かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

北九州彫刻放浪 第1日:八幡→小倉

  • 今回も九州シリーズ。(いったいこのシリーズはいつまで続くのでしょう?)ということで、今回は、飽きもせずに(いや、いささか飽きているかも…)、北九州市の野外彫刻を探ってきた。両日とも雲の多い天気だったが、雨にも降られず、多くの野外彫刻を観て回ることができ、目的もまあまあ果たせたかなと。
  • まずはじめに北九州市の野外彫刻の概要を見ておくと、北九州市は昭和55年度(1980年度)から平成5年度(1993年度)までの14年間、彫刻のあるまちづくり事業を進め、41作の野外彫刻を制作・設置している。また、1987年(昭和62年)に八幡東区東田高炉記念広場で開催された「国際鉄鋼彫刻シンポジウム YAHATA'87」(「YAHATA'87」については『ひょうたんから鯨ー「国際鉄鋼彫刻シンポジウムYahata’87」から』[ぎょうせい・1989]にまとめられている)や、1993年(平成5年)の第2回国際鉄鋼シンポジウム「ザ・リサイクル」で制作された作品もいくつか設置されている。もちろん、この他の市の事業や、ライオンズクラブなどによる設置も多い。ただ、北九州市立美術館の野外彫刻を除くと、野外彫刻は市内各所に「散在」しているので、今回の旅行では、その一部を観て回ったにすぎない。

>北九州市観光サイト 野外彫刻

  • 最寄り5:40のリムジンバスで成田空港T3へ。定刻よりも5分ほど早く到着。早々に保安検査場を通過して、163ゲートへ移動。といっても、搭乗までまだ大分あるので、静かなところで一眠りして待つ。今回、搭乗したのは、Jetstar GK505、成田8:10→10:20福岡の予定。実際には、定刻の7:45搭乗開始、8:21に成田離陸、10:16に福岡着陸、10:30頃、到着ロビーに出た。
  • 今回は、空港から直接、北九州市に向かう。国内線の高速バス乗り場11:12発の砂津行きに乗車。バスは空港通りから福岡都市高速道路、福岡ICから九州自動車道、八幡ICから北九州都市高速道路を走り、1時間ちょっとで、高速皿倉山ケーブルバス停に到着。今回は小倉駅まで行かずに、ここで下車する。お目当ては、八幡駅周辺の野外彫刻で、八幡駅に近い、高速皿倉山ケーブルで下車することにした。地図で確認したかぎりでは、迷わなければ、八幡駅まで15分ぐらいで行けるはず。


  • バス停の名前に違わず、このバス停は皿倉山のケーブルカー駅(山麓駅)のすぐそばで、せっかくなので、ちょっとケーブルカーに乗って、皿倉山を登ってみることにした。バス停から5分ほどで、ケーブルカーの山麓駅に到着。事前の予習では、近くに銅像があるということなので、まずはこれを探す。銅像はすぐに見つかった。


《守田道隆先生之像》(1972/1972.5設置)。像の制作は、 樽谷清太郎. (1903-1973)。Wikiによると、守田道隆(1898-1970)は、公選による初代の八幡市長(1947-1959在任・3期12年)で、戦災の被害が著しかった市内の復興に尽力し、また、民生面の充実に努めたとのこと(ちなみに北九州市は、1963年[昭和38年]2月10日に門司市小倉市戸畑市八幡市若松市の5市の合併により誕生)。樽谷清太郎作品は、この肖像彫刻が初めてだが、この人は今回の旅行の隠れお目当てでもあるのは、後に記す通り。

