かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

島原半島西望めぐり第1日:諫早→島原→南島原

  • 島原へ行ってきた。お目当ては、一度訪ねたかった原城趾に行くことと、そして、北村西望関連の野外彫刻をあまねく探ることである。北村西望長崎県南高来郡南有馬村に生まれた。今の南島原市である。島原市島原城内に西望記念館があり、南島原市の生家跡は西望公園となっている。ともに多くの野外彫刻が設置されている。もちろん、両市内には、他にも、多くの野外彫刻が設置されている。すべてとはいわないまでも、それらをできるだけ探って来ようというわけだ。両日とも、天気がよく、目的は、まあまあ果たすことができた。
  • 行きは長崎空港を起点とした。まずは、最寄りから、始発のリムジンバスで羽田空港へ向かう。1250円。オンタイムの5:50に羽田空港T2に到着。早々に保安検査場を通過して、51ゲートへ移動。搭乗する便はソラシドエア SNA031、羽田T2 6:50→8:55長崎の予定だ。搭乗まで静かなところを探して、本を読む。6:35に搭乗開始、出発予定時刻には全員が着席していたが、なんでも搭乗予定の何人かが、まだ来ていないとのことで、それを待つというアナウンス。結局、10分以上待ち(何人かは現れなかった模様)、それから、ようよう動き出し、7:15に離陸する。ここのところの膝痛で、LCCと違って、前後の席間がいくぶん広いのは助かる。窓側席だったので、空からの景色を楽しむことができた。途中、富士山の北側上空を通過したあたりまでは地上も良く見えたが、しばらくすると厚い雲に覆われてしまった。ところどころの雲間から下界が見えても、その地形がどこか、こうなるともうわからない笑 長崎空港には予定より15分ほど遅れて、9:10に着陸。9:20頃、到着ロビーに出た。予定では、9:10発の諫早駅行きのバスに乗る予定だったが、1本遅いバスになってしまった。機材や天候の関係で遅れるのはやむを得ないが、遅刻者のせいで遅れるのは勘弁してほしいよな。
  • 長崎県営バス諫早行きの路線バスに乗車。9:40発。空港から橋を渡ってすぐ、陸側の袂にある《天正遣欧少年使節顕彰之像》(1982建立)を車窓から確認することができた。機会があったら、間近で観てみたい。バスは、普通の路線バスなので、大村市内を回ってから、諫早方面に向かう。諫早駅まで、50分くらいか。670円。10:30頃、終点のBTに到着。1時間弱の滞在になってしまったが、ここから本諫早駅まで歩き、途中、通りすがりに観光をするつもり。本明川沿いの道を歩く。青空が広がり、天気も上々。ただ、思っていた以上に、寒い。
  • 通りすがり観光のお目当てその1は、諫早公園の眼鏡橋。この石橋は、天保10年(1839)に完成、もともと本明川に架けられていたが、昭和36年(1961)に現在の場所に移設された。昭和33年(1958)には、国の重要文化財に指定されている。美しいシルエットをしているのに加えて、とても頑丈な橋だという。もちろん渡ることもできた。そして、この眼鏡橋に、道路を挟んで、向かいあうように、サックスおじさんが…いや、サックスではなく、フルートを吹いている。そして、ベンチに座った少女が耳を澄ませ、演奏に聴き入っている。黒川晃彦作品だ。これがお目当てその2。銘板がないので、タイトルなどわからなかったが、1991年の制作らしい。ちょうど、近くの高校がマラソン大会をやっていて、この野外彫刻の前を走り過ぎていく。



諫早公園の眼鏡橋


おじさん、サックスじゃなくて、フルート吹いている…黒川晃彦作の野外彫刻(作品名不詳、1991)

