かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

宇部→山口


宇部新川駅前のヤシの木。宇部市、ヤシの木が多く、よく目に付いた。

  • 今週も彫刻放浪である。それに加えて、雪舟。この2つが、今週のお題。訪問地は、彫刻のまち、宇部市、そして、新発見の雪舟画を展示中の山口県立美術館と、折しも国宝展で《山水長巻(四季山水図巻)》を広げている最中の毛利博物館である。
  • 宇部市については、主に2ヶ所を訪ねた。1ヶ所は、常盤湖畔にある、ときわ公園、ときわミュージアムである。ここに彫刻美術館があることは以前から知っていたし、機会があったら、一度訪ねてみたいと思っていたのだが、なかなか果たせないでいた。野外彫刻がマイブームの今を機会に、今回の旅程に繰り込み、行ってみることにした次第。もう1ヶ所は、宇部市内である。宇部市立図書館に、本郷新の《手を前にくむ》という彫刻がある。近くまで行くのだから、ちょっと立ち寄って、これを観よう、というのが最初の目的だった。その後、予定をいろいろ考えているうちに、時間を確保することができた。宇部市内には、そこここに新旧の野外彫刻がある。また、村野藤吾建築もいくつかあって、これらもちょっと見てみたい。などと、いろいろと欲が出てきた。
  • 最寄り4:58発の始発バスで羽田空港に向かう。渋滞もなく、予定どおり5:50にT2に到着。羽田行きのバスは、成田行きと違って、どの便もそこそこ混んでいる。早々に保安検査場Dを通過して、待合ロビーへ移動。羽田も広い。すいぶん歩いて、70ゲートに移動。チケットはANAで購入したが、今日の搭乗する便はStarflyerの運航だった。ANA3811便、羽田7:20→9:05山口宇部の予定。15分前に搭乗が始まり、順調に飛んで、予定どおり9:05に山口宇部空港に着陸した。飛行機自体はA320といつものLCCの機体と同じだが、座席数を減らし、前後の間隔がずっと広い(といっても、隣席の近さは変わらない)。レザーシートで、コンセントや液晶モニターもついているが、モニターはオレ的にはじゃまくさかった。1時間ちょっとの飛行では、オレには要らない。機内で配られる飲み物は往復、ホットコーヒー(タリーズ)にした。ビターチョコレートがついていてこれがよかった。そうそう、機体と同じく、客室乗務員のみなさんの制服も黒で、心持ちきりっとした対応だった笑


こいつね。

山口宇部空港の構内にも、いくつも野外彫刻が設置されていた。バス乗り場にもあった。これは、大井秀規《Gravitation》(2009)。


バス停の向こうに見えるのが市役所。

そのバス停の近くに村野藤吾建築。旧 宇部銀行本店(1939)。現在は、ヒストリア宇部として活用されている。

  • 真締川公園。市内を流れる真締川の両岸が公園化されており、新旧の野外彫刻が設置されている。以下、一部を紹介。



山内壮夫《宇部産業祈念像》(1956)。北村善平が助手を務め、鋳造は伊藤忠雄が担当した。真締川公園東に設置。山内の彫刻が変わり始めている時期のもの。


これも、山内壮夫の《母のひざ》(1964)。コンクリート像で、小さな子が座れるようになっている。似た作品が、先日行った旭川にもあった。真締川公園東に設置。


柳原義達《座る女》(1958)。像の前に設置された碑文には、「子どもは世界の太陽である よい環境はすこやかな青少年をはぐくむ みどりの森に彫刻を配して情操ゆたかな都市を夢に描き会員一万六千人の力を一つにしてここに明治百年記念の彫刻とみどりの園をつくる 昭和四十二年一月 宇部市連合婦人会」とある。真締川公園と彫刻設置の経緯がわかる。真締川公園西に設置。なお、《座る女》は平塚市美術館の野外彫刻にもあるようだ。


重村三雄《風景の抜け殻》(1983)。石の台座の上に、セミの抜け殻が引っ繰り返っている。周囲に広がる風景はこの抜け殻から脱皮したもの!? ちょっとした見立てで、風景が変わって見える。真締川公園西に設置。


横断歩道を渡ろうと信号待ちしていたら、向こうに野外彫刻が… 伊藤憲太郎《SEED 増殖》(1999)。とにかく、町中は野外彫刻がそこかしこにある。

  • 宇部市立図書館は、これまた、彫刻の森図書館とでも呼べそうなくらい多くの彫刻が館の内外に設置してあった。写真は撮らなかったが、図書館の中庭に設置された小清水漸《碧い舟-内なる海と空-》(1987)が、中でもよかった。


本郷新《手を前にくむ》。小型のブロンズ像。1990年に地元の大谷地所株式会社による寄贈。ロータリークラブライオンズクラブ、地元企業による彫刻の寄贈を受け、多くが公共空間に設置されている。


