佐久→東御→長野
- さて、彫刻放浪である。今回は信州へ向かう。佐久市の駒場公園、東御市の東御中央公園、そして、神戸や仙台と並ぶ野外彫刻都市、長野市で、野外彫刻を求めて、彷徨うのである…笑 なお、今回も顕彰系の肖像彫刻の類はおおよそパスしている。
- 当初は18きっぷを使って、できるだけ格安に、のつもりだったのだが、図に乗って、往復とも新幹線を利用することになってしまった。行きは、まず東京から北陸新幹線で佐久平まで行き、ここからバスで、最初の目的地の佐久市の駒場公園に行くことにした。最寄り5:58発で、東京駅に出て、東京発7:24のあさま603号に乗車する。佐久平には8:52に到着。佐久平からは、佐久市の市バス・北循環線右回りに載る。佐久平駅9:05発で、20分弱で駒場公園に到着。このバスは1乗車200円だった。公園の入口近くに7があったので、早速コーヒーなどを買ってきて、公園のベンチで一息つく(←もう一休みかよ!)。いい天気だ。暑いことは暑いが、風もあり、すがすがしい。
佐久市の市バス、ラッピングバスだった。早速、北斗の拳だと…佐久市で「武論尊100時間漫画塾」というのを開講するそうで、その広報を兼ねたラッピングらしい。
- 駒場公園の野外彫刻 さて、佐久市の駒場公園は、佐久平の中央に位置し、農林水産省長野牧場の一角にある広さ約10haの広域公園で、図書館、美術館や創造館(文化センター)、プールやテニスコートなど、文化・芸術、スポーツの拠点として市民に利用されている。佐久市立近代美術館・油井一二記念館は1983年5月26日開館の美術館で、1977年に寄贈された佐久市出身の、故・油井一二氏(株式会社美術年鑑社社長)のコレクションが美術館の母胎となっている。美術館の開館時設置された油井氏寄贈の彫刻を中心に、駒場公園内に約20基の野外彫刻(うち、4基は屋内)がある。これらが、今回のお目当て。
>参考:佐久市立近代美術館 野外彫刻(駒場公園内)
「駒場公園 屋外彫刻案内」この案内図には18基の野外彫刻(ほとんどは油井一二の寄贈による具象彫刻)の配置が記されている。18基のうち、4基が佐久創造館のエントランスに設置されている。佐久創造館は水曜日は休館なので、これらの4基は残念ながら観ることができなかった泣 また、この他に佐久市立近代美術館の西側に石彫が3基設置されていた(上記の案内図には未記載)。これら3基の作品は、佐久大理石彫刻家シンポジウムによる作品。(銘板のシンポ名が回数ごとに微妙に異なるが、)長野県佐久大理石彫刻家シンポジウムは、長野県東部佐久地方の10市町村が共同で主催し、地元産の大理石を材料に、多くの彫刻家が公開制作を行った。1989年に第1回が開催され、1993年までに5回のシンポジウムが開催された。このときに制作された作品の多くは、佐久地方各所に設置され、観ることができるようだが、どこにどんな作品があるかなどの詳細は今ひとつわからないでいる。
北村西望《馬上天女》(1978)
木内克《エーゲ海に捧ぐ》(1972)
進藤武松《回想》(1976)
西村貞雄《風−奏でる》(1991)。第3回佐久大理石シンポジウム。
槙渉《時間(とき)の箱》(1992)。第4回佐久大理石彫刻家シンポジウム。写真に写っている「NO.6 PAR2m」という立て札は作品とは関係なく、すぐ近くに設置されているマレットゴルフのもの。実は、公園内に縦横にマレットゴルフのコースが設置されていて、お年寄りたちで賑わっていたのである。
竹内淑浩《雨のつきやま》(1993)。第5回長野県佐久大理石彫刻家シンポジウム。
最後に、駒場公園のベンチ
