かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

 花鳥画の煌き 東洋の精華  (名古屋ボストン美術館・ボストンギャラリー)

花鳥画」という東洋美術の一ジャンルを,ボストン美術館所蔵の中国絵画・工芸によって概観し,さらに朝鮮と日本の花鳥を扱った美術にもそれぞれ1章を割いて広がりを持たせる,という内容の展覧会です.コンパクトな内容ながら(出品は65件),中国の吉祥観がうかがえるなど,なかなかおもしろく見ることができました.
展覧会の目玉は徽宗帝《五色鸚鵡図》(1巻・絹本着色,北宋時代[12c前半])あたりでしょうか.この他にも大作,呉煥《百鳥朝鳳図》(12幅・絹本着色,1711年)や沈銓(沈南蘋)《四季花卉雑画》(全12幅・絹本着色,1760年頃)からの4図などがおもしろかったです.
個人的なお目当ては,旧伝狩野雅楽之助《花鳥図屏風》(6曲1双・紙本着色,桃山時代)だったのですが,これもおもしろかったです.内容的には「四季花鳥図」になります.画面に描かれている水の流れに沿って右から左へと季節が推移していくのですが,その中に多くの花と鳥が描かれています.構図や手法としてはもと大仙院の方丈画だった狩野元信《四季花鳥図》を思わせるものですが,こちらの方が花や鳥などのモチーフがより多く描き込まれています.春から夏にかけてを描いた右隻ではさえずる鳥たちが多く,そのにぎやかな感じが楽しい.ただ,花はともかく鳥たちはいくぶんぎこちない印象で(やはり粉本によって画面を構成しているためでしょうか),写生画や博物図譜の類には見ることのできない,いささか奇妙な固さがかえっておもしろかったりします.作者に擬せられた狩野雅楽之助は狩野元信の弟,狩野之信のことですが,素人眼にもたしかに元信周辺の画家の手によるものと感じられました.
普通の美術館・博物館では掛幅類はふつうウォール・ケース内に展示してあり,そのため絵までの距離が少しあって細部が見づらかったしますが,この美術館では展示壁に掛幅を釣り下げて,それを浅めのアクリルケースで覆うという方法を採用していました.おかげで絵をすぐ近くでみることができてなかなかよかったですが,照明の反射がちょっときつくて,大きな掛幅の上部などはあまりよく見えなかったのは残念でした.一長一短あるということですね.
また,半年と長期にわたる展覧会なので,会期中に展示替えがあるかと思ったのですが,どうも展示替えはないようです.照度を調節したり,一部では見学者がいないと自動的に照明が落ちるなどの対策は講じているようですが,大丈夫なのでしょうか?と,心配したりして.まあ,おかげで見たかった作品を全部みることができて,うれしかったのですが...


この他に,オープンギャラリーで開催中の『名古屋市東山植物園所蔵コレクション 自然へのまなざし 尾張本草学者 伊藤圭介』展を観覧.こちらは,幕末・明治期の本草学者,伊藤圭介(1803〜1901)の生涯を,編著書や収集した本草学の図譜・花鳥画などによって紹介する展示でした.


帰りに『花鳥画の煌き』展のカタログを購入しようとミュージアム・ショップに立ち寄ったのですが,ここで三自翁弘明(高橋弘明[松亭])の《たまちゃん(仮称)》(大正15年.ここに画像あり)の絵はがきを発見!もちろん購入しました.うれしい.


【メモ】名古屋ボストン美術館 http://www.nagoya-boston.or.jp/ 『花鳥画の煌き』展の会期:2005.10/22〜2006.5/21 『伊藤圭介』展の会期:2005.10/22〜2006.1/9