かけらを集める(仮)。

日記/旅行記+メモ帳+備忘録、みたいなものです。

熊谷→渋川→前橋


渋川駅。駅舎の屋根の向こうに、赤城山が見える。

  • 青春18きっぷの最後の一片を使って、熊谷→渋川→前橋と回ってきた。今回のお目当ては、前橋文学館とアーツ前橋で開催されている展覧会「ヒックリコ ガックリコ」を観ることと、前橋駅前の建設クンと平和さんにお会いすることである。
  • さて、最寄り5:15発の電車で東京駅へ出て、6:20発の前橋行きに乗車。高崎線で高崎を目指す。高崎で水上行きに乗り継ぎ、最初の目的地の渋川に向かう予定だったが、ちょっと思いついて、というか、電車に飽きちゃって、熊谷で下りてみる。7:33。目的は、えっと、あの、彫刻放浪です。
  • 青空の広がるいい天気なのだが、北風が吹き、いささか寒い。まずは駅前の、北村西望《熊谷之次郎直実》像を眺めた後(銘板には「之」がは入っている)、朝食を食べていなかったので、駅前で朝メシを食らう。納豆定食といういつものパターン370円。続いて、駅の少し北を、東西に流れる星川沿いの遊歩道「水と緑と彫刻のプロムナード」を歩く。縦横の通りが交錯するところを小さな広場にして、そこに6基の彫刻が設置されている。これを一渡り観覧した後、熊谷市役所まで歩き、市役所前に設置されている2基の彫刻を観覧。近くのコンビニでコーヒーを買って、体を温めつつ、駅まで戻る。突発的に電車を降りたせいで、次に乗る電車の乗り継ぎなどを調べていかなかったのは、ちょっと失敗だった。まあ、のんびり行こう。


熊谷駅北口の、北村西望《熊谷之次郎直実》(1974)。西望好みの台座。ひょっとしたら、オレ、台座の方が好きなのかも笑


台座の銘板など。えっと「熊谷之花も実もある武士道のかおりやたかし須磨の浦風」かな。


星川・水と緑と彫刻のプロムナード/ふれあい広場の、菊池一雄《ふれあい》(1985/1985設置)。


同上/星川広場の、圓鍔勝三《花園の歌》(1983設置)。これ、いい感じ。なんだが、着衣の方がいいなと。


同上/緑の広場の、千野茂《やすらぎ》(1982設置)。


同上/太陽の広場の、桜井祐一《レダ》(1982設置)。


同上/若者広場の、富永直樹《新風》(1984設置)。長崎で観た富永直樹の代表作の一つ、《新風》に、ここで再会。プロムナードの男性像はこれだけ。


同上の、北村西望《戦災者慰霊之女神》(1975設置)。これは設置されている、というよりは、祀られているといった方がいいか。熊谷は1945年8月14日に空襲を受け、多くの犠牲者を出した。1975年8月16日、被災30周年を機にこの慰霊碑が建立された。戦災で亡くなった人を悼むとともに、二度と繰り返さない祈りが込められている。この像は、ブロンズではなく、西望の像によくある高純度アルミニウムでできている。


熊谷市役所前の、清水多嘉示《躍動》(1978/1984設置)。初出は第10回(改組)日展(1978)。
 

同上の、木内克《坐像》(1962)。埼玉県信用金庫の寄贈。木内作品には、この《坐像》とか、そっけないタイトルのものが多く、しかも、同タイトルがいくつもあるので、同定が難しい。

  • 熊谷9:01→9:44高崎。高崎までは電車の本数が多いのだが、渋川までの電車があまりない。次の電車は10:24発の水上行き。少し時間があるので、駅前で、今一度、《希》と《望》を探す。やはり、見当たらない。駅前四天王の一角は崩れてしまった。どこかへ行ってしまった。ああ。ホームに戻るが、とても寒いので、ホームにいた9:07発の両毛線に乗ってしまう。これで新前橋まで行き、ここで水上行きを待つ。結局、到着の時間は同じなのだが…新前橋から渋川まで、窓外には赤城山の山影がくっきりと見えて、目を楽しませてくれた。渋川駅には10:49の到着。
  • 渋川周辺は、桑原巨守のシマ笑 桑原巨守(1927〜1993)は、群馬県沼田市の出身の彫刻家。戦後長く女子美術大学の教員を務めていた。没後、残された作品の多くが、遺族から渋川市に寄贈され、これをもとに、2000年に渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館が開館した(銀行の使われてないフロアを利用している)。この美術館の1Fにある展示室に、常設展示として、桑原巨守の彫刻やデッサンなどの作品が展示されている。また、市内の各所には、1977年に《野の花》(渋川市民会館内。未見)が設置された他、多くの桑原作品が野外彫刻として設置してある。桑原作品以外にも、旧渋川市時代に策定した「芸術の森構想」に基づき、具象・抽象いろいろな作品を市内各所に野外彫刻として設置しているようだ(《風と花》、《讃太陽》などはこの構想に基づき、設置された)。
  • 駅前の《風と花》を観た後、まずは美術館に向かう。途中で、《讃太陽》や《よろこび》といった作品に出会う。


