かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

高松・大島・女木島 瀬戸内国際芸術祭2016春、他

  • 瀬戸内国際芸術祭に行ってきた。春に行くのは初めてで、少し盛りは過ぎていたが、行く島行く島で、島を桜が美しく彩っていた。桜だけはなく、野の花があちこちで咲き初め、海の青、空の青とともに、春らしい華やかで、かつやわらかい島の風景が目を楽しませてくれた。もはや、芸術祭の類は、どこに行ったとしても、オリエンテーリングのヴァリエーションぐらいにしか思われない。ましてや、ここのところ、ディレクターの人が食が云々と言い出したりもして、もう美術は人寄せのための方便なのか、いや、いろいろ漏れ聞こえてくることからしても、今に始まったことではなく、最初の最初から方便だったんだろうと、暗澹たる気持ちにもなる。だが、それでもたくさんの石の中に、少ないながらも必ず玉がいくつかあって、それを目の当たりにすると、また、出かけてしまう。
  • まあ、前置きはこれくらいにして、今回の大きなお目当ては、大島に行くことと女木島のカオス*ラウンジの展示を観ることの2点にあった。(あとは適当に案配した。)大島は、もっと早くに行くべきだったという反省とともに、ほんとうに行ってよかった、と改めて思う。一方のカオス*ラウンジの方は、メンテ中の作品があったり、時間切れで電源落とされて観られなかった作品があったりで、全てを観てきたわけではないけれど、どんどんとステージを上げているアッパーな力強さに溢れていて、明日にでももう一度訪ねたいと思うほどだった。多くは望むまい。0ではなく、2つもあった。これで充分。と思いたい。それに、うどんも食べたし。
  • さて、順を追って、メモしておこう。
  • 最寄り5:30発の成田空港行のバスに乗車。1時間ほどで、成田空港T3に到着。今回は、高松行のJetstarGk411を利用。出発がやや遅れたが、高松空港にはほぼ定時に到着。空港9:50発の高松行のバスに乗車。10:40頃高松に到着。駅まで行かずに、高松港旅客ターミナルビルに近い、一つ手前のホテルクレメント前で下車。高松の天気は薄曇り。雨の心配はなさそうだが、今ひとつぱっとしない天気。
  • 瀬戸内国際芸術祭の総合インフォメーションセンター(高松港旅客ターミナルビル1F)に行き、前売りクーポン(4000円)を作品鑑賞パスポートに引き換え、大島行の整理券のことなどを確認する。パスポートには、会場のマップや交通案内なども付属していた。大島行の整理券の列ができてないので、ちょっとうろうろし、近くのコインロッカーに余分な荷物を入れる。

  • 大島はこえび隊(ボランティア)ガイドによるツアーに参加する形で行くことになる。ツアーに参加するには乗船の40分前から配布される整理券が必要で、これは乗船する船の定員12名×2隻の24名分が配布される(土日に限って定員36名までOKのようだ)。参加費は瀬戸内国際芸術祭のパスポートを持っていれば無料(ない場合は300円)で参加できる。これが一日に3回、催行される。今回は高松港11:40発のツアーに参加するつもり。日曜日なので、混むかなと思っていたが、列は10:50頃からできて、だいたい希望した人は整理券を入手できたようだ。

  • 整理券を入手できたところで、一安心とばかりに、インフォメーションセンターでパンフ類を漁る。中では「瀬戸内国際芸術祭2016 船の時刻表/バスの時刻表」が3日間を通じてたいへん役にたった。もちろん、『公式ガイドブック』などにも時刻表は掲載されているのだが、こちらの方が、一枚ものなので扱いやすく、字が大きくて見やすかった。また、行く島々の情報についても、各会場別にマップの類があり、それぞれの会場で入手することができた。
  • 大島 11:40過ぎに、高松港④桟橋から2隻の船に分かれて出発。片道20分ほどの航海で、大島港に到着。大島は、島全体が「国立療養所 大島青松園」となっている。案内所に集合し、まずガイドさんの、ハンセン氏病や大島青松園についての概略と注意事項の説明があり、首から提げる訪問者証が渡される。その後、ガイドさんに従い、30分弱ほど、納骨堂や大島会館など、島の要所要所、あるいは作品を案内していただいた後、1時間弱の自由見学の時間になる。


往復とも、この船の乗る。船尾にオープンエアのベンチ席があり、少し寒かったが、なかなか気持ちよかった。

島の各所にスピーカーが設置され、それぞれから異なる音楽が流れている。目の見えない方が、今自分がどこにいるのか、わかるようにするための仕組み。

道の真ん中に白線が引かれている。これは弱視の方のためのもの。

道沿いに桜が咲いている。

大島港から西を望む。緑の中に、うすいピンク色の花と、納骨堂の屋根が見える。

  • かつての入所者の方々が生活された長屋(115〜117)、あるいは訪問者用の建物(118)がリノベされて、建物自体も含めて作品化されている(ちなみに、現在は住居や訪問者用の宿泊施設は別に新しく建てられたものが使われている)。それぞれに特徴があるが、かつて、娯楽用に使われた釣り船が建物の中央に置かれた116のやさしい美術プロジェクト{つながりの家}GALLERY15「海のこだま」が印象に残る。この建物の中では、故・鳥栖喬さんが撮影された写真や、さまざまに工夫された撮影のための道具がところせましと置かれていた。鳥栖さんの写真は、高橋伸行さん @yasashiibijutsu が、ツイッターで紹介されているので、少しは知っていたのだが、こうして大島で改めて観ると、それは、感情をゆさぶるだけではなく、想像力の着火を伴って、強く迫ってくる。
  • やさしい美術プロジェクトの2棟の建物、116と117の間の、庭のような場所には、これも高橋伸行さんのツィートで教えられた「解剖台」が置かれていた。