- 文化財事務所・考古遺物展示室 GMで周辺を見ていたら、市役所あたりも何かありそうな感じだったので、次の目的地への移動はバスではなく、JRを使うこととし、周囲を少し歩いて回ることにした。と、市役所に向かおうと駐車場をふらふらと歩いていたら、佐久市教育委員会の文化財事務所・考古遺物展示室に行き当たった。第1回特別展「弥生人の面影」と題して、佐久市出土の「人形土器」などの展示が開催中らしい。料金も無料だし、ちょっと覗いていくことにした。中に入ると、職員の方がさっと現れて、パンフ類と、音声ガイダンスを渡された。展示室は、特別展も含め、1室のみで、展示内容は佐久市出土の考古遺物と遺跡などの解説パネルを中心としたもの。せっかくなので、音声ガイダンス(ナレーションは佐久市出身の声優の白井悠介)を聞きながら見ていたら、小一時間かかってしまった。列車の時間まで間がない。ということで、市役所あたりを探るのは、またの機会として、慌てて駅に向かった次第。
- 小諸 道に迷うこともなく、北中込駅に到着。なんとか間に合った。北中込駅は、券売機こそあるものの、ホームが1本、ベンチがいくつかあるだけの無人駅だった。11:55発の小海線小諸行きに乗車。12:16に小諸に到着。240円。小諸駅周辺の野外彫刻を探った後に、地下道をくぐって、駅の東側の懐古園へ向かう。三の門をくぐり、料金所で共通券500円を購入し、園内を散策。徴古館→小諸義塾記念館→藤村記念館(谷口吉郎建築)→藤村詩碑・水の手展望台→小山敬三美術館(村野藤吾建築)・アトリエ→懐古神社・天守台→富士見台→動物園という順で回る。小山敬三美術館では、はじめにプロフィールを紹介した10分ほどのビデオを観てから展示を観覧。なかなか見応えがある。顕彰系の碑、像が2基あるほか、《平和の光》と題するコンクリート像があった。また、美術館のすぐ近くには、現在休館中であるが、渥美清小諸寅さん会館という博物館?があり、建物の前に金色の寅さん像が立っていた。動物園が意外におもしろい。いったん駅付近に戻り、大手門あたりを歩く。周囲が整備され、公園になっていて、居心地がいい。小諸はこれまでに何度か来ているが、20数年ぶりのことで、あまり記憶に残っていなかった。
小諸駅構内の、内堀功《追憶》。銘板に、「第五回日展出品」とあるので、1973年の作か。内堀功(1917-1978)は小諸市出身の彫刻家。吉田三郎、晝間弘に師事。白日会、日本彫塑会、日展などで活動した。アトリエは小諸にあり、市内に多くの作品が設置されているとのこと。
小諸駅前の、内堀功《希望》(1976.9.1建立)。台座裏に「この地に生れ彫刻の道に志した私はふるさとの恩恵に浴し育てられた いま感謝のこころをこめて小諸市民の皆さまの健康と躍進を永久に祈願し青空の下に「希望」の像を贈る」とある。
懐古園・島崎藤村記念館前の、《島崎藤村像》(1973/1973.4.22設置)。制作は内堀功。小諸ライオンズクラブが創立5周年記念に設置。
懐古園・二の丸跡の、木村熊二記念碑(1936設置)。木村熊二(1845-1927)は小諸義塾の塾長を務めた人物。レリーフの制作は荻島安二(1895-1939)で、碑の銘文「われらの父木村先生と旧小諸義塾の記念に」は島崎藤村の筆。藤村記念館にも同じものが展示してあった。
小諸市立小山敬三美術館・庭園の、《平和の光》(1960.4設置)。作者などは不詳。コンクリート像で、表面は緑色に塗られていたようだが、塗装はだいぶ剥げている。「祖国 朝鮮民主主義人民共和国帰国記念」に在日朝鮮人総聯合会佐久支部が寄贈。台座に、当時の小諸市長、町田増夫の名で、「日朝両国の友好親善と世界恒久平和万才!」とある。最初の帰国船が新潟港を出港したのは1959年12月14日のこと。その頃の建立と知る。同様の像が各地にも残っている模様。