  • さて、あまり時間がなくなってきた。諫早公園/諫早城趾には伊東静雄の詩碑などもあるようだが、残念だが、今回はパスし、島原鉄道本諫早駅へ向かう。道筋に諫早市美術・歴史館があったが、これも泣く泣くパスする。ただ駅の近くにある諫早市図書館には立ち寄った。エントランスにある《コンスタンチノ・ドラード》像を観るためだ。とりあえず、写真を撮って、説明板をざっと読むが、ここで時間切れ。なにせ電車の本数が少ないので、予定の電車に乗り遅れるとまずいのだ。すぐに駅に向かう。本当に通りすがりだな苦笑 なお、諫早市にある長崎県立総合運動公園北村西望の野外彫刻《創造の女神》(1969年の長崎国体(創造国体)の際の記念モニュメント)があるとのこと。近時のスタジアム建て替え後も健在らしい。追記(2021.6.27):2018年12月19日に訪問、《創造の女神》を観覧してきた→そのエントリーはここ


諫早市図書館エントランスの、少年像、《コンスタンチノ・ドラード》。コンスタンチノ・ドラード(1567頃-1620)は、15歳のとき、天正遣欧少年使節(1582年出発、1590年帰国)に随員として加わり、ヨーロッパから印刷技術を印刷機や器材とともに持ち帰った。キリシタン弾圧が高まる中、加津佐、天草、長崎と印刷所を移しながら、50種以上のキリシタン版を出版した。元和6年(1614)にマカオに追放、その地で司祭となり、53歳の生涯を終えた。この像は、株式会社昭和堂が創立50周年事業として諫早市図書館に寄贈したもの。像の制作者、年は?(「Masakuni」のサインあり。2001年?)

  • 本諫早駅11:28発の、島原外港行き急行に乗車する。1両編成。島原まで、1380円。12:19に到着。駅で自転車を借り出す。今回は、ちょっと離れたところまで行くので、いささか寒いのだが、レンタサイクルを利用することにした。1時間300円。3時間以上は1000円。自転車は電動自転車だった。駅前銅像の、《島原の子守歌》を眺めてから、自転車で出発。まずは、島原城へ。風があり、これが冷たい。それなりの準備はしてきたが、それでも寒いな。



本諫早11:28発の急行島原外港行きに乗車。よく見ると、ヘッドマークに「地元ゆるキャラ大集号」とある。で、そのゆるキャラの一人として、子守の娘さん(島原の子守唄)がいた。

島原駅に無事到着。駅前にも子守をしている娘さんがいた。後に気づくのだが、この銅像《島原の子守唄》、中村晋也の作だった。

  • 島原城 まず天守閣(鉄筋コンクリートの模造天守閣で、昭和39年[1964]に竣工)で、入場料540円を払い、天守閣に上る。入口で、天草四郎?にコスプレしたおねえさんが迎えてくれる。館内は、キリシタン史料や郷土資料などを展示する博物館になっている。甲冑や刀剣、鉄炮などの武具も展示してあった。それにしても、さ、寒い。暖房、効いていないぞ。最上階はもちろん展望室になっているのだが、ここで、外に出てみると、風が強く、ちょっと怖い…笑 ひとわたり見たところで、巽の櫓に向かう。


島原城天守閣。中は博物館と展望室。


で、その展望室からの眺め。写真下、眉山のうしろから雲仙普賢岳がちらりと見える(ずっと眉山雲仙岳だと思っていた…苦笑)。

  • 西望記念館 この巽の櫓が、西望記念館となっている。周囲に設置された野外彫刻とともに、西望作品の展示施設として、昭和47年(1972)に開館した(この年、西望は島原市の名誉市民になっている)。先に周囲の野外彫刻を回る。《星空無限》(1922《夏の星座 無限》/高純度アルミ)、《狛犬》(1965/高純度アルミ)、《浦島》(1950《浦島 長寿の舞》)、《天草四郎》(1972)、《若き日の織田信長》(1965/高純度アルミ)、《日蓮上人》(1953《怪傑日蓮上人》/高純度アルミ)、《獅子吼》(1939)、《人類の危機》(1958)、《聖観世音菩薩》(1937/高純度アルミ)、《聖火》(1965/高純度アルミ)、《自由の女神》(1968《平和の女神》/高純度アルミ)、《北村西望像》(1972)。その多くに、西望書による作品名とともに、「○○殿寄贈」と彫られている。西望記念館の作品の多くが、このように、寄贈によって集ったもののようだ。また、他ではブロンズで鋳造されていたものが、ここでは高純度アルミで鋳造されている、という例が目立った。