舟越保武《リンゴをもつ少年》(1965)。児童書のコーナーにいた。館内には、他にも、佐藤忠良、柳原義達の銅像が設置されていた。1990年に宇部西ロータリークラブが寄贈。

  • 次は渡辺翁記念公園へ。渡辺翁こと、渡辺祐策(わたなべすけさく・1864〜1934)は、宇部興産の創業者で、地域経済の礎を作った実業家。政治家でもある。公園の一角には、村野藤吾の代表作の一つ、渡辺翁記念会館がある。1937年竣工。音響面での評価も高く、国の重要文化財に指定されている。



朝倉文夫渡辺祐策翁像》(1936/1952再建)。初代の像は、ご多分に漏れず、戦時中に供出された。これは2代目の1952年に再建されたもの。ちょうどいい高さなのか、鳩の休憩所になっていた。



同じ広場の一角に、木内克《立つ》(1961)もあった。この両像が同じ広場にあることが素晴らしい。宇部市の懐の深さを感じさせる。他に、抽象彫刻もいくつか。




村野藤吾建築の、渡辺翁記念会館(1937)。見学といっても正面を外から眺めただけだが…内部も見学したかった。そして、できうるなら、ここで音楽を聴いてみたい…。


これは、入口の左右にあるレリーフ宇部市の産業をモチーフにしたもの。


こちらは、渡辺翁記念会館に隣接して建てられた、同じく村野藤吾建築の、宇部市文化会館(1979年竣工)。


ANAクラウンプラザホテル宇部

そして、ホテルの前には、サックスおじさんのご一行が、コスプレしていた…黒川晃彦《Rondo 輪舞曲》(1995)。 

髭に顔が隠れて、おじさんかどうかわからない。

猫も、トナカイにコスプレしているが、全然似合わない笑

  • 宇部新川駅から宇部線山口線経由で、山口に向かう。宇部新川11:35→12:22新山口12:25→12:48山口。760円。山口駅から山口県立美術館まで歩く。15分ほど。美術館は後回しにし、まず近くの亀山公園へ行ってみる。かつては、この亀山の頂上公園に、毛利孝親騎馬像を中心に、枝藩の4藩主像、さらに最後の毛利藩主、元徳の騎馬像の銅像群が威風堂々立ち並んでいたようであるが、ことごとく戦時中に鋳つぶされ、どこかへ消えてしまった(この毛利家の銅像群については、木下直之『私の城下町』(2007・筑摩書房)に紹介されている(P301))。そのよすがを多少なりともしのぼうと、立ち寄ることにした次第。毛利孝親の銅像(だけ)が、新しく作られ、立っているが、あまりかっこよくない笑 また、山口ザビエル記念聖堂に立ち寄り、亀山公園の周囲をぐるっと回って、山口県立美術館へ移動。


亀山公園。現・毛利孝親騎馬像のまわりで、校外学習に来ていた小学生たちが鬼ごっこをしていた。

山口ザビエル記念会堂。

近くの、井戸端では、フランシスコ・ザビエル師が説教をしていた。

  • 山口県立美術館「雪舟発見!展」、「奈良西大寺展」。先に西大寺展を見て、続いて雪舟展を観覧。西大寺展は三井記念美術館での展示を見ていたが、仏像などもう少し広い空間で観たかったこともあり、山口展も観ることにした。展示は、第1章西大寺の創建、第2章叡尊をめぐる信仰の美術、第3章真言律宗の発展と一門の名宝、という3章構成だったが、3章あたり、東京展と若干異なり、山口色が出ていたのではないかと。雪舟展は、展示数こそ少ないが、雪舟の倣〜図の全体像、背景がとてもよくわかる興味深い展示だった。高精細4K映像と複製による《山水長巻》の展示もあり、明日、現物を観覧するにあたってのよい予習になった。図録1500円。ちょっと地味な装幀が残念。


  • 雪舟展と西大寺展は別料金だった。西大寺展の前売り(1100円)を持っていたので、雪舟展は200円引きの300円で観ることができた。山口県立美術館の西大寺展・雪舟展に、毛利博物館の国宝展をセットにしたチケットがあり、これは2000円だった。明日、国宝展に行くので、事前に知っていたら、これを買ったのだが、美術館窓口以外、このセット券の情報がほとんどなく(他には毛利博物館の国宝展のちらしに記載があるのみ。県美のHPにも記載がない)、全く知らなかった。不親切で、いけずである。
  • 電車まで少し時間に余裕があったので、町中を散策しつつ、山口駅へ戻る。今回はちょっと寂しいが、YCAMには寄らない。山口17:09→17:27新山口17:36→17:52防府、と山口線山陽本線を乗り継ぐ。適当な夕食を仕入れて、ホテルにチェックイン。今回も、価格とWi-Fiで、ホテルα-1防府を予約したが、今回も、ルーターがすでになく、はずれ。失敗。