちらにも「左→右」が突然「遠→近」に転換するところがあり,その眩暈感が実にいい感じでした.ということで,藤井雷,私的にちょっと注目の作家となった次第です.
この他,松井冬子《この疾患を治癒させるために破壊する》,中村ケンゴ《自分以外》,小瀬村真美《四季草花図》などがおもしろかったです.
さて,この他,展示では各作家の出展作以外に作家セレクトの横浜美術館所蔵の「日本画」が出ていました.はっきり言って,「横浜美術館所蔵作品からのセレクト」という条件のため,このアイデアはかなり中途半端な印象が拭いきれませんでした.たとえば,先の藤井雷のところでは今村紫紅《熱国の巻(小下絵)》を,それも量的につつましやかに展示してありましたが,対比による「思いがけない結びつきや隔たり」を読み取る(当パン)ための試みとしてはなんとも物足りない.もし,小下絵ではなく,東博の《熱国の巻》が,それもある程度ずらっと出ていたとしたら,藤井雷の《絵手紙》はずいぶんと違って見えてきたのではなどと思います.このあたりは他の作家の展示でも同様で,アイデアが私好みであるだけに至極残念無念でした.
また,この展覧会は,夏休み特別企画ということで(ですよね?),会場で小中学生の観覧者向けに「絵画たんけんワークシート」を配布していました.おっさんの私がもらったらダメなのか,とも思いましたが,ちゃんと強奪(!?)してきました.中でも小学生高学年対象のワークシートが秀逸.オススメです.会場入口で表側に屏風の表装が印刷されている袋(絵の部分が窓になっている)を,各展示室で葉書大の展示作を印刷したカードを配布.カードを袋に挿入すると,疑似掛軸になるという仕組み.ちゃんと吊せるようにもなっていて,私,とっかえひっかえ中身を入れ替えて,楽しんでいる次第です.子ども向きだからいいやっ,などと言わずにぜひ入手しましょう.
【メモ】横浜美術館 2006.7/15〜9/20 カタログは手ぬぐいつきで,1800円(買わず).