巽の櫓/西望記念館と野外彫刻群。野外彫刻からは、次の2作を掲載。



北村西望《聖火》(1965/高純度アルミ)




北村西望北村西望像》(1972)。西望記念館の野外彫刻唯一の新作オリジナルのようだ。87歳のときの作だが、まだまだ上を見上げている。気宇壮大である。銘板には「西望記念館が城頭に輝き又肖像まで企画して頂た事は此上も無い感激である、然し西望芸術は まだまだ是からだ。健康と共に油断大敵「たゆまざる歩みおそろしかたつぶり」昭和四十七年十一月十八日 米寿西望塑人」とある。

  • 野外彫刻に続いて、記念館の中を観覧する。展示室は1階から3階まであり、1階は、《長崎平和祈念像》の1/4スケールのマケットや木組みを中心に、《将軍の孫》《健康美》《師範代》《拳闘》といったおなじみの作品が、2階は彫刻小品と書画、3階は書画と道具類などが、それぞれ展示されている。中でも、古い写真がおもしろい。《健康美》のモデル、制作中の作品などとともに西望を撮った写真(コピー)とか。《健康美》のモデル氏、首から下は作品のとおりだが、首から上が作品とずいぶん違って、髭面のおっさんだったりして笑
  • 記念館を見たところで、島原城は切り上げ、次の目的地に向かうことにする。実は、ここで先を急いだのが失敗。記念館から少し離れたところに設置ある野外彫刻、《烏の母親》(1856《舞踊 烏の母親》)、《静座》(1925《静座 巨人》/高純度アルミ)の2点を見落としてしまった。せっかちは失敗のもとだな。反省。
  • 次の目的地は、島原城の少し南を流れる大手川。この川の橋のいくつかに、北村西望の作品が展示してある。上流から順に、今川橋《平和の女神》→斜い橋《母子像》→桜橋《夢》→よろず橋《喜ぶ少女》→新橋《若き日の母》→大手橋《こんにちわ》。《喜ぶ少女》と《こんにちわ》以外はスケールダウンした小品。また、以前は、近くの大手広場に《花吹雪》が設置されていたようだが、現在進行中の島原市役所の建て替えと周辺の再整備に伴い、撤去されていた(グーグル先生に尋ねたところ、島原外港緑地公園に移されたようだ。う〜む、これまた見逃した。ダメだ。)


今川橋の、北村西望《平和の女神》(1967) ※スケールダウンしたもの


斜い橋の、北村西望《母子像》(1925)

同。キモはここか?


桜橋の、北村西望《夢》(1970) ※スケールダウンしたもの


よろず橋の、《喜ぶ少女》(1926)


新橋の、《若き日の母》(1925) ※スケールダウンしたもの


大手橋の、《こんにちわ》(1918《将軍の孫》)。すぐ後ろを島鉄の線路が走っている。

  • 続いて、鯉の泳ぐまちへ。このあたりは、前回来たときにゆっくり観光した。この一角の休憩スペース?に、西望の《飛躍》(スケールダウンしたもの?)が設置されている。これを改めて観るために立ち寄った次第。


鯉の泳ぐまちの、北村西望《飛躍》(1977)。これのオリジナルはどこにあるやつだろう。西望公園にもあったが、ひょっとして、広島市の広島中央公園にあるやつか。広島で、鯉(カープ)って、できすぎ。

  • 次は、今回の山場の一つ、眉山治山祈念公苑へ向かう。ここからが電動自転車の活躍どころだ。白土湖の近くを抜け、ひたすら急坂を上る。野球場が見えてきた。野球場に沿って進み、無事に眉山治山祈念公苑に到着。15分ほどのアタック笑だった。眉山治山祈念公苑は、島原大変(寛政4年[1792]の雲仙岳火山性地震地震による眉山の山体崩壊)による遭難者供養と郷土の安泰繁栄を願って作られた。公苑には、西望による《聖観世音菩薩》が安置されている。他に、《聖観世音菩薩》の前には、同じく西望作の《獅子香炉》が置かれている。また、傍らには、公苑を作るにあたって、少なからざる支援をした有馬茂氏の胸像(これも西望作。《有馬茂翁》)が設置されている。ここは桜の名所とのことだが、なにせこの季節なので、公園を掃除するボランティアの方たちを除くと、ほとんど人もいない。