  • さて、皿倉山帆柱ケーブルカーの山麓駅へ。ここでケーブルカーの往復券を購入(800円)。ケーブルカーは20分ごとの発車で、5分ほどで、九合目にある山上駅まで登る。山上駅から皿倉山山頂までは、歩いて登ることにした(山上駅で乗り換えて、スロープカーで登ることもできる)。行きは、野口雨情詩碑のある階段ルートで登り(15分ほど)、山頂で展望を楽しんだ後、天空ドーム(恋人の聖地だとか)、北原白秋詩碑から皿倉山ビジターセンターを回って、再びケーブルカーの山上駅まで戻った(20分ほど)。皿倉山に連なる、帆柱山や権現山などを回るルートもあるようだが、それはまたの機会に。


山頂からの眺め。若戸大橋スペースワールド、八幡の町が一望できる。皿倉山山頂から見る夜景は、新日本三大夜景の一つだとか。

山頂には聖火台があった。

帰りのケーブルカーの車窓から。ちょうど登りのケーブルカーとすれ違うところ。

  • 山上駅から、ケーブルカーで下山し、山麓駅からいよいよ八幡方面まで歩く。といっても、さして難しいこともなく、時々持参の地図を参照しつつ、坂を下っていくだけだが。10分ほどで、ホールや大学などのある八幡東区の文教地区に出る。まず、このあたりから野外彫刻を探ってみる。


北九州市八幡東区響ホール前の、ドナルド・ガマーの《ハウス・オブ・ミュージック》(1993)。


同じく北九州市八幡東区響ホール前の、ドナルド・ガマーの《リユニオン》(1993)。


北九州市八幡東区平野緑地の、フィリップ・キング《牡牛座の月》(1987)。「国際鉄鋼彫刻シンポジウム YAHATA'87」(1987年[昭和62年]、八幡東区東田高炉記念広場)出展作の一つ。シンポジウム終了後、この作品を市内に残そうという機運が高まり、この地に移設された。




北九州市八幡東区八幡市民会館前ロータリーの、《復興平和祈念像》(1953.5設置)。銅像の制作は、樽谷清太郎。背面の銘板を写しておく。「復興平和記念 焼野に萌え出る立華のように吾等の愛する八幡は戦争の惨禍から新しい工業都市として力強く立ち上がつた 新しい憲法は平和を表徴し吾等は人類の為に永遠の平和を祈念する」ここに東洋の工場としての八幡の復興と世界の平和に貢献しようとする全市民熱望の祈念としてこの像を樹てた」昭和廿八年五月三日」八幡市長 守田道隆」。両手を広げた女性像の足下に二人の子供。広げた手の片方に鳩がとまっている。下の写真の右後方に見える茶色の建物が、村野藤吾建築の八幡市民会館(1958)。取り壊しを免れ、当面は保存・活用される見通しとのこと。



北九州市八幡東区さわらび通りの、佐藤忠良《早蕨》(1980/1982.11設置)。


北九州市JR八幡駅前の、高橋秀《浮上計画》(1987)。


八幡駅南口。駅舎上部が立体駐車場になっている。

  • JRで八幡駅から戸畑駅まで移動。10分弱。210円IC。戸畑では、浅生1号公園(戸畑区役所前)と若戸大橋の袂にある大橋公園の2箇所を訪ねた。駅から徒歩での移動で、浅生1号公園まで15分、そこから大橋公園まで20分ほど。ちょっと歩き疲れて、へろへろになる。若戸大橋に沿うように若戸航路という渡船があり、ちょっとこれに乗ってみたかったが、時間の都合もあり、これもまたの機会に。



北九州市戸畑区浅生1号公園(戸畑区役所前)の、舟越保武《シオン》(1982.11設置)。この浅生1号公園の周辺は、有名な戸畑祇園大山笠の中日、大山笠競演会の会場だそうだ。


若山牧水歌碑が、浅生1号公園の隣、戸畑図書館前にあった。「新墾(にいはり)のこの坂道のすそとおし 友のすがたの其処ゆ登り来」。解説板によると、1925年(大正14年)、牧水夫婦が、揮毫の会のために滞在していた八幡東区荒生田の宿から鞘ケ谷の峠を越えて戸畑の住む友人の毛利雨一楼を訪ねたときに詠んだ歌とのこと。(それにしても、なぜ2基もある?)




