かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 京都国立博物館

続いて,京都国立博物館の平常展を見ました.2Fの絵画から見ていったのですが,案の定,2Fの展示だけで時間切れになってしまいました.まあ,1Fの展示は1月に見たからいいか...と自分を無理に納得させたりして.
9室「画僧明兆の営為」 ということで,2Fの展示です.いろいろとおもしろかったのですが,展示室別では,今回の一番は9室でしょうか.東福寺所蔵の明兆画のうち,京博に寄託中のものを中心とした展示.個人的に,東福寺・涅槃会に続いて,明兆特集です.
《達磨・蝦蟇・鉄拐図》がヒット! 画面も大きく,中幅の達磨さんも迫力満点.蝦蟇仙人と李鉄拐はどこかで見かけたことがあるなと思ったら,顔輝のものを参照したとのことでした.着物や岩の輪郭など力強くていい感じです.皴法などのとてもシンプル.
また,東福寺で3幅見た《五百羅漢図》が京博では8幅出ていました.中に「浴室」もあったのですが,ここでも童子が太鼓叩いていました.って,これでは何のことかわかりませんね.五百羅漢図には,羅漢さんたちの日常生活を描いた図が数幅含まれているのですが,この中に羅漢さんたちの入浴を描いた図があります.先日,東博で狩野一信の《東博本・五百羅漢図》(全50幅)を見たのですが,この時の展覧会のカタログ『幕末の怪しき仏画 狩野一信の五百羅漢図』の「浴室」の解説に「(前略)太鼓をたたく童子の図様は、京都・大徳寺所蔵の五百羅漢図(南宋時代)に先例がある」とあったのですが,東福寺の明兆《五百羅漢図》の「浴室」でも童子が太鼓を叩いていたわけです.でも,太鼓,どうして叩いたのでしょうか? 羅漢さんたちが浴室に入る際の合図でしょうか? それとも,風呂にはいる羅漢さんたちがのぼせないように時間を知らせていたのでしょうか?(一信画では,太鼓を叩く童子の後方の浴室,御簾越しに湯船でゆったりリラックスの羅漢さんが描かれていたのですが,明兆画ではそれはありませんでした.)ま,どうでもいいようなことですが...それにしても,この明兆の《五百羅漢図》,小出しではなく,ずらっと並んでいるところをぜひ見てみたいものです(47幅もあるからなあ).

−9室− 「画僧明兆の営為」

  • 《達磨・蝦蟇・鉄拐図》 3幅対・絹本着色 応永25年(1418) [東福寺
  • 聖一国師岩上像》 1幅・紙本墨画 [東福寺] ※聖一国師円爾・1202〜80)は東福寺の開山.
  • 《五百羅漢図》 8幅・絹本着色 至徳2年(1385) [東福寺] ※全50幅.ただし,現存は47幅.そのうち,45幅が東福寺に,残り2幅が根津美術館に所蔵されている(根津美術館所蔵の2幅の画像はここ).また,東福寺所蔵のうち,20幅が京都国立博物館に寄託.展示はこのうちの8幅.
  • 《在山素えい像》 仲方円伊賛 絹本着色・1幅 応永13(1406) [東福寺] ※「えい」は「王」に「睿」.在山素えいは東福寺第49世.
  • 《蔵山順空像》 絹本着色・1幅 [永明院] ※蔵山順空(円鑑禅師・1233〜1308)は東福寺第6世.永明院は東福寺塔頭
  • 白衣観音図》 絹本着色・1幅 [個人蔵]

特集陳列・雛まつりとお人形(平常展示館17室 2006.2/18〜4/2)  江戸から昭和にかけての各時代の特色ある雛人形やその飾り付け,また,御所人形,賀茂人形といった京人形の数々を見ることができました.
お人形もさることながら,障壁画好きの私にとって,あっと驚くお楽しみがありました.これらお人形の背景に旧円満院の障壁画が出ていたのです.円満院の障壁画は20世紀末にさる事情で円満院を離れたそうで,残念に思っていたのですが,こうしてその一部を見ることができ,ラッキーでした.(詳しくは知らないのですが,この他にも千葉市美術館などが所蔵しているようです.)

園城寺円満院宸殿障壁画のうち

  • 宸殿上段の間 《住吉社頭図》床貼付3面,違い棚貼付3面・紙本金地着色
  • 宸殿五の間 《風俗図(歳旦風景)》襖4面・紙本金地着色

いずれもやや剥落が目立ち,画面がわかりづらかったのですが,風俗図らしい細部の描写がなかなかおもしろかったです.
京博の解説によると,園城寺円満院宸殿は元和5年(1619)の女御御所の御局御殿を下賜されたものとの説が有力だそうで,狩野貞信(1597〜1623.光信の長男.早世),ないしは甚丞(生没年未詳.永徳の弟,宗秀元秀の子)がその筆者に目されていました.
この他に,狩野永納《十二ヶ月花木図屏風》(絹本着色・6曲1隻)も出ていました.これは四季の花木を描いた方形の図を1扇に2枚ずつ貼った小屏風で,雛人形にはぴったりの可愛らしいものでした.