渋川駅前広場の、桑原巨守《風と花》(1988設置)。




渋川市内平沢川緑道橋上広場の、桑原巨守《讃太陽》(1987設置)。


芸術の森・ネットワーク。芸術の森構想により設置された野外彫刻(の1部)の紹介と配置図。


渋川市内新町五差路の、桑原巨守《よろこび》(2002設置)。お母さんの顔が真っ黒ですが…後方に渋川市の消防車大集合。もちろん、火事ではなくて、出初め式です。

  • 渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館 まずは常設展示室の桑原巨守作品を観覧。作品は作風を確立し、評価を受けた70年代、80年代の作品を中心に、デッサンなども展示してあった。デッサンは、けっこうエロチックな女性ヌードが多い。エゴン・シーレのデッサンをもう少し丸みを帯びた感じにしたといった印象。強い風に吹かれた女性の着衣像というのが、桑原作品のイメージだが、展示によると、この着衣像と対になるような裸婦像が作られていたようで、興味深い。展示や解説を見ていると、大学で彫刻・美術を教えながら、こつこつと作品を作っていたようで、同時代とのアクチュアルな連関は感じられなかった。展示室にあった図録や作品集を見ると、作品の中心は女性像だが、他のモチーフの作品もたくさんあり、実作は観られなかったが、なかなかおもしろそうだった。所蔵品のカタログもあったが(5000円)、今回は見送る。


渋川市美術館・桑原巨守彫刻美術館。外観は元銀行の支店だけあって、味も素っ気もない…

  • 渋川市美術館では、渋川出身、あるいは縁のある美術家の作品を収集しているとのことで、廊下などに、その一部が展示してある。また、3Fにも展示室があり、こちらでは、「The rising generation15 志村真悠 反町潤」が行われていたので、これも観てきた。
  • 美術館前を南北に走るマロニエ通りにも桑原巨守の作品が設置されている。これらは2009年に設置されたもので、全部で6基の女性像を観ることができた。続いて、市役所まで歩く。市役所前の高田博厚の裸婦が立っていた。
  • 渋川駅から出発する前に、時刻表のチェックを失念してしまい、駅に帰り着いたら、次の電車まで1時間近くある。メシを食らうには、それほど腹も減っていないし、駅の待合室は年寄りたちが荷物を座らせ、空いていないし、で、近くのコンビニまで戻り、コーヒーなどを買って、近くの公園で時間を潰す。児童公園で、日曜日ということもあって、いくらか子ども連れがいたが、日当たりはあるものの、風が冷たくて、じっと座っていると、寒くていかんともしがたい。やれやれ。渋川13:52→14:06新前橋14:18→14:21前橋と、上越線両毛線を乗り継ぐ。新前橋で衝動的に下りてしまいそうになるが、これは下りないでよかった苦笑
  • まずは駅前の、分部順治《建設》《平和》を観覧。こちらは、高崎と違い、無事にあった。





分部順治

  • 続いて、前橋文学館に向かう。バスに乗る予定だったが、少し待たなければならなかったので、待つに弱いオレは、結局、歩いていくことに。途中、いくつか銅像を発見したが、掲載は割愛する。駅前通りを前橋中央駅まで北上し、ここからは川沿いに歩く。15分ほどで、前橋文学館に到着。受付でチケットを買おうとしたら、受付のおねえさんが、クーポンをお持ちですので、半額の350円になりますね。と、オレが渡したわけでもない、なにやらクーポンを切って、一般700円の入場料が半額になった(配布資料にあったアーツ前橋の予定を記したチラシにクーポンがついていたようだ)。荷物をコインロッカーに預け、萩原朔太郎関連の常設展をざっと回った後に、「ヒツクリコ ガツクリコ」展をじっくりと観て回る。1時間強滞在。音響詩などを流していたのだが、音量が低すぎて、スピーカーに耳を近づけないと、よく聞こえない(オレの耳が遠くなった?笑)


文学館の前には詩人が立っていた。

  • 文学館の近く、川沿いのすぐのところで、岡本太郎《太陽の鐘》再設置の工事をしていた(日曜日なので、作業自体は休みの日だったが)。周辺整備のデザインは藤本壮介が担当しているようで、ちょっと楽しみなプロジェクトである。3月いっぱいで設置工事が終わるようなので、次に来るときには観ることができるかもしれないなと。


  • 続いて、アーツ前橋に向かう。が、途中、道に迷う。折れる道の方向を誤ったようだ。まあ、道に迷うのも一興と、準備しておいた地図も見ずに適当に歩いていたが、10分も歩くと、見知った道に出て、先に見える白い建物がアーツ前橋かな、とぐんぐん近づいていったら、はたしてアーツ前橋だった。途中、いくつか銅像に出会ったが、ここも掲載を割愛。


アーツ前橋

最後に、こいつを。作者・タイトルなど、詳細不明…

  • アーツ前橋 終盤の、ミヤギフトシ、山川冬樹、川口龍夫の新作が圧巻。
  • 前橋駅まで歩き、駅前で適当な夕食を適当に食らい、帰路につく。前橋駅から18:15発の快速アーバンに乗ったのだが、事故があり、快速運転をとりやめて、約20分遅れで出発。途中で、運転取りやめになるかも、とのアナウンスもあったが、取りやめにもならず、そのまま大宮まで。大宮で同じホームに上野東京ラインの熱海行きがいたので、こちらに乗り換えて、東京駅まで。東京駅で、京葉線に乗り換え、最寄りには21:00過ぎに到着。まあ、無事に帰ってきたのであった。