かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 古今和歌集1100年記念祭 歌仙の饗宴  (出光美術館)

《佐竹本 三十六歌仙絵》とか《高野切》とか各種「柿本人麿像」とかいろいろ出ていましたが,私のお目当ては「全員集合!三十六歌仙」図(《三十六歌仙図》.たとえばこんなんです).この展覧会のちらしで鈴木其一のものが出ているのは知っていたのですが,この他にも個人蔵の屏風が2種出ていて,ちょっとうれしかったです.(この日記内の関連記事はここ

  • 尾形光琳三十六歌仙図・画稿》(2曲1隻・紙本着色) ■所蔵:個人 ※この屏風の裏に稲垣其達という人が明治28年(1895)に記した識語があって,それによるならば本図は酒井抱一が模写した画稿(下書き)のようです.つまり,伝酒井抱一模写〈伝尾形光琳筆《三十六歌仙図(屏風)》画稿〉(わかりづれ〜.その上「模写」と言っても,《風神雷神図屏風》のような例もあるので,単なる「模写」とはいかないかも.)彩色はしてありますが,ところどころに文字で色名が書いてあったりします.
  • 田中抱二《三十六歌仙図》(2曲1隻・紙本金地着色) ■所蔵:個人
  • 鈴木其一《三十六歌仙図》(1幅・紙本着色) ■所蔵:出光美術館 ※弘化2年(1845)

どうも酒井抱一校長の私立江戸琳派学校の卒検はこの三十六歌仙図》だったらしく,池田孤邨クン(東京都美術館でやっているバーク・コレクション展に出席[しているよな?].ちなみに元祖尾形光琳のものは2/19までメナード美術館で展示)や田中抱二クンは教科書(光琳百図』)や校長のお手本でばっちり勉強して,見事合格を勝ち取ったようですが,ちょっと見優等生,実はけっこう利かん気の鈴木其一クンは2曲1隻の屏風絵の課題を1幅の掛軸に再構成した上,かなり手の込んだ描表装をほどこしちゃいました.一見すると,「この表装やりすぎっ!絵が負けてる!!」と思わず言っちゃいそうですが(実際に言っている人あり.目撃しました!),鈴木クンの目論みではこのデザイン感覚抜群の描表装が主役だったりします.これを見て,さすがの校長先生も思わずうなったとか...というのは,まあ,(だれでもわかる)ウソですが...それにしても,この《三十六歌仙図》,見比べてみるとかなりおもしろいです.特に面貌表現が筆者で全然ちがう.鈴木其一はわりと上品な感じでまとめていますが,伝尾形光琳なんかは顔面が踊っていたりします.ギャグマンガのキャラに近いかも.というわけで,このあたり,かなり楽しめた次第です(って,私だけ!?).
それから,岩佐又兵衛も何作か出ていました.在原業平図》出光美術館蔵]や伊勢物語図》(旧樽屋屏風のうち)[出光美術館蔵]など.せっかくだから仙波東照宮の《三十六歌仙図扁額》も連れてくればいいのに!というのはないものねだりですね.
【メモ】出光美術館 http://www.idemitsu.co.jp/museum/
光琳百図』→国立国会図書館 http://www.ndl.go.jp/ 電子図書館の蔵書>近代デジタルライブラリー で,明治期の後刷版(3種あり)の画像を見ることができます.《三十六歌仙図》は明治24.6版ですと,第2冊の12コマ(12/21)になります.