ことばにすることができないような痛みが迫ってくる。この痛みを、妙なカタルシスで癒やしたりせず、日常に持ち帰ること。

  • 最後に、カフェ・シヨル(118やさしい美術プロジェクト{つながりの家}カフェ・シヨル)に立ち寄り、中を見学させてもらった。


「シヨル」は、さぬき方言でよく語尾につける言い方から採られたとのこと。

カフェ・シヨルの一室にギターが置かれていた。

  • 集合時間に戻り、再び船に乗船した。ほぼ定刻に、大島出港。高松港に向かう。

  • 高松港着が13:50過ぎだったので、14:00発の女木島・男木島行のフェリーに乗れるか、どうか、と思っていたのだが、きっぷを買って(片道370円、往復740円)、楽々乗ることができた。(乗船できなかったら、高松市美術館へ行くつもりだった。)女木島は、おそらく時間が足りないと思われるので、049カオス*ラウンジ「鬼の家」(島内の3カ所で展示)を中心に回るつもり。
  • 女木島 高松港から女木島までは20分ほどの船旅。女木島案内所で、鬼ヶ島大洞窟行のバスの乗車券を購入。片道300円。フェリーからのお客を乗せるとバスはすぐに出発。10分ほどで到着。バス停から少し上がったところに洞窟入口がある。洞窟内の見学は通常500円だが、パスで300円に割引き。入口で、カオス*ラウンジの作品配置や作家紹介などの載ったパウチされた解説(以下、カオス解説)を渡される(なんだ、もらえないのかよ!ま、HPで公開されているのかな、と思ったら、掲載されていなかった残念)。洞内には、049カオス*ラウンジ作品の他、051オニノコプロダクションによる展示、あるいは80年代の観光ブームの際に設置されたという、いかにもキッチュな鬼の像などが所狭しと置かれている。
  • カオス解説に、洞窟だけではなく、出口から歩いてすぐの鷲が峰の展望台に立ち寄り、遊歩道を下るべしとあったこともあり、洞窟を出た後、まずは展望台まで歩いてみる。途中から、異様に蠅が多くなり、特に生ゴミが散らばっているというようなことはないのだが、なにやら生臭くもあり、「五月蠅なす」とはこのことか、と薄気味が悪くなる。何人も人がいたからいいものを、一人だったら、引き返したかもしれない。展望台からは、日蓮山上に設置された日蓮聖人の銅像が見える。この日蓮聖人像のいわれにもいろいろと興味深いエピソードがあるようだ。一渡り、眺めた後、やはり蠅の羽音が気味悪いので、早々に展望台を後にする。
  • 帰りは、バスではなく、遊歩道を歩いて下りることにする。整備が行き届いているので、それほどたいへんなみちのりでない。ちょうど遊歩道を下りきったところに、女木丸山古墳がある。カオス解説はこの古墳についても言及していた。


この遊歩道を下る。

丸木古墳

  • 丸山古墳からは、自動車道を歩く。ところどころが桜並木になっており、やや盛りを過ぎてはいたが、美しく咲き誇っている。


  • 途中、住吉神社のところで、道を折れ、作品の観覧の続き。048杉浦康益《段々の風》、少し歩いて、049カオスラウンジ「鬼の家」の第2会場、050行武治美《均衡》と観覧。古民家を使った49の第2会場では、一部メンテナンス中とのことで、2Fに展示の作品を観ることができなかった。最後に浜近くに戻り、049カオスラウンジ「鬼の家」の第3会場を観覧する。ここで、クローズの16:30を回る。時間切れ。全然気づかなかったが、第3会場の映像作品の電源が切られていることでやっと気づいた。


49カオス*ラウンジ「鬼の家」第3会場入口。会場から禍々しさが溢れだしている。

  • やむなく、「オーテ」を観ながら、女木港に戻る。











  • 行きのフェリーの中でも、放送があったが、今日が日曜日、かつ男木島・女木島でイベントがあったため、人が多いので、希望の船に乗れない可能性があるとのことだった(いかなる理由でも定員を超えての乗船は絶対不可)。港に戻ると、長蛇の列ができていて、人数確認をしている。乗船のフェリーは男木島発なので、女木島で乗船できる人数は男木島で乗った人数にもよる。最終の17:20発のフェリーが男木島から着いたが、乗船できたのは、列の1/3ほど。結局、この船が高松港から折り返してきて、18:10頃出るとのことで、それに乗船することになった。案内所のロビーで缶コーヒーなどを飲みつつ、文庫本をぱらぱらめくったり、フリーWi-Fiがあったので(案内所や駅など要所要所にフリーWi-Fi「KAGAWA-WiFi」が通じていて助かった)、ネットを覗いたりして、時間を潰す。18:00には船が戻ってきて、乗船が始まる。乗船が終了次第、船は出航。18:30前には高松港に着いた。


捨てる神あれば、

拾う神あり。って、同じ船だけど。

  • コインロッカーの荷物をピックアップして、JR高松駅横のスーパーで、飲み物などを買って、ホテルまで歩く。JR高松駅から5分ほど。チェックインして、いったん荷物を置いてから、夕食に出る。ぺこぺこだったので、兵庫町のアーケードに入ってすぐに目に付いた定食屋で、適当な夕食を適当に食らう。腹ごなしに少しアーケード街をうろうろしてから、ホテルに戻る。風呂に浸かって、ベッドに横になって、明日のスケジュールなどを考えているうちに寝入る。
  • 今回宿泊したのは、パレス高松というビジネスホテル。朝食なしの格安プランで2泊。普通のビジネスホテルで、特に難はなかった。Wi-Fiあり(電波が強く、よし!)、ウォシュレット、アニメティなども揃っていた。