かけらを集める(仮)。

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 館蔵日本美術による GOLD 〜金色の織りなす異空間 [前期] 

大倉集古館所蔵の日本古美術の作品から,「金」によって彩られたさまざま名品,怪作(!?)をセレクトした展覧会.「第一部 金色の荘厳〜仏教・神道の美術」「第二部 金の彩り〜花やぐ意匠」「第三部 金色の異空間〜金屏風」の3部構成.
第一部で印象に残ったのは,田中親美(1875〜1975)模写・複製による《平家納経(模本)》(大正時代).これがなかなか凄かったです.書のみならず,料紙装飾や装丁まで見事な仕事っぷり.しかも,お経を収める経箪笥(もちろん蒔絵あり)までばっちりコピーしていました.田中は《平家納経(模本)》を数セット作ったということですから,これまた凄い.第二部では特別展示の伝源俊頼筆《古今和歌集序》(平安時代)がやはりおもしろかったです(俊頼といえば,冷泉家時雨亭文庫で『俊頼髄脳』のオリジナルに近い最古の写本が見つかったそうですね→ここ).相変わらず,文字の善し悪しはよくわからず,解説に頷いてきただけですが,それでも料紙とその装飾の美しさには私なりに心ときめくものがありました.今回の展示は,ありがたいことにノーカットでの展示です.お手元の古今集などで,仮名序を軽く予習していくともっと楽しめるかと思います(展示は前期のみ).
さて,お目当ての第三部です.

  • 作者不詳《波に千鳥図屏風》6曲1双・紙本金地着色.17c・桃山時代. ※金地・金雲の間からのぞく波の繰り返しや空を翔る千鳥の群れによるリズム感がなかなかいい感じ.山雪《雪汀水禽図屏風》左隻の緊迫した画面に比べると,いかにも桃山的なのんびり感あり.左隻に水車,蛇籠,右隻に網干を配していて,《柳橋水車図屏風》や《網干図屏風》などをアレンジした作か,とも思われます.解説に「しおのやまさしでの磯に住む千鳥君が御代をば八千代とぞなく」(古今集・巻7)に基づく,とありました.
  • 作者不詳《橋に柳・橋に水車図屏風》2曲1双・紙本金地着色. ※2曲1双として展示してありましたが,もとは1隻ずつ.多く遺品の残る《柳橋水車図屏風》を2曲1隻にダイジェストしたような構図でした.
  • 住吉如慶筆《秋草図屏風》6曲1双(中屏風)・紙本金地着色.
  • 作者不詳網代に葡萄図》6曲1双・紙本金地着色. ※上方の葡萄棚と下方の網代を装飾的に組み合わせた作品.解説では等伯没後ますます装飾性を強める長谷川派の作と推定.もともとは画面中の竹などに濃彩が施されていたようですが,現在は葡萄の実などにほんのりと色が残っているだけ.そのため,黒く焼けた銀を背景に金が強く前景化しています.とにかく強烈,かつ奇怪な印象を受けました.

なお,ちらしでは椿椿山《墨蘭図》が前期展示となっていましたが,これは誤植.後期展示のようです(サイトでは後期となっています).
【メモ】大倉集古館 2006.8/3〜10/1(前期:8/3〜9/3 後期:9/5〜10/1)