眉山治山祈念公苑


眉山治山祈念公苑の、北村西望《聖観世音菩薩》(1975/高純度アルミ)


眉山治山祈念公苑の、北村西望《獅子香炉》(1930)


眉山治山祈念公苑の、北村西望《有馬茂翁》(1975)

  • さて、どうやって戻ろうかと自転車にまたがる。あっという間に、坂を下る。白土湖を一回り。周囲に変な形の石灯籠が置かれている。笠の形が変、というか、大きい。さらに、海方向に走り、最後の目的地、霊丘公園へ向かう。途中、通りがかりに、浜の川湧水を見学するなど。
  • 霊丘公園前に、《植木元太郎翁像》が立っている。これが、西望作品めぐりの、今日最後の作品。植木元太郎(1857〜1943)は、島原鉄道の創業者で、島原半島に交通網を整備し、後に初代の島原市長を務めた人物。全身立像で、なかなか立派である。


霊丘公園前の、北村西望《植木元太郎翁像》(1969)。西望は植木元太郎の肖像を戦前にも作っているそうだが、これは例によって残っていない。

台座横の装飾。これも西望の作。

  • 本当は、武家屋敷再訪など、少しは観光もするつもりだったのだが、天気がいいとはいえ、風が冷たく、寒くて寒くて、メインの目的地を回るので、精一杯だった(しかも、帰宅後、見落としに気づくという…)。仕方がないな。まあ、腹も減ったし、メシでも食おうかと。だが、15:00過ぎなので、多くの店が休憩に入っている。やむなくファミレスで、適当はメシを適当に食らう
  • メシを食らって、体が温まったところで、再び自転車にまたがり、島原駅に戻る。自転車を返却。3時間オーバーなので、1000円だった。ここで、16:25発の加津佐海水浴場行きの島鉄バスに乗車する。バス待ちの間に、ちょっと、虫の知らせで、あらためて駅前銅像《島原の子守唄》をじっくりと観覧。銘板などには記載がなかったが、足下のサインを見ると、なんと、中村晋也作だった。依頼された作品なのだろうけど、こういうのも作るのか、と感心。駅に高校生が多数いるので、やな予感。と、オレの乗るバスも、満員の高校生を乗せて、やってきた。なんとか、潜り込む。地獄だ笑 3、40分ほど、変な格好をして、乗っていたら、やっと高校生が下りて行き、座ることができた。腰と膝が…苦笑 大分遅れて、1時間10分くらいかかっただろうか、目的地の浦田バス停に到着。ここで下りる。
  • バス停近くの地元のスーパーで何か買うつもりでいたのだが、休みで、がっくし。事前にネットで調べたらやっているはずだったんだが…結局、少し先にあったファミマに立ち寄り、細い道を抜けて、今日宿泊する宿まで歩く。7,8分。途中、野良犬に出遭い、吠えられるが、毅然とした態度で追い散らすなど。



途中、道ばたに、えびすさんが祀られていた。

  • 本日宿泊したのは、原城温泉真砂という温泉リゾートホテルで、朝食付きのプランで、8000円弱。部屋はツインのシングルユースで、たいへん広く、部屋からの眺望も素晴らしい。Wi-Fiの有無で、ここを選んだのだが(近くにもう1軒、安いホテルがあったが、こちらはWi-Fiなし)、そのWi-Fiがうまく入らず、フロントとしばらくすったもんだの大騒動。結局、ルーターをリセットしたら、なんとかつながった(夜中には、再び切れてつながらなくなったのだが…)。機器の相性か、まれにこういうことがある。最近はなかったのだが。で、Wi-Fi騒動が落ち着いたところで、温泉へ浸かりに行く。ここの温泉は、日帰り温泉もやっているようで、けっこうたくさんのお客がいた。浴室はもうもうとした湯気で、真っ白。お湯はなかなかよかったなと。部屋に戻り、のんびりしているうちに、寝入ってしまうなど。


オーシャンビューってやつである。