かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 館蔵品による 狩野派展 (大倉集古館)

大倉集古館『館蔵品による狩野派展』を見てきました.タイトルのとおり,大倉集古館所蔵の狩野派の絵師の作品と若干の周辺作により,「1 狩野派の始まりとその周辺」「2 探幽登場」「3 探幽以降の狩野派」の3章で構成された展覧会でした.1では「元久」印《人物花鳥扇面画帖》など,なかなか珍しかったのですが,やはり2と3,特に2がおもしろかったですね.
2では,なんといっても大倉集古館の《探幽縮図》のうち,数点がずらっと広げてあって,それがなかなかの壮観.中に歌仙絵を写したところがあったのですが,柿本人麻呂など,顔の部分をアップで描いたり,何度も何度も描いたり,という具合.作画の現場がうかがえるようでおもしろかった.実はこの後,東博で橋本雅邦の《臨済一喝(画稿)》(明治30年)を見たのですが,これが一喝する臨済の頭部を執拗にデッサンしていて,この日は人麻呂と臨済の姿が何か強烈に頭に残り,その日の夢に出てきたほど(苦笑)
また,《鵜飼図屏風》(紙本金地着色・6曲1双)もよかった.左右隻を通じて画面の前景に鵜飼いの場面が描かれています.図版ではそれほどとも思わなかったのですが,実物ではこれがぐっと低い位置にあるという印象.中景には大和絵風の緑色の小高い山が連なり,その上は遠景としてわずかにしろい山が見える他は金雲,あるいは余白となっています.余情がいい感じに響いていました.また,鵜飼いの船に見物の船がまじっています.左右隻のやや内側にそれぞれ主客とおぼしき若い藩主とその子弟(かな?)が配され,その視線によって空間が外側に広がっていて,これも印象的でした.ちなみにお二人とも面貌が白く塗られ,いかにもやんごとなき感じ.灰色の水面や水に潜る鵜の姿などとともに目のとまる表現でした.
3では,探幽の弟で,狩野宗家を継いだいじめられっ子(!?)安信や,探幽の次弟尚信の子,常信の作品を数点まとめて見ることができたのがよかったですね.この辺の人たちは,探幽の陰に隠れて,なかなか見る機会がなかったりもしますから.
安信では《柳に野鳥図屏風》(紙本墨画・6曲1双)がよかった.特に右隻の第1〜3扇に描かれた雪の積もった柳にとまる白鷺の姿が可愛らしかったです.
また,英一蝶《大井川富士山図》(絹本淡彩・1幅)は,富士山を背景に大井川を渡河する旅の人々を小さくを描いたものですが,中には人足を雇わずに手を繋いでわたる二人組み(女性?小さくてよく見えず)もいたりして,ユーモラスな情景が楽しかったです.
この展覧会,会期は12/18まで.
伊東忠太による大倉集古館の建物もおもしろいですが,もし,行かれたら,建物の周囲もぜひご覧下さい.けっこうおもしろいものがありますよ.写真はその一つ,石造の羊クンです.



ちょっと愚痴とおまけ情報.
実は,今回の『狩野派』展には,お目当てが2作あったのですが,残念なことに両方とも後期の展示で見ることができませんでした.ちらしやサイトに「会期中展示替を行います」とありましたが,掲載の「主な展示品」には展示期間が示されていませんでした(ちょっと不親切かな.ぶーぶー).まあ,問い合わせてから行けば,よかったのですが...
ということで,会場で配布の出品目録によって,「主な展示品」+α(ちらしに図版掲載のもの)の展示期間を下記に示しておきます.

前期:2005.10/7〜11/13 後期:11/15〜12/18

  • 伝狩野元信《竹に雀図》 前・後
  • 前嶋宗祐《鶏頭小禽図》 後
  • 狩野探幽《鵜飼図屏風》 前
  • 狩野探幽観音菩薩・山水図》 前・後
  • 狩野探幽《花籠に牡丹図》 前
  • 狩野探幽《探幽縮図》
    • 《探幽縮図・地蔵十王図》 前・後(場面替えあり)
    • 《探幽縮図・和漢古画図巻》 前
    • 《探幽縮図・和漢古画帖》 前
    • 《探幽縮図・道釈人物花鳥図画帖》 前
    • 《探幽縮図・山水図巻》 後
    • 《探幽縮図・道釈人物図画帖》 後
    • 《探幽縮図・三十三観音及び山水人物花鳥図画帖》 後
  • 狩野安信《風景人物花鳥図巻》 前
  • 狩野常信《松に琴・紅葉に琵琶図》 後
  • 狩野常信《梅に尾長鳥・柳に黄鳥図》 前
  • 狩野常信《猿猴捉月図》 後
  • 久隅守景《賀茂競馬宇治茶摘図屏風》 後
  • 英一蝶《雑画帖》 後

なお,同一展のリピーターは,半券持参で,100円引きになるそうです.
まあ,前期でしか見られないものもおもしろかったから,いいんですが...もう一回行くつもりです.