- 東御中央公園 さて、次の目的地は東御市にある東御中央公園。小諸駅14:58発の長野行きに乗車。田中駅に15:08に到着。ここからバスで公園まで行くつもりだったが、本数が少なく、バスまでまだ時間がある。と、レンタサイクルのポスターが貼ってある。なんでも、駅の観光案内所で、無料のレンタサイクルがあるとのこと。時間が17:00までなので、まだ約2時間ある。ということで、自転車を借り出すことにした。このレンタサイクルは、駅から歩くにはちょっと距離のある海野宿という宿場を回ってもらうのに便利なように設置されたもののようだ。早速、観光案内所に行き、申込書を書いて、自転車を借りる。今回は電動自転車を借りだした。台数が少ないので(電動自転車2台、普通の自転車3台)、無事に借りられるか、心配だったが、無事に借りることができた。東御中央公園までは、だいたい15分ほど。ただし、行きはだらだらの上り坂なので、ちょっとしんどいかもしれない。虫の知らせで電動自転車を借りたので、このあたりは楽勝ってなもんよ笑 東御中央公園の野外彫刻については、公園のどのあたりに、どのような作品が設置されているか、などの情報もなく、公園も広大なので、すぐに見つけることができるか心配だったが、わりと簡単に見つけることができた。公園の西側に、大きな芝生広場があり、広場の北側に空充秋の大作があるほか、南側に20数基の、主に石彫を中心とした作品が所狭しと設置してあった。これらは、東京の目黒にある長泉院付属現代彫刻美術館の所蔵作品で、1995年から東部町(現・東御市)に貸与されているものとのこと。現代彫刻美術館は、彫刻作品のコレクションを目的に、長野や群馬で数回、野外彫刻シンポジウムを開催しており、その時の作品の一部がここ、東御中央公園に展示されているものらしい。大型の作品が多く、見応えのある野外彫刻群であった。
小林亮介《オーロラ》(1989)
小林泰彦《Sound of Wind》(1989)
須藤博志《風のオベリスク》(1988)
細谷進《座標No.22 Serendipity》(1992)
田中毅《車にのって》(1988)
田中康二郎《Ohne Titel 92-nr2》(1992)
カエルの水飲み場。びりびりに捧ぐ笑
- 長野 16:30過ぎ、東御中央公園から田中駅に戻る。いささかお腹が空いたので、途中、スーパーを見かけたので、ここに立ち寄る。ここのところの熱暑による野菜の高騰にまいっていたのだが、ここ、けっこう安い。お土産に…と、一瞬頭をよぎったが、荷物になるので、あきらめる。パンと飲み物などを購入。パンも焼きたてを格安で売っていた。17:00前に駅に戻り、観光案内所に自転車を返却。17:12発の長野行きに乗車。しばらく窓外の景色を眺めていたが、いつの間にか寝入っていた。18:06に長野駅に到着。950円。まだ陽があるので、駅周辺の野外彫刻を少しだけ探ってみることにした。東口の西野康造作品と、西口を出て、少し西に歩いたところにある中岡慎太郎作品を観覧。他にも、駅周辺にいくつか野外彫刻、PAの類を見かけた。適当な夕食を適当に食らい、コンビニで飲み物などを買って、ホテルにチェックイン。
長野駅東口ペデストリアンデッキの、西野康造《気流》(2002.11設置)※第30回長野市野外彫刻賞受賞作品(以下、同賞受賞作品は、回数のみ記載)
長野市柳原神社西隣(中御所1丁目)の、中岡慎太郎《セレナード》(1991.11設置)※第19回
- 今回宿泊したのは、長野第一ホテル。駅近くのビジネスホテルで、部屋はあまり広くなかったが、設備は、Wi-Fi、シャワートイレなど一通り揃っていて、特に難はなし。フロントの対応もよかった。早速、風呂に入って、汗を流し、今日の復習などをしているうちに、早々に寝入ってしまう。