北九州市戸畑区大橋公園の、中野素昂《大気》(1962設置)。若戸大橋の戸畑側の橋のたもとに立っている(写真上)。作者の中野素昂(1897-1985)は、福岡県築上郡角田村(現豊前市松江)出身の彫刻家で、主に日展で活動。中の写真に、《大気》像のすぐ近くに「若戸博記念」1962 秋」と書かれた碑がある。若戸博は、正式には「若戸大橋完成記念 産業・観光と宇宙大博覧会」といい、若戸大橋開通(1962.9.26開通)を記念して、1962年9月28日から11月25日まで、戸畑市の戸畑橋台周辺と若松市高塔山公園を会場に開催された。当時の写真などを見ると、宇宙大博覧会を名乗っているだけあって、ロケットなども展示されていた模様。ところで、北九州の股間若衆は礼儀正しく、皆海パンをはいていた笑 そもそもあまりいなかったけれど…


JR戸畑駅南口広場にも若山牧水歌碑があった。「われ三たび此処に来りつ家のあるじ寂び定まりて静かなるかも 昭和二年五月十三日 牧水」とある。この歌は1927年(昭和2年)5月に牧水門下の歌人で、仲のよい友人でもあった毛利雨一楼を訪ねたときに詠んだもので、この碑はもともと雨一楼宅のあった南鳥旗町5番に建てられたもの(1961年設置)を、駅前に移設したとのこと(2011年移設)。

  • 再びJRで、戸畑駅から西小倉駅まで移動。10分弱。210円IC。西小倉駅から勝山公園へ移動。周辺の野外彫刻を探る。その後、小倉駅前のアーケード街、地下にある天ぷら屋で、夕食を食べる。天ぷら定食(ごはん大盛りで630円)。天ぷら5品、ごはん、味噌汁、つけもの。天ぷらはさしたることもないが、白味噌に豆腐、わかめの味噌汁がたいへんおいしい。



北九州市立文学館前の、本郷新《レッスン》(1986設置)。今回のお目当ての一つ。北九州中央ライオンズクラブの寄贈。



北九州市小倉北区鴎外橋上の、淀井敏夫《鷗》(1981設置)。市民憲章制定を記念して、北九州中央ライオンズクラブが寄贈。

  • 小倉駅まで歩くが、17:00を過ぎたが、まだ暮れるまで時間がありそうなので、ここで、もう1基、野外彫刻を観に行くことにする。小倉駅から駅前の大通を南下し、モノレール旦過駅前の商工貿易会館前に設置された朝倉響子作品を観覧。その後、小倉駅まで戻り、駅の地下のスーパーで飲み物などを買う。今日の最後は、小倉駅北口ペデ上の、キャプテン・ハーロック、そして、メーテルと鉄郎。



北九州市モノレール旦過駅近く、商工貿易会館前の、朝倉響子《夏》(1984)。小倉ライオンズクラブの寄贈。この作品は、《夏》あるいは《Summer》の題で、わりと多く各地に設置されているようだ。実見したのは、別府市で観た《Summer》に続き、2基め。



小倉駅北口ペデ上の、キャプテン・ハーロック(上)と、メーテルと鉄郎(下)。2012年の北九州市漫画ミュージアム開館に合わせて設置された。

  • 今回、宿泊のホテルは、ビジネスホテルYANAGI。古めのホテルだったが、設備やアニメティなど、特に難はなし。価格を考えると上々の部類。Wi-Fiの電波もバッチリだったが、今回はホテル用の小型ルーターを導入したので、これを使ってみた。自宅で試した際と同様、LANケーブルをつなぎ、電源を入れるだけで、難なくWi-Fiにつながった。風呂に入り、夜遊びにも出かけず笑、早々に寝入るなど。夜中に目が覚め、寝付けず、しばらく井波律子訳『水滸伝(五)』を読み